Summary
- 「パート」と「アルバイト」は、どちらも非正規雇用のこと。法律上、明確な区別はない。
- 企業規模によって、社会保険加入の基準が変わる。
- 雇用保険は、所定労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合、加入対象。
「パートとアルバイトってどう違うの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか? また、「健康保険の扶養や雇用保険ってどうなるの?」などの声も聞こえてきそうですね。
そこで、この記事では、パートとアルバイトの違いや、健康保険の扶養・雇用保険に関する基本知識を解説します。ライフスタイルに合わせて働き方を選ぶために重要なポイントですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
パートとアルバイトの違いとは?
「パートとアルバイトって、何が違うの?」と感じたことはありませんか? ここでは、パートとアルバイトについての基本の定義や、法的な扱いに違いがあるかについて整理しておきましょう。
基本的な定義と要素
「パート」と「アルバイト」は、いずれも正社員より短い時間で働く非正規雇用です。実は、法律上は明確に区別されているわけではありません。ただ、「短時間労働者」として、労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法の対象となるのが原則です。また、契約期間は有期雇用のケースが多いでしょう。
求人募集などを見ると、「パート=主婦(主夫)向け」「アルバイト=学生向け」といった使い分けが見られることがありますよね。とはいえ、勤務時間や仕事内容の違いなど、明確な定義があるわけではなく、呼び方は企業の慣習によるところが大きいといえるでしょう。職場によっては、「臨時職員」や、「嘱託」、「バイト」などの呼び方をすることもあるようですね。

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権利や保障の違い
パートとアルバイトの間に、法律上の待遇差はありません。どちらも労働者として、最低賃金、有給休暇、残業代の支払いなどが保障されています。
勤務実態に応じて、法定の労働条件が適用される仕組みになっていますよ。たとえば、週の勤務時間によっては、社会保険や雇用保険の加入対象にもなります。重要なのは名称ではなく、契約内容や働き方に基づいて判断される点。求人情報を見る際は、肩書きよりも実際の勤務条件に注目しましょう。
社会保険・雇用保険における違い
勤務時間や収入が一定の基準を超えると、パートやアルバイトでも社会保険や雇用保険に加入する必要があります。ここでは、加入の条件やポイントを確認しておきましょう。
社会保険の定義と労働条件
社会保険には、健康保険と厚生年金保険が含まれます。原則として、正社員の4分の3以上の所定労働時間と日数であれば、加入対象となりますよ。
ただ、企業規模が一定以上(2024年10月からは厚生年金保険の被保険者数51人以上)の場合は、別のルールが適用されるという点もおさえておきましょう。なお、この一定規模以上の会社を、「特定適用事業所」と呼びますよ。
厚生年金被保険者数が51人以上の会社で、次のすべてにあてはまる場合は、パートやアルバイトでも社会保険に加入することになります。
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金月額88,000円以上
・学生ではない
・2か月を超える雇用の見込みあり
この点は、意外と見落としがちなので要注意。つまり、企業規模によって、社会保険の加入の基準が変わってくるということですね。働き方が多様化する中で、短時間勤務者への社会保険適用も広がっているため、制度を理解しておくことが大切です。
参考:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」

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雇用保険に関する条件と保障
雇用保険は、所定労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合に加入対象となりますよ。雇用保険に加入するか否かは、失業したときにもらえる失業給付にもかかわるので、おさえておきたいポイントです。就業前に雇用条件を確認し、必要に応じて加入手続きが行われているかを確認することも忘れずに。
参考:厚生労働省「Q1雇用保険の加入の要件を教えてください」
「扶養を外れる?」リアルなケースから考える働き方の選択肢
働く目的やライフステージによって、働き方を選ぶポイントは異なります。ここでは実際のケースを参考に、働き方を考える際におさえておきたいポイントを整理してみましょう。
健康保険の扶養範囲内で働くケース
家庭と両立しながら働きたいと考える方の中には、一定の収入内で働くことを希望するケースがあります。たとえば、配偶者の健康保険上の扶養に入っている場合、いわゆる「扶養の範囲内(年収130万未満)」で勤務する選択も現実的な選択肢のひとつといえるでしょう。
自分で社会保険に加入するケース
近年は、扶養制度や収入制限のあり方についても見直されつつあります。「主婦=パート」という固定的なイメージにとらわれず、キャリアや収入の安定を優先して働く方も増えてきました。
こうした時代の変化の中、扶養を外れて、自分で社会保険に加入するという人も。実際に、ある食品製造業の会社でパートとして働いていたMさん(40代女性)の事例をみていきましょう。

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当初Mさんは、配偶者の健康保険の扶養に入っていました。ところが、勤務先の規模が大きくなり、前述の「特定適用事業所」に該当することになったのです。この場合、正社員の4分の3未満の勤務時間であっても、所定労働時間が週20時間を超え、一定の要件を満たせば、社会保険への加入が必要になるという点で、Mさんは悩むことに。
当初、Mさんは「配偶者の扶養から外れたくないので、勤務時間を減らそうかな…」と考えていました。ただ、「収入が減ってしまうし…」と思い、今後の働き方をどうするか迷ったそうです。
しかし、今後のキャリアや、健康保険や厚生年金に自分自身が直接加入できるメリットも考えたMさん。たとえば、病気やケガの際に支給される傷病手当金、将来受け取れる年金額が増えるなど、長期的な視点で考えたといいます。
最終的にMさんは「扶養にこだわらず、自分の働き方を広げよう」と決断しました。Mさんは、「扶養の枠を気にしないので、気持ちも楽になりました。それに、なんだか仕事が楽しくなったんですよ」と語っています。
もちろん、人によって状況やニーズはさまざまでしょう。将来的な働き方も含めて、自分にとって納得のいく働き方を考えていくことが大切ですね。
最後に
- 「パート」と「アルバイト」は、どちらも非正規雇用であり、法律上の明確な区別はありません。
- 社会保険の加入基準は、企業規模によって変わります。
- 雇用保険は、所定労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある場合、加入対象となります。
この記事では、パートやアルバイトの違い、健康保険の扶養や雇用保険など、知っておきたいポイントも解説しました。
これからの時代は、ライフスタイルやキャリアプランに合わせて、柔軟に働き方を選ぶことが多くなっていくでしょう。パートやアルバイトなどの呼び方にとらわれず、自分にとってベストな働き方を選んでいけるよう、制度や条件を見極める視点を持っておきたいですね。
※この記事は、2025年4月1日時点での法律をもとにしています。また、社会保険の加入条件や扶養については一般的なケースを想定しており、実際は例外もありますので、ご留意ください。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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