「々」の読み方と意味

そもそも「々」がどういう文字なのか改めて考えてみましょう。そのためにも、まずは「々」の読み方と呼び方、性質・由来に加えて「々」の仲間である踊り字について解説します。
読み方は存在しないが、呼び方は「同の字点」「ノマ点」
「多々」「少々」など、同じ漢字を重ねるときに使う「々」は何と読むか知っていますか? 実は「々」は文字コード上は記号(記号類)に分類されており、字として決まった読み方は存在しません。
「多」の後に付けば「た」、「少」の後に付けば「しょう」といったように読みが変化します。基本的に、前に来る字の読み方を繰り返す形です。
ただし名前がないと不便なので、「同の字点(どうのじてん)」と呼びます。カタカナの「ノマ」をくっ付けたように見えるところから「ノマ点」ともいいます。
の‐ま【々】
《「ノマ」と書くことが多い。「々」が片仮名の「ノ」と「マ」を組み合わせたようにみえるところから》踊り字の一種「々」のこと。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
「々」は繰り返しを意味する踊り字
「々」のように、前に置かれた漢字・単語の繰り返しを意味する記号を、「踊り字」「繰り返し符号」などと呼びます。踊り字の仲間は、たとえば以下のような種類です。
●「々」同の字点ともいう:前に来る漢字1字を繰り返す
●「ゝ」「ゞ」:同じひらがなを2字重ねるときに使う。音が濁るときは濁点が付く
●「ヽ」「ヾ」:同じカタカナを2字重ねるときに使う。音が濁るときは濁点が付く
このほかにも、かなを含んだ2文字以上の単語を繰り返す際に用いる「くの字点」があります。しかし、「々」以外の踊り字は、時代が進むにつれてあまり使わなくなりました。ちなみに現代でもよく見かけるのは、数や語句を繰り返す「〃(ノノ字点)」で、一般的に「点々」などと呼ばれます。
「々」の由来
「々」の由来として、「同」の古い字体である「仝(どう)」が基になったという説があります。また、中国の古い書物に使われていた「二ノ字点」が日本に伝えられ、その後変化して現在の踊り字になっていった説も有力です。
二ノ字点とは、一つの漢字の繰り返しを意味する踊り字のような記号のこと。日本最古の歌集『万葉集』の中にすでに使われており、「々」も平安時代のころには和歌の中で使われた記録が残っています。
その後、1952年頃に内閣総理大臣官房総務課が発表した「公用文作成の要領」に載せられ、広く知られるようになったと考えられています。
「々」の使い方と注意点

手書きなら簡単に書ける「々」も、パソコンや携帯では入力方法を知らないと厄介です。入力の一手間を減らすコツや、「々」の効果的な使い方と注意ポイントを紹介します。
「々」をパソコンや携帯で入力するには?
「々」には決まった読み方がないため、パソコンや携帯を使って「々」だけ入力する方法に悩む人もいます。こういった場合は、時々や長々など「々」を使う単語を入力して前の字を消す人が多いようです。
ですが、もし「々」を単体で出したいときは「どう」「おなじ」と入力すれば変換することができます。
iPhoneの場合は、数字入力に切り替えて「8」からのフリック入力の方が早いかもしれません。「8」のボタンを長く押して、周囲に出てきた選択肢の中から「々」を選びます。

「々」を使うときに注意すること
「々」には、複合語の繰り返しには使えないというルールがあります。たとえば、民主主義は「主」の字が続きますが、民主と主義という二つの単語が合わさったものなので「々」は使えません。例外なのは、繰り返しが忌まれる結婚・葬儀関連の言葉などです。
また、前に来る漢字の繰り返しを意味する記号なので、単語の冒頭や平仮名・片仮名の後にも使用できません。
さらに、踊り字は機種依存文字になることがあるため、仕事の文書やメールに使うのは避けられる傾向にあります。「々」を用いるかどうかは、相手にとって読みやすいか否かを目安として考える必要があるでしょう。ただし、人名や地名に「々」が入っている場合、固有名詞なのでそのまま記載してください。
「々」の効果的な使い方
「々」は、同じ言葉を重ねることで強調したり省略したりする役割を果たします。同じ言葉や音の繰り返しによって強調・省略されると、文章にリズム感が作られるのです。
一例として、「たくさんの木」というよりも「木々」と表現することで連なりのイメージが強められ、風景描写や心理描写に詩的な味わいを生むことができます。
ビジネスにおいても「々」を使って同じ漢字や単語を2回続ければ、文章がより見やすくスッキリした印象になるはずです。使い過ぎは逆効果ですが、ポイントを絞って活用すれば読み手に好印象を与えられるでしょう。
「々」を使った言葉と例文

日常生活でよく使われる言葉のうち、「々」の入っている言葉や四字熟語、それぞれの例文を紹介します。普段から生活の中に「々」が存在していることがわかるかと思います。
よく使われる「々」の単語
生活やビジネスシーンにおいて、「々」は広く利用されています。よく使われる「々」の単語とその例文は、以下のとおりです。
●人々:私たちの新しい技術は、より多くの人々の生活を豊かにします
●日々:市場の動向は日々変化しており、常に情報収集が重要です
●時々:会議では時々、意見が対立することもあります
●続々:新サービスへの問い合わせが続々と入ってきました
●着々:売上目標の達成に向けて、着々と数字を積み上げています
「々」を使うときは前の漢字の音を繰り返しますが、人々(ひとびと)・日々(ひび)などのように、後ろの音が濁音になる場合もあります。
「々」が付く四字熟語
「々」の主な役割は、同じ漢字を重ねて強調することと、省略によって見やすさを与えることです。「々」が付く四字熟語の例は次のとおりです。
『三々五々(さんさんごご)』
人や集団があちらこちらに散らばっている様子、またはバラバラに行く様子をいいます。
●放課後になったので、生徒は三々五々帰り始めた
『時々刻々(じじこくこく)』
経過していく時間の一刻一刻や、間をおかないで引き続いているさまを指します。
●現代社会は情勢が時々刻々と変化するので予測がつきにくい
『戦々恐々(せんせんきょうきょう)』
恐れ怯えている状態です。重ねられた「戦」と「恐」という文字から、緊張感が伝わってきます。
●彼は今年の総決算となる大事な発表を前に、戦々恐々としていた
同じ漢字が重ねられた強調表現の多くは「々」で置き替えられます。「々」が付く四字熟語にはリズム感があり、適切に使えばスマートな表現が可能です。
まとめ
-
「々」は記号なので読み方はないが、呼び方はある
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「々」は漢字一字の後に付き、その漢字を繰り返す
- 「々」の主な役割は、言葉を重ねて強調することと省略によって見やすくすることである
「々」は日本語のリズム感やスマートな強調表現に役立つ便利な言葉です。ただし、使い過ぎは逆効果。また、文字化けする恐れがある場合は、使うのを避けたほうがよいといえるでしょう。あくまでも、相手の読みやすさに配慮することが大事です。
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Domani編集部
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