「立冬」と「冬至」の違いとは？ 季節を知る手がかりと暮らしの結びつき

「立冬」と「冬至」。どちらも冬の節目として知られていますが、意味や時期には明確な違いがあります。この記事では、暦の上での定義や自然現象とのつながり、暮らしに根づいた風習まで含めて、2つの節目をわかりやすく整理します。

季節を深く味わうための手がかりとしてみてください。

「立冬」と「冬至」はどう違う？

ここでは、「立冬」と「冬至」の定義を確認し、理解を深めましょう。

立冬は「暦の上での冬の始まる日」

立冬は、二十四節気のひとつで、冬の到来を告げる節目にあたります。太陽の黄経が225度に達したときが立冬とされ、2025年の立冬は11月7日（金）です。

この日から立春の前日までが、暦のうえでの「冬」となります。かつての暮らしでは、この日を境に冬支度が始まり、住まいや衣類、食生活にも変化が見られました。

また、北国や山間部では初冠雪の便りが届き、冬の季節風が吹き出すのもこのころです。こがらしや時雨（しぐれ）といった自然現象にも、冬の始まりが感じられます。

辞書では次のように説明されていますよ。

りっ‐とう【立冬】
二十四節気の一。太陽の黄経（こうけい）が225度に達する日をいい、太陽暦で11月7日ごろ。暦の上で冬の始まる日。《季 冬》「―やとも枯れしたる藪からし／亜浪」
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

冬至は「一年で昼が最も短い日」

冬至は、一年の中で昼の時間がもっとも短く、夜がもっとも長い日です。太陽の黄経が270度に達する日で、2025年の冬至は12月22日（月）です。

この日を境に、日照時間が少しずつ長くなっていきますが、暦の上では冬のまっただ中にあたり、寒さが本格化していく節目でもあります。

冬至は太陽の動きという科学的な現象に基づいていますが、そこに人々の願いや祈りが重ねられてきました。冬至は太陽の力が再び高まり始める日とされ、古代は冬至が一年の始まりでした。

今でも、柚子湯に入ったり、かぼちゃや小豆粥を食べたりする風習が受け継がれており、心と体を整える日として親しまれています。

辞書では次のように説明されています。

とう‐じ【冬至】
二十四節気の一。太陽の黄経（こうけい）が270度に達する日をいい、太陽暦で12月22日ごろ。太陽の中心が冬至点を通過する。北半球では一年中で昼がいちばん短く、夜がいちばん長くなる日。この日にはゆず湯に入ったり、地方によってはカボチャを食べたりする風習がある。《季 冬》「山国の虚空日わたる―かな／蛇笏」⇔夏至（げし）。
引用：『デジタル大辞泉』（小学館）

参考：『日本大百科全書』、『日本国語大辞典』（ともに小学館）、『世界大百科事典』（平凡社）

立冬は冬の始まり、冬至は一年で昼が最も短い日を示す節目。

「立冬」と「冬至」に行われる行事と風習

ここでは、「立冬」と「冬至」の時期に行われる、いにしえから受け継がれる行事と風習を紹介します。冬の訪れを感じながら、人々がどのように季節と寄り添ってきたのかを見ていきましょう。

立冬の時期に行われる行事と風習「亥の子（いのこ）」

旧暦10月の「亥の日」、特にその年の初亥の日を「亥の子」と呼びます。太陽暦ではおおよそ11月初旬にあたり（2025年は11月2日(日)が亥の日）、この日は病気や災いを退けることを願って、新穀でつくった「亥の子餅」を食べる風習があります。

この行事は古くから宮中で行われ、それを受けて幕府でも営まれました。のちに西日本の農村では収穫祭として広まり、子どもたちが縄で石を縛り、地面を叩いて回る「亥の子突（いのこつき）」という遊びも生まれました。大地の恵みに感謝し、健康と繁栄を祈る日でもあります。

立冬の時期に行われる行事と風習「酉の市（とりのいち）」

11月の「酉の日」に行われる鷲（おおとり）大明神の祭礼で、浅草の鷲神社の酉の市が特に有名です。境内には、商売繁盛や開運を願う人々で賑わい、福を「かき込む」熊手の縁起物が並びます。

江戸のころから続く華やかな歳末行事で、いまも「来年もいい年になりますように」と願いを込め、威勢のよい掛け声とともに熊手を手にする人々の姿が見られます。

冬至の時期に行われる行事と風習「除夜の鐘」

一年の終わり、大晦日の夜に寺院で撞かれる「除夜の鐘」。百八あるとされる人間の煩悩を払うために、鐘は百八回鳴らされます。

静かに響く鐘の音に耳を傾けながら、行く年を思い、新しい年を迎える心の準備をする… 日本ならではの情緒あふれる習わしです。

冬至の時期に行われる行事と風習「若水（わかみず）」

「若水」とは、元日の朝に汲む清らかな水のこと。かつては年男が身を清めて井戸や川から水を汲み、まず神棚に供えるのが習わしでした。この水は「命を継ぐ水」として尊ばれ、再生と新年の始まりを象徴しています。

現代では、水道水やミネラルウォーターであっても、清らかな心で新年を迎え、命の循環を思う気持ちがあれば、それも立派な「若水」といえるのではないでしょうか。

参考：『日本の歳時記』（小学館）

最後に

立冬と冬至は、どちらも冬を意識する大切な節目ですが、役割も意味合いも異なります。立冬は暦の上での「始まり」、冬至は自然のうつろいを象徴する「折り返し」。その違いを知ることは、私たちの暮らしや心持ちに静かな余白をもたらしてくれます。季節のリズムを、自分らしく味わうヒントとして取り入れてみてください。

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