「口惜しい」とは？ 意味・使い方・悔しいとの違いも解説

「口惜しい」と書くと、どこか古風で重苦しい感じがしませんか？ しかし実は、ビジネスでも日常でも、感情の奥行きを端的に伝えられる便利な表現です。本記事では「悔しい」との違いや使い方、言い換え表現まで、すぐ使えるかたちで整理していきます。

「口惜しい」とはどんな言葉か？｜意味と語源を解説

悔しさだけでなく、どこか切なさや強い思いを感じさせる「口惜しい」という表現。意味の幅と、古典に根差す背景を知ることで、場にふさわしく使える言葉に変わります。

「口惜しい」の読み方と意味

「口惜しい」は、「くちおしい」と読みます。単なる悔しさでは言い切れない複雑な感情を含んでいるといえるでしょう。

思うようにいかなかったり、大切なものを失ったりして、失望・落胆した気持ちを表します。

辞書では次のように説明されていますよ。

くち‐おし・い〔‐をしい〕【口惜しい】
［形］［文］くちを・し［シク］
１ 思うようにいかなかったり大切なものを失ったりして残念に思うさま。また、いまいましく思うさま。くやしい。「こんな結果になるなんて―・いことだ」
２ 対象が期待外れで満足できないさま。つまらない。取り柄がない。
「人のありさまの、とりどりに―・しくはあらぬを」〈源・若菜下〉
３ 身分などが低くて言うに足りない。取るに足らない。
「いと―・しき際（きは）の田舎人こそ」〈源・明石〉
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

古語「口惜し」とのつながりと語源

「口惜しい」の語源は、古語「口惜（くちを）し」にあります。この言葉は平安時代から多くの古典に登場しており、『竹取物語』『源氏物語』『枕草子』『徒然草』などの文学作品で使われていたことが確認されています。

『枕草子』では「くちをしきもの」として、雪を期待した日に雨が降る場面でのがっかりした気持ちが綴られています。

語源については諸説ありますが、一説には、ものが「朽ち」るのを「惜し」むことから、「朽惜（くちおし）」というようになったのではないかといわれています。

「口惜しい」は、失望・落胆した気持ちを表します。

「悔しい」と「口惜しい」はどう違う？

「悔（くや）しい」と「口惜しい」は、どちらも似たような場面で使われますが、意味合いやニュアンスには微妙な差があります。いずれも、物事が思い通りにいかなかったり、辱められたりしたときに、失望や不満を抱く心情を表す言葉です。

英語では「regrettable」と訳されることが多く、共通する感情を指しています。

「悔しい」と「口惜しい」の違い

「悔しい」は、日常生活の中で広く使われている表現です。例えば「一問も正解できず悔しい」というように、自分の力不足や不運を振り返って、無念に思う気持ちを表すときによく用いられます。

対して「口惜しい」は、「弁明の機会が与えられないとは口惜しい限りです」というように、「失望」や「落胆」をしたときに使われることが多いでしょう。

「口惜しい」は「くやしい」とも読む

ちなみに、「口惜しい」は「くやしい」とも読みます。覚えておきたいですね。

参考：『使い方の分かる 類語例解辞典』（小学館）

「悔しい」は、日常生活の中で広く使われている表現です。理不尽さなどを強調したいときには「口惜しい」を使うといいでしょう。

「口惜しい」の使い方を例文でチェック

ここでは、「口惜しい」の具体的な使い方を確認しましょう。

「努力を重ねたにもかかわらず、結果が出せなかったのは口惜しい」

成果を期待して頑張ったのに報われなかった状況での用法です。「悔しい」よりも、深い落胆や無念さを強調しています。

「誤解されたまま反論の機会を与えられないのは、実に口惜しい」

自分の立場を説明できないという理不尽さを表しています。ここでは「悔しい」よりも「不当さ」に焦点が当たっています。

「若い頃にもっと学んでおけばよかったと、今になって思うと口惜しい」

過去を振り返っての後悔や残念さを表す場合です。「悔しい」よりも強い気持ちを感じます。

「功績が正当に評価されなかったのは、まことに口惜しいことです」

自分の努力や成果が軽んじられた場面で使う例です。無念さがにじみ出ていますね。

最後に

「口惜しい」は単なる「悔しい」ではなく、状況への理不尽さや落胆を含むため、改まった言い回しや文章語として適しています。深い落胆や失望を伝えたいときに、活用してみてください。

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