こんにちは、editor_kaoです。
気候も穏やかになり、いよいよ春らしい着こなしが楽しめる季節に。私も少しずつ、新しいアイテムを買い揃えています。
トレンチは、特別な立ち位置のベーシックアイテム
今の時期は、トレンチコートを着る機会も増えますし、街中でもトレンチスタイルの女性をよく目にしますが、長くファッションエディターをしてきて思うのは、「トレンチはとても特別な存在」ということです。ベーシックアイテムでありながら、ある年はものすごく流行したり、ある年は急にトーンダウンしたりと、時代によって出現率の変化が激しい印象。ちなみに今年は、それなりに多く見かける気がしています。
自分自身のトレンチ選びも、時代性やライフスタイルで変わったと思います。今は薄手のゆるっとしたトレンチを愛用していますが、以前はまったく違いました。そういったわけで今回は、私のトレンチ変遷記について思い返してみることに。
20代から変化した、私のトレンチ事情
最初にきちんとしたトレンチを手に入れたのは、20代後半のとき。この仕事を始めて数年たち、いわゆる「定番ワードローブ」というものを大人の働く女性として揃えたいと、いろいろ模索していたころでした。欲しいアイテムのひとつにトレンチもあったけれど、老舗ブランドのものは、当時の私にとって(今もか)高級品。到底手が届くものではなかったのです。そこで老舗ブランドのセカンドラインや、トレンチブランドではないところのものも試着したけれど、どうにも買う決心がつかない。しばらく悩んでいたときに、ある日ふらりと入った下北沢の古着屋さんで、納得できる一枚と出合うことができたんです。今はもうないブランドのものなのですが、そのトレンチが発表されたときは、ミリタリー感の強い本格仕様のディテールが話題で、なかなか買うことができなかった名品。それが時代を経て、古着屋さんに格安(たぶんこのブランドの背景がバレてない)で置かれている!これは運命と、ホクホクした気持ちで購入し、しばらく愛用していました。
このトレンチ、すごくかっこよくて気に入っていたのですが、シルエットがすごく細身で。このあとファッショントレンドは、リラックスムードに突入します。トップスがどんどんゆったりしたシルエットに変わり、細身のトレンチでは腕まわりがキツくなってしまいました。
30代、いよいよ老舗ブランドに着手する
そのときの私は30代半ばくらい。収入もそれなりに上がっていたので、今こそ一生ものだと、老舗ブランドのトレンチに手を伸ばします。ラグランスリーブで、インにゆったりしたトップスも着られる!それはまるで、勇者が新しい武器を手に入れたかの気分でした。ただこれに関しては以前、【vol.59 永遠のベーシック「トレンチコート」を見直してみたら】に書いたとおりで、少し前に手放してしまって……。服に一生ものはないと、実感した出来事です。
最新トレンチは、とにかく着心地の軽さを重視
その後、しばらくトレンチコートに興味を失っていたのですが、7~8年ほど前に、ある展示会でひと目惚れ。今も活躍させている、薄手のドレストレンチを手に入れます。あくまでも「トレンチ風コート」なので、エポレットやガンパッチといった特有のパーツは省略。はっ水といった機能もなく、防寒性も弱いですが、かなり軽やかで気軽に羽織れるところが、今の時代性を含んでいます。やわらかな素材感も女っぽくて、エレガントな雰囲気。本格トレンチをがっちり着ていたころから年齢を重ね、楽な着心地を重視するようになった私にとって、今はこのトレンチとライフスタイルが合致しているなと感じています。
振り返ると、トレンチって時代と自分の気持ちしだいで、さまざまな選択ができるアイテムなのだなと、改めて思いました。ひょっとしたら、さらに年齢を重ねたら、また違う価値観が生まれているかもしれませんが、今は3枚目のトレンチで満足しているところです。
【今日のひと手間】
春は靴下をはくことが多いのですが、実家近くのスーパーで見つけたこちら、大人っぽさがあって期待しています。靴下とストッキングの中間のような存在で、スカートスタイルに合わせたときに、カジュアルになりすぎないかと。バレエシューズといった女性らしい足元にも相性がよさそうです。

エディター
editor_kao
大人の実用ファッションを中心に、人物インタビューや日本の伝統文化など、ジャンルレスで雑誌やブランドサイト、ウエブマガジンで活動中。また、インスタグラム@editor_kaoでは、私服コーディネートを紹介するかたわら、さまざまなブランドや百貨店とのコラボレーションも手がけている。ライフスタイルWEBメディアkufura(クフラ)でも「4ケタアイテムで叶えるオシャレ」を連載中。
イラスト/柿崎こうこ
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