慶弔休暇とは、結婚や親族の不幸に際して取得できる特別な休暇制度です。
Summary
- 慶弔休暇とは、結婚や親族の不幸など人生の節目に取得できる特別休暇のことです。
- 慶弔休暇の取得対象や日数、有給か無給かは企業によって異なります。
- 慶弔休暇の取得ルールは就業規則に定められているため、事前確認が大切です。
身内の不幸や結婚式、そんなとき「仕事、どうしよう…」と悩んだことはありませんか? 慶弔休暇とは、そんな人生の節目に仕事を休むための制度です。実は、慶弔休暇は会社によってはないことも。
また、無給・有給のパターンがあり、取得するためのルールやマナーも企業によってさまざまだということをご存じでしょうか?
この記事では、慶弔休暇の基本的な意味や対象、取得時の注意点などをわかりやすく解説します。
慶弔休暇とは? 基本的な意味を確認
慶弔休暇はそもそもどんな意味を持ち、どんな場面で利用されるのでしょうか? まずは、基本の意味と正しい読み方をおさえましょう。
慶弔休暇の正しい読み方と意味
「慶弔休暇」の読み方は、「けいちょうきゅうか」です。「慶弔」とは、おめでたいことと、弔いごとを合わせた言葉。たとえば、慶は、結婚や出産などのおめでたい機会、弔は、お葬式などの悲しい機会を意味します。そして、「慶弔休暇」は、親族等の結婚式やお葬式等のために仕事を休める特別な休暇のことですよ。
慶弔休暇の目的と適用されるシーン
慶弔休暇はどんな目的で設定されているのでしょうか? 取得できる場面についてもおさえておきましょう。
この休暇制度は、親族の結婚式や記念行事に出席したり、親族の葬儀に参列したりする際に、安心して仕事を休めるように配慮されたものです。なお、意外かもしれませんが、慶弔休暇は、必ず設けなければならない制度ではありません。

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「忌引き」との違いを正しく理解する
慶弔休暇と似た言葉に「忌引き」があります。ここからは、忌引きと慶弔休暇の違いを整理してみましょう。「忌引き」は、親族の死去にともなう休暇を指し、不幸な場面に限定されるというのが特徴です。それに対して慶弔休暇は、祝いごとも対象に含むため、より幅広いシーンで活用される制度だといえるでしょう。
なお、一般的に口語では、弔事(ちょうじ)で休暇を取ることを「忌引き」ということが多いでしょう。「経理部のAさんは、今忌引きで休んでいます」というようなイメージです。
ただ、最近では、家庭の事情を深く知られたくないという声も。実際に、あるIT企業では「忌引き」で休んでいることを同僚には言わず、単に「家庭の事情でお休みします」とぼかして言う文化があるそうですよ。人によってもさまざまな価値観があるため、注意が必要です。

慶弔休暇の範囲や日数、要注意ポイント
慶弔休暇の対象範囲や日数が気になるという方も多いのではないでしょうか? 具体的な事例ごとにみていきましょう。
一般的な日数のケース
慶弔休暇の日数は企業ごとにさまざまです。おおむね3日~1週間程度になっていることが一般的でしょう。ただ、本人の結婚や配偶者の死亡の場合は、10日など、長めに設定されていることもあります。続き柄や休暇の理由ごとに日数が異なることもありますので、お勤めの職場の就業規則をチェックしてみてくださいね。
弔事をめぐるトラブルやNG言動
慶弔休暇の中でも、弔事の場合は特に注意が必要です。弔事は思想信条にもかかわる繊細なテーマのため、社内での言動にも気をつけたいところですね。実際に、ある企業では、ご家族の不幸で慶弔休暇を取った社員に対して、上司が「どんな宗教なの?」や「もしかして○○教?」といった質問を繰り返し、トラブルになってしまったというケースも。
また、宗教上の理由以外にも、慣習や伝統、地域ごとに葬儀の特色が異なることもありますよ。「こうあるべき」や、「相手も自分と同じ考えのはずだ」という思いこみは、トラブルの原因になりかねません。「人によって信仰や価値観はいろいろある」という前提を持っておくようにしたいですね。

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慶弔休暇の対象範囲と親族の範囲
どの親族まで慶弔休暇の対象になるのでしょうか? 気になる範囲を整理しておきましょう。
一般的なケースとして、厚生労働省のモデル就業規則では、次のような事例が挙げられています。
・本人が結婚したとき
・妻が出産したとき
・配偶者、子又は父母が死亡したとき
・兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母又は兄弟姉妹が死亡したとき
ただ、会社によっては範囲が広かったり狭かったりするため、事前に会社の規定を見ておくことをおすすめします。
慶弔休暇はいつまで取得可能か?
慶弔休暇は、対象となる出来事が発生した日から一定期間内に取得することが求められる場合が多いです。たとえば、葬儀が行われた日から数日以内に取得するなど、期限が設定されていることが一般的。
また、期限は会社によってさまざまです。特に、結婚の場合は、「入籍日から〇か月以内」などの期限が設けられている会社もあるので、期限が過ぎないように気をつけましょう。

慶弔休暇の日数や対象範囲は会社ごとに異なり、就業規則の確認が重要です。
慶弔休暇と給与の関係
慶弔休暇を取ったときの給与への影響も気になりますよね。有給か無給かなど、大事なポイントを解説します。
慶弔休暇は有給か? 無給か?
慶弔休暇は基本的に有給扱いとなるケースが多いですが、会社によって取り扱いが異なる場合があります。慶弔休暇は法的に義務づけられている休暇制度ではなく、必ず有給であるとは限りません。「休暇は取れるけれど、無給扱い」としている会社もあるため、注意が必要でしょう。必ず就業規則を確認してくださいね。
なお、時折、「無給の慶弔休暇って意味あるの?」という疑問の声を耳にすることもあります。この点も簡単にみていきましょう。
結論から言うと、慶弔休暇は無給であっても、欠勤扱いにならず「正当な休暇」として位置づけられる点に意味がありますよ。特に、人事評価や勤怠成績への影響を避けられることは重要でしょう。企業によっては、欠勤日数が賞与や昇給の査定に関わるケースもあるため、制度として明確に休暇が認められることが安心につながるということですね。

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慶弔休暇の給与の支給条件とは
慶弔休暇が有給のときと無給のときに給与がどうなるかも気になるポイントですよね。基本的なパターンをみていきましょう。
まず、有給の慶弔休暇の場合、通常の出勤と同様に給与が支払われます。言い換えると、「休んでも賃金が減らない」とも言えるでしょう。
一方、無給の慶弔休暇の場合は、欠勤と同様に休んだ日数分の給与が差し引かれることになります。なお、給与を減らしたくない場合は、年次有給休暇を使うという手も。トラブルを避けるためにも、会社と事前に相談しておくとスムーズでしょう。

慶弔休暇の有給・無給は会社で異なり、給与や勤怠評価への影響を防ぐためにも事前確認が大切です。
最後に
- 慶弔休暇は法定休暇ではなく、企業の裁量で制度設計されている制度です。
- 「忌引き」は弔事に特化しており、慶弔休暇の一部とされることが多いです。
- 有給・無給の取り扱いも企業ごとに異なり、就業規則での確認が不可欠です。
慶弔休暇は、結婚や身内の不幸など、人生の大切な節目を支えるために設けられた休暇制度です。対象範囲や日数、有給・無給の違いは会社によって異なりますので、正しく理解しておくことが大切でしょう。事前に就業規則などを一度確認しておくと安心ですよ。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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