「よしなに」の意味とビジネスでの使い方

まずは前提となる基礎知識として、「よしなに」の意味やニュアンスを見ていきます。また、シチュエーション別の使い方と例文も紹介します。
「よしなに」の意味とニュアンス
「よしなに」は、古語の「善し・良し(よし)」が由来といわれる副詞で、現在は平仮名で書くのが一般的です。
「うまい具合になるように」「よい方向へ運ぶように」という意味で、主に相手に裁量を任せるときや配慮を求めるときに使います。よく間違えられますが、敬語ではありません。
よしな‐に
[副]うまいぐあいになるように。よいように。よろしく。「—お伝えください」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「よしなに」は相手の主体性を尊重し、信頼していることを柔らかく伝えられる言葉。最近はビジネスでもカジュアルな表現が好まれる風潮があり、使われる機会も増えつつあるようです。
何かを依頼するときに使う
ビジネスで「よしなに」が使われるのは、主に何かを依頼する場面です。たとえば、以下のような使い方ができます。
・「昨日話し合ったプレゼン資料の構成は、よしなに調整してください」
・上司から「明日の会議資料は、よしなに作成お願いします。」と言われた
・申し訳ありませんが、方針変更についてどうぞよしなにお伝えください
「どうぞよしなにお伝えください」「どうぞよしなに取り計らってください」といった言い回しもあります。詳細を伝えなくても「うまくいくように処理してください」というニュアンスを伝えられるので、使い方によっては便利な言葉です。
「よろしくお願いします」の代わりに用いる
「よしなに」の代表的なもう一つの用法は、「よろしくお願いします」というあいさつの代わりです。
・この度の新規事業立ち上げについて、何卒よしなにご協力をお願いいたします
・関係者の皆様には、何卒よしなにご配慮いただけますと幸いです
・これからもよしなにご指導をお願いいたします
・今後とも、よしなにお付き合いください
「何卒よしなに」「これからもよしなに」といった表現で、メールや手紙の締めのあいさつとしても使われます。ただし、相手との関係性によってはふさわしくない可能性もありますので、用いるときは適切なシーンを選ぶように注意しなければなりません。
「よしなに」を使うときの注意点

「よしなに」を何となく使っている場合、もしかしたら場にそぐわない使い方をしていたり、相手に話が通じていないおそれがあるかもしれません。「よしなに」を使うときに気を付けたいポイントと対応策を見ていきます。
フォーマルな場では使わない
古風な響きがあるため誤解されやすいものの、「よしなに」は敬語ではありません。むしろやや砕けた表現なので、使う相手との関係性やシチュエーションを見極める必要があります。
基本的に、正式な文書や公的機関でのやり取り、クライアントや目上の相手には使用しないほうがよい言葉です。その場合は「ご対応よろしくお願いいたします」「ご検討のほどお願い申し上げます」といった表現が適切でしょう。「よしなに」が使えるのは、カジュアルな言葉が許されるような相手に対してのみです。
仕事の指示内容は具体的に説明する
仕事の指示で使うときは、「よしなに」の持つ〝あいまいさ〟にも気をつける必要があります。「よしなに」は「自分で考えて、ちょうどよく判断してください」という意味です。仕事内容をきちんと理解している相手になら通じるかもしれませんが、漠然とした指示であることには変わりないので、思わぬすれ違いが起きる可能性があります。
自分の考えとまったく違った結果にならないためには、具体的な指示内容とあわせて「よしなに」を使うのがおすすめです。
若い世代には通じない場合がある
「よしなに」はいわゆる『おっさんビジネス用語』の一つとされています。おっさんビジネス用語とは、中高年特有のビジネス用語として若者が違和感を持ちやすい言葉のことです。
そのため、若者世代に対して「よしなに」と言っても、通じない可能性が高いといえるでしょう。一度の会話で理解してもらうには、初めから「よしなに」を使わず言い換えたほうが無難です。
使う言葉の種類が世代によって違う旨を意識し相手に合わせるのは、スムーズなコミュニケーションを取る上で欠かせないことです。
「よしなに」の言い換え表現

前述のように「よしなに」は『おっさんビジネス用語』の一つなので、20代の人なら理解できなくても不思議はありません。若い世代とコミュニケーションを取るときのために、「よしなに」の言い換え表現を押さえておきたいところです。
依頼するシーンでは「適宜」「適切に」など
「よしなに」の言い換え表現は意味合いによって変わります。何かを依頼するシーンでは、「適宜(てきぎ)」「適切」「しかるべく」といった言い換えができます。
適宜は「状況に合っていること」「柔軟に自分の判断で行動するさま」という意味です。適切やしかるべくも「その場面や物事にふさわしい」という意味を持ちます。例文は次のとおりです。
・期限までは、必要に応じて適宜状況報告をお願いします
・顧客からの信頼を得るため、情報開示は適切に行わなければなりません
・「不具合があれば、しかるべく処置してください。わからないことがあれば相談に乗ります」
どれも『相手に状況判断を任せて柔軟な対応を求める』というニュアンスを含んだ、「よしなに」の類語です。
締めのあいさつなら「よろしく」
締めのあいさつとして使う場合の「よしなに」なら、シンプルに「よろしく」がふさわしいでしょう。たとえば、以下のように言い換えられます。
・詳細については添付ファイルをご確認ください。よろしくお願いいたします
・先日の件についてもご検討いただければ幸いです。よろしくお願いいたします
・お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします
「よろしく」は、もともと「ちょうどよい具合に」という意味です。「よろしくお願いします」のあいさつには、『その状況や関係性に合った形で、相手がちょうどよいと思う範囲の協力を求める』ニュアンスが含まれています。
まとめ
-
「よしなに」は、相手に判断や処理方法を任せ、うまく対応してほしいというニュアンスを持つ言葉
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「よしなに」を使うシーンは、主に依頼するときと締めのあいさつの2種類
- 「よしなに」はカジュアルな言い回しなので、フォーマルな場面では使わないほうがよい
「よしなに」は、相手への信頼をそれとなく伝えられる上、細かい要望を省ける便利な言葉だと考える人がいるかもしれませんが…実は誤解も起きやすい言葉。ですので、仕事の指示出しに用いる場合は具体的な方向性も一緒に示すなど、注意点を押さえて適切にお願いしましょう。
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Domani編集部
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