「けしからん」の正しい意味とネットスラングとしての使い方｜語源・使い方・類語を解説

「けしからん」は、怒りや非難の表現として時代劇などでも出てくる言葉です。『サザエさん』では磯野波平さんがよく発する言葉でもありますね。

しかし、古語をたどると、意外な使い方も見えてきます。日常での適切な使い方を知ることで、誤解を招かず、自分らしく言葉を使いこなす視点が得られますよ。

この記事では、「けしからん」にクローズアップして紹介します。

「けしからん」とはどういう意味？

まずは「けしからん」の意味から確認していきましょう。

「けしからん」の意味と語源

「けしからん」は「はなはだよくない」という意味を持つ語です。辞書では、次のように説明されていますよ。

けしから◦ん【▽怪しからん】
［連語］《形容詞「け（怪）し」の未然形に打消しの助動詞「ぬ」の付いた「けしからぬ」の音変化》道理にはずれていて、はなはだよくない。不届きだ。「うそをつくとは―◦ん」
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

「けしからん」は、「けしからぬ」が音変化した語です。

ここでの「けし」は、古語で「異常である」や「変だ」という意味を持つ形容詞「怪し（けし）」の未然形にあたります。これに、打消しの助動詞「ぬ」が付いた「けしからぬ」が原型です。

現代の「けしからん」はどんな場面で使われる？

近年では、「けしからん」という語は幅広い場面で使われるようになっています。報道や時代劇などでは、きびしい非難の言葉として登場することが多く、原義に近い使い方がなされます。

一方、SNSやネット上では、軽い皮肉や冗談めかした言い回しとして使われるケースが目立ちます。例えば「この写真はけしからん！」と言いつつ本心は「もっと見せてほしい」といった具合に、表向きは叱っているようでいて、実際は好意や興味をにじませる照れ隠しのような言葉として活躍しています。

本来の意味は、道理に外れた行為を非難するもの。

会話や文書でどう使う？「けしからん」の自然な使い方と注意点

意味を理解したら、使い方を確認しましょう。ここでは、具体的な例文をもとに見ていきます。

「公共の場で大声を出して他人に迷惑をかけるとは、まったくけしからん」

本来の意味に忠実な用例。社会の秩序や道理に反する行動を強く非難しています。

「試験中にカンニングをするなど、学生としてけしからん行為だ」

道徳や規則に反する行為を糾弾する場面。教育現場などで用いられることがあるでしょう。

「この笑顔はけしからん！」

一見叱責の形をとりながら、実際には「魅力的すぎる」「抗えない」といった肯定的ニュアンスを込めた現代的な使い方の例です。ネット上や友人との会話などで見受けられます。

「うらやまけしからん」とは？

近年では、「けしからん」を親しみやすくアレンジした言い回しも見られます。中でも「うらやまけしからん」は、「うらやましい」＋「けしからん」の合成語で、うらやましい気持ちと嫉妬を同時に伝えるネットスラングとして広がりました。

「うらやましいけれど、なんとなくずるい気がする」といった複雑な感情を、明るくおどけたトーンで共有できるのがこの表現の特徴です。

「けしからん」の類語や言い換え表現は？

「けしからん」と同じように、道理に外れた行為や人を強く非難する言葉はいくつか存在します。ここでは代表的なものを挙げ、それぞれの意味と使い方を紹介します。

不埒（ふらち）

道理にはずれて、けしからぬことを指します。「あんな不埒なやつは許せない！」などというように使いますよ。

不届千万（ふとどきせんばん）

極めて不届きなことを意味する強い非難語です。「なんと不届千万な所業か」「不届千万にもほどがある」などというように使います。

不品行（ふひんこう）

品行が悪く、身持ちがよくないことを表します。社会的にふさわしくない行動を指摘する場面で用いられますよ。「不品行な生活態度」、「学生として不品行だ」などというように使います。

参考：『デジタル大辞泉』（小学館）

最後に

「けしからん」は古語のような響きを残しつつ、現代ではユーモアや皮肉を込めた使い方もあったりします。意味だけでなく、使いどころと背景を知ることで、自信を持って自然に言葉を使えるようになりますね。

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