10月になると、季節の変わり目を感じさせる場面が増えてきます。そんな時、手紙やビジネスメールで相手に季節感を伝える「時候の挨拶」は欠かせません。でも、時候の挨拶ってどう書けばいいの? と悩む人も多いはず。
そこで本記事では、時候の挨拶の基礎知識から、ビジネスシーンで使える10月の時候の挨拶について解説します。
【目次】
時候の挨拶とは?
「時候の挨拶」とは、手紙やメールなどで本題に入る前に、その季節感を表現し、相手を気遣うために使う挨拶文のことです。
日本には、四季のほかに「二十四節気(にじゅうしせっき)」と呼ばれる、旧暦に基づいた季節の区分があります。1年を24に分け、それぞれに季節に合った名前がつけられているのはご存じの通りです。「春分」や「夏至」といった言葉は、その代表的なものですね。
時候の挨拶では、この二十四節気を参考にすることが一般的ですが、実際の体感的な気候とは異なることもありますので、状況に合わせて使うといいでしょう。
10月の二十四節気には、10月8日頃の「寒露(かんろ)」と10月23日頃の「霜降(そうこう)」があります。これらは、10月の時候の挨拶でよく使われる言葉です。
時候の挨拶には2種類ある
時候の挨拶には、大きく分けて「漢語調」と「口語調」の2種類があります。
「漢語調」は、フォーマルで格式の高い表現が特徴で、企業の挨拶文や儀礼的な文書でよく使われます。例えば、「寒露の候」や「霜降の候」といった短く堅い表現がこれにあたります。
一方、「口語調」は、より親しみやすくカジュアルな表現です。「秋晴が心地よい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか」など、友人や知人への手紙でよく使われます。
時候の挨拶では、相手やシチュエーションに応じて「漢語調」と「口語調」を使い分けるといいですね。
10月の時候の挨拶・ビジネスで使える「漢語調」の慣用句
ビジネスの場では、かしこまった表現で季節感を伝えることが求められます。ここでは、10月に使える漢語調の表現をご紹介します。
秋冷の候
「秋冷の候」は、肌寒さを感じ始める時期に使える表現です。季節を感じさせつつ、相手の体調を気遣うのに適しています。
紅葉の候
紅葉が進む季節に使える「紅葉の候」は、秋の風景を美しく描写する表現です。ただ最近では紅葉も11月に入ってからということも増えていますから、実際の季節に合わせて使ってくださいね。目上や取引先に使うと、風情を感じさせる一文になります。
初霜の候
「初霜の候」は、霜が降り始める11月に近づく頃に使う挨拶です。冬の到来を予感させる表現で、年末に向けたビジネスの締めくくりにも使えます。
10月の時候の挨拶・ビジネスで使える「口語調」の慣用句
口語調の時候の挨拶は、親しみやすさを重視した表現です。ビジネスでも、相手との関係性によっては、やわらかい口語調を使う方が自然な場合もあります。ここでは、ビジネスで使える口語調の慣用句をご紹介します。
秋たけなわのこの頃
秋が深まってきた時期に使えるこの表現は、落ち着いた雰囲気と共に相手への気遣いが感じられます。季節の豊かさを伝えるのに適したフレーズです。
菊薫る季節となりました
菊の香りが漂う秋の季節を表現する言葉です。10月の季節感を盛り込みながら、相手に温かい印象を与えます。
実りの秋を迎えました
実りの季節であることを伝えるこの表現は、収穫の豊かさを感じさせます。特に、相手の繁栄や成長を祈る際に使いやすい言葉です。
10月の時候の挨拶・お礼状等で使える例文は?
10月に出す、案内状やお礼状等で使える例文を紹介します。時候の挨拶を冒頭に書き、本題を述べ、最後に結びの挨拶で締めくくるのが基本の流れです。10月にふさわしい表現を取り入れ、相手に温かみと丁寧さを伝えましょう。
例文1
拝啓 秋冷の候、貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。
平素より格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
〈本題〉
今後とも変わらぬご厚情を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます。
敬具
例文2
拝啓 紅葉の候、朝夕は冷え込む日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
〈本題〉
寒暖差が激しい季節ですので、どうぞご自愛くださいませ。
敬具
季節感を大切にしつつ、相手の健康や繁栄を祈る一文を添えることで、印象深い案内状やお礼状等を作成することができます。
【書き出し】10月上旬に使える挨拶例文
10月上旬は、秋の始まりを感じられる爽やかな時期です。漢語調では、格式高く秋の到来を感じさせる表現が適しています。特に「寒露の候」は、10月8日頃から使用できますので、早秋の挨拶として覚えておくと便利ですよ。口語調の挨拶では、「秋晴れの心地よい季節となりました」など、過ごしやすい気候に触れつつ、相手の健康を気遣う表現が好まれるでしょう。
【漢語調の例文】
「清秋の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
「寒露の候、ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます」
【口語調の例文】
「秋晴れの心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか」
【書き出し】10月中旬に使える挨拶例文
10月中旬の挨拶では、「秋冷の候」や「菊花の候」といった表現が使われます。口語調の挨拶では、季節の美しさや過ごしやすさを伝えつつ、相手の体調を気遣う言葉を添えるといいでしょう。
【漢語調の例文】
「秋冷の候、皆様ますますのご繁栄のこととお慶び申し上げます」
「菊花の候、貴社ますますのご隆盛をお祈り申し上げます」
【口語調の例文】
「朝夕の涼しさが増してきましたが、いかがお過ごしでしょうか」
【書き出し】10月下旬に使える挨拶例文
10月下旬は秋も深まり、寒さが感じられる時期。寒暖差が激しくなるため、口語調の挨拶では相手の体調を気遣う表現が効果的でしょう。漢語調では、季節の移ろいを上品に伝える言葉が求められます。
【漢語調の例文】
「晩秋の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
「霜降の候、貴殿におかれましてはご健勝のこととお喜び申し上げます」
【口語調の例文】
「朝夕の冷え込みが厳しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか」
【結び】10月上旬に使える挨拶例文
10月上旬は、過ごしやすい秋の始まりを迎えます。秋ならではの話題を取り入れた結びの挨拶が効果的です。
「秋の訪れを感じながら、皆様のご健康を心よりお祈りいたします」
「実りの秋、どうぞ季節の味覚をお楽しみください」
「爽やかな秋晴れの下、ますますのご健勝をお祈り申し上げます」
【結び】10月中旬に使える挨拶例文
10月中旬は、体調への配慮を添えるとより心のこもった結びになります。
「秋冷が深まってまいります折、皆様のご健康をお祈り申し上げます」
「秋風が涼しく感じる頃、今後のご繁栄を心よりお祈りいたします」
「季節の移り変わりを楽しみつつ、お健やかにお過ごしください」
【結び】10月下旬に使える挨拶例文
10月下旬は、寒さが増します。相手の健康や過ごしやすさを気遣う結びを添えると、より温かい印象を与えるでしょう。
「寒暖差が激しくなる時期ですので、どうぞご自愛くださいませ」
「晩秋の折、益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます」
「朝夕は冷え込んでまいりますが、健康には十分ご留意ください」
10月の挨拶で用いられるキーワード
10月の挨拶文に、旬の食材や季節の花を取り入れることで、季節感を伝えつつ親しみを感じてもらえる挨拶になります。ぜひ参考にしてみてください。
花や動植物
金木犀、菊、紅葉、すすき、紫式部、秋桜(コスモス)、銀杏、芒(すすき)
食べ物
栗、新米、さつまいも、かぼちゃ、柿、りんご、松茸、銀杏、里芋、しめじ、秋刀魚、秋鮭、葡萄
最後に
秋の訪れを感じる10月、日々の挨拶にも季節の彩りを添えたいですね。心地よい風が吹き始めるこの時期、時候の挨拶は単なる形式を超え、相手への心配りや季節を共に感じる瞬間にもなります。ビジネスでもプライベートでも、少しの工夫で日々のやりとりに温かさが加わるはず。
そんな一工夫をあなたも取り入れて、印象に残るコミュニケーションを楽しんでください。
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