Summary
- 「薫陶」は、「優れた人格で感化し、立派な人となるよう教え育てること」を意味。
- 「薫陶」は、香をたいて薫りをしみこませ、粘土をこねて形を整え陶器を作る行為から生まれた言葉。
- フォーマルな挨拶文・スピーチ・送別メッセージで使うと、品のある印象に。
「薫陶(くんとう)を受ける」という表現、どこか格式ばっていて使いづらいと感じたことはありませんか? 耳にすることはあっても、実際に自分が使うとなると戸惑う人も多いでしょう。
そこで、この記事では、意味・読み方・使い方を丁寧に整理し、自由に使いこなせるようにお手伝いします。
「薫陶」とはどんな意味? 語源もチェック|誤解なく使うために知っておきたいこと
まずは、「薫陶」の読み方と意味から確認していきましょう。
「薫陶」の読み方と意味
「薫陶」は、「くんとう」と読みます。「優れた人格で感化し、立派な人となるよう教え育てること」を意味します。つまり、知識や技術を教えるだけでなく、日々の姿勢や生き方を通して相手にいい影響を与えることを指します。
改まった言い方で、主に文章で使われる言葉です。辞書では次のように説明されています。
くん‐とう〔‐タウ〕【薫陶】
[名](スル)《香をたいて薫りを染み込ませ、土をこねて形を整えながら陶器を作り上げる意から》徳の力で人を感化し、教育すること。「―のたまもの」
「しかし若い生徒を―するのは中々愉快なものですよ」〈野上・真知子〉
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
厳しい指導や叱責ではなく、日々のふるまいや姿勢を通じて、相手の在り方そのものを変えていく——。それこそが、「薫陶」という言葉が持つ本質です。

「薫陶」の語源は?
「薫陶」は、香をたいて薫りをしみこませ、粘土をこねて形を整え陶器を作る行為から生まれた言葉です。
香を焚きしめて心に沁み込ませ、土を練って器をつくるように、人の心を育てる——そんな情景が浮かんでくるようですね。
「薫陶」は人格を通して人を導き育てることを意味する表現。
ビジネスで使える「薫陶」の表現
ここでは、ビジネスシーンでの「薫陶」の使い方を具体的に見ていきましょう。フォーマルな場面でも、かしこまりすぎず自然に敬意を伝えるコツがあります。
「薫陶を受ける」とはどういう場面で使う?
「薫陶を受ける」という表現は、目上の人や尊敬する相手から深い教えや影響を受けたことを伝えるときに使われます。
使用されるシーンとして多いのは、異動や退任の挨拶文、感謝を伝えるメール、式辞など。単に業務上の指導を受けたというよりも、人としての姿勢や考え方に学びを得たときに使うと、言葉に重みが出ます。
例えば
「○○部長からは業務の進め方だけでなく、常に相手を思いやる姿勢についても多くの薫陶を受けました」
このように表現することで、感謝だけでなく、相手への尊敬の念が自然と伝わります。
日々のやり取りの中で、言葉や行動から静かに影響を受けてきた…。そんな背景があるときにこそ、「薫陶」という言葉がぴったりと響くでしょう。

「賜る」「授かる」「いただく」
「薫陶」に続けて使われることの多い言葉には、「賜る(たまわる)」「授かる」「いただく」があります。それぞれの意味を確認しましょう。
・「賜る」・「いただく」:「もらう」の謙譲語で、相手に敬意を表します。
・「授かる」:身分の高い人や神などから何かをもらうことを表します。
相手との関係性や場の格式に合わせて、言葉を選ぶことで、より自然な敬意を伝えられます。
場に応じた言い換え表現は?
「薫陶を受ける」という表現は美しいですが、少しかしこまった印象を与えることもあります。まだ在職中の上司や、日常的にやり取りする相手に対して使うと、やや重く感じられることもあるかもしれません。
そのような場合は、次のようなやわらかい言い換えが効果的です。
「日々のやりとりの中で、多くの学びをいただいております」
「○○さんの姿勢に、いつも刺激と気づきをいただいております」
また、「ご指導」「ご助言」「ご高配」などの言葉に置き換えることで、距離を調整しつつも、丁寧さを保つことができます。
大切なのは、自分の立場や関係性に合わせて、心を込めること。「薫陶を受ける」という言葉は、心から尊敬と感謝を抱いたときにこそ、最も美しく響く表現です。
例文で見る「薫陶」の使い方|メール・会話・式辞に生かす
ここでは、具体的な例文とともに「薫陶」の使い方を確認していきましょう。
「部長の温かいご指導のもと、多くの薫陶を受けました」
最も一般的で使いやすい表現です。「温かいご指導」と「薫陶」を組み合わせることで、単なるスキル指導ではなく、人間的な成長を導かれた感謝を丁寧に表せます。
異動・退職・送別の挨拶文などに最適です。
「先生からの薫陶を胸に、今後も精進してまいります」
「薫陶を胸に」という表現は、学んだ教えを心に刻んで行動するという意味合いを強調します。講演会の謝辞や卒業・研修終了時のスピーチなど、フォーマルな場面でよく使われます。

「先輩方から薫陶を賜り、社会人としての基礎を築くことができました」
「賜り(たまわり)」を組み合わせることで、敬意を表すことができます。社内報やスピーチ、上司・役員への感謝文など、公式な挨拶文にぴったりです。
「創業者の志と薫陶が、今も社員一人一人に受け継がれています」
「薫陶」を組織文化や理念の継承に使った例です。企業紹介・周年記念誌・社史などで、リーダーの精神的影響を表現する際に用いられます。
最後に
POINT
- 「薫陶」は徳や人柄を通じて教育・感化することを指す。
- 香をたいて薫りをしみこませ、粘土をこねて形を整え陶器を作る行為から生まれた言葉。
- 改まった言葉で、主に文章で使われる。
「薫陶」という言葉には、人の在り方を通して影響を与える力が込められています。それは厳しさや叱責ではなく、日々の姿勢や思いやり、信念の積み重ねから生まれるもの。
ビジネスの世界でも、誰かの薫陶を受けて自分が変わる瞬間がありますし、反対に自分の言葉や行動が、誰かの心に静かに残ることもあるでしょう。
「薫陶」という言葉を知ることは、「人としてどうありたいか」を見つめ直すきっかけにもなるかもしれませんね。
TOP・アイキャッチ・吹き出し画像/(c) Adobe Stock
TEXT
Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けたファッション&ビューティをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれや美容を楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッション感度の高いエディターを通して発信中。
https://domani.shogakukan.co.jp/
あわせて読みたい


