Summary
- 「取り越し苦労」は、起きてもいないことを心配すること
- 言葉の背景には「未来を先取りして不安になる」感覚がある
- 類語は「杞憂」「懸念」「憂慮」など、場面で使い分け可能
Contents
「起きてもいないことを、つい心配してしまう」—そんな思考パターンをぴったり表すのが「取り越し苦労」という言葉です。
感情を整理したり、周囲に配慮しながら伝えたりするときに役立つこの言葉。意味や使い方、日常や仕事での使いどころまでを丁寧に解説します。
「取り越し苦労」とは?|言葉の成り立ちから正しく理解する
不安に思っていることを言葉にすると、気持ちが少し軽くなることがあります。「取り越し苦労」は、そんな場面で使いやすい表現の一つ。意味と背景を知ることで、より自然に使えるようになります。
「取り越し苦労」の基本的な意味とは?
「取り越し苦労」は、「とりこしくろう」または「とりこしぐろう」と読みます。まだ起きてもいない未来のことについて、必要以上に心配し、そのことで心をすり減らしてしまう状態を指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
とりこし‐くろう〔‐クラウ〕【取(り)越し苦労】
《「とりこしぐろう」とも》どうなるかわからないことをあれこれ心配すること。杞憂(きゆう)。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
現実には何も起きていないのに、想像の中で不安がふくらみ、気持ちが沈んでしまう—そんな心理をぴたりと表現しています。
「考えすぎだよ」と言われた経験がある人なら、きっとこの言葉に心当たりがあるのではないでしょうか?

なぜ「取り越し」と言うのか?|表現に込められた感覚
元々「取り越す」は「先のことをあれこれと考える」「予測する」という意味があります。
つまり「取り越し苦労」は、未来に起こるかもしれない出来事を「先回りして」引き寄せ、自分から苦労を招いてしまう姿を表現しているのです。
合理的な思考では片づけられない、人間らしい心のクセが、この一語の中にやさしく包まれているようにも感じられますね。
「取り越し苦労」とは、起きてもいない未来を不安に思う心理を示す表現。
「取り越し苦労」の類語は?
「取り越し苦労」は日常会話やビジネスシーンでよく使われますが、同じような意味を持つ表現はいくつも存在します。状況に応じて使い分けることで、文章表現がぐっと豊かになりますよ。ここでは代表的な類語を紹介します。
杞憂(きゆう)
「杞憂(きゆう)」とは、根拠のない心配や取り越し苦労を指す言葉です。古代中国・杞の国の人が「天が落ちてくるのではないか」と憂えて寝食を忘れたという故事に由来します。つまり、あり得ないことを心配してしまうときに使われます。
懸念(けねん)
「懸念」は、気にかかって心が落ち着かないことを意味します。「取り越し苦労」と違い、未来に起こるかもしれない悪いことの実態がなくても使われる点が特徴です。まだ確定していない問題について「心配している」というニュアンスを持ちます。
憂慮(ゆうりょ)
「憂慮」は、「懸念」と同様に気がかりで心配することを表しますが、より事態が深刻な場合に使われます。現実に悪い兆候が見えており、放置すれば重大な問題や事件に発展する恐れがあるときに使われる表現です。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

杞憂や懸念など状況に応じて選べる近い表現があります。
「取り越し苦労」の使い方|日常にもビジネスにも生かせる表現術
この言い回しが活躍するのは、気持ちを共有したいときや、相手をやさしく諭したい場面です。使いどころを知ることで、あなたの言葉はもっと伝わるものになります。
会話の中で自然に使うには?|相手に寄り添う一言として
身近な人が不安を口にしたとき、「そんなに取り越し苦労しなくても大丈夫だよ」とやさしく声をかけるだけで、気持ちが少しほぐれることもあります。
この言い回しには、相手の心配を頭ごなしに否定せず、気遣う気持ちをやわらかく伝える力があります。「気にしすぎないで」というニュアンスを、やさしく表現できるのが特徴です。
とっさの会話で自然に使えるようになると、言葉の印象にも落ち着きが感じられるようになるでしょう。


