「犬猿の仲」の意味
言葉の由来を紹介する前に、「犬猿の仲」の意味を解説します。ごく一般的になっていることわざにも、改めて意味を確認すれば「知らないこと」が隠されているかもしれません。
非常に仲が悪いことを表すたとえ
「犬猿の仲」の意味は「すこぶる仲が悪いこと」です。
けんえん【犬猿】 の 仲(なか)
犬と猿のようないがみあう間柄。仲の悪いたとえ。犬猿の間柄。
出典:小学館 デジタル大辞泉
「犬猿の仲」が示す仲の悪さは相当なものとされています。そのため、少しだけ険悪なムードが流れている程度の間柄には「犬猿の仲」という言葉はなかなか使われません。憎悪にも似た敵意を持っている間柄を表現するために使われます。
また「犬猿の仲」は、仲の悪い2人が互いに敵対心を持っている場合に使われる言葉です。基本的にどちらか一方が相手を嫌っている場合には用いられないといえるでしょう。
「犬猿の仲」の由来
なぜ仲が悪いことのたとえに「犬」と「猿」が用いられるようになったのでしょうか。現状で明確に由来とされているものはありませんが、よくいわれている説を紹介します。

干支の順番を決める競争から
「犬猿の仲」ということわざは、日本の干支を描いた昔話の一場面に由来するといわれています。動物たちでレースを行い、神様にあいさつに来た順番を基に干支の順番を決めるというのが昔話の大筋です。
昔話の中で犬と猿は、共に神様のもとを目指そうと一緒に出発するほど仲が良い間柄として描かれています。しかし道中、犬と猿の胸中に段々と「神様の下にいち早く着きたい」との思いが生まれ、最終的には喧嘩をしながらゴールにたどり着いたとされています。このような物語の顛末から「犬猿の仲」という言葉が生まれたともいわれているのです。
狩猟に出たときのあるあるから
狩猟を行うときによく見られたワンシーンから、ことわざ「犬猿の仲」が生まれたとする説も。
昔、狩猟に出かける際には犬を連れて行くことが多かったといわれています。狩猟に帯同した犬は「猟犬」と呼ばれ、獲物の場所をハンターに教えたり、ハンターと協力して獲物を追い込んだりする役割を担っていたそう。
狩猟を行っていると、猿に出会うケースはよくあることのようです。猿は縄張り意識が強い動物であるため、狩猟に同行している犬を見つけると、烈火のごとく威嚇したといいます。この様子を見たハンターが「犬と猿は仲が悪い」と感じ、このことわざが生まれたともいわれているのです。
「犬猿の仲」と併せて知りたい言葉
「犬猿の仲」は類義語・対義語に当たる言葉が数多く存在することわざです。「犬猿の仲」の類義語と対義語を紹介します。セットで覚えて、さらにボキャブラリーを強化しましょう。

「犬猿の仲」の類義語
「犬猿の仲」の類義語の代表例が「水と油」です。「水と油」の意味は「性格が合わずに決して調和しないこと」を表します。性質が異なる水と油は、いくらかき混ぜても決して混ざり合わないことから、この言葉が生まれたとされています。
「反りが合わない」も「犬猿の仲」の類似表現といえるでしょう。「反りが合わない」は「気質が合わずにうまくいかないこと」を表す慣用句です。刀の反り方が刀を収めるケース「鞘(さや)」の形に合っていないと、きれいに刀を鞘に戻せないため、この言葉が生まれたとされています。
「犬猿の仲」の対義語
「犬猿の仲」の対義語としては「管鮑の交わり」が挙げられます。「管鮑の交わり」は「かんぽうのまじわり」と読むことわざです。
「管鮑の交わり」は「互いのことを深く理解し合った親しい関係」を表します。春秋時代の中国で活躍した政治家の管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)が非常に仲がよかったことから、この言葉が誕生したとされています。
「刎頸の交わり」も「犬猿の仲」の対義語といえる言葉です。「刎頸の交わり」は「ふんけいのまじわり」と読みます。
「刎頸の交わり」が指すのは「『相手のためなら首を切られても惜しくない』と思えるほどの親しい関係」です。春秋時代の中国の政治家・藺相如(りんしょうじょ)と将軍・廉頗(れんぱ)の関係から生まれた言葉ともいわれています。
まとめ
- 「犬猿の仲」とは「極めて仲が悪いこと」を表すことわざ
- 「犬猿の仲」の由来にはさまざまな説がある
- 「犬猿の仲」の類義語は「水と油」、対義語は「管鮑の交わり」
「犬猿の仲」という言葉は、干支を決めるレースの一場面を由来とする説や、仲の良い戦国武将同士の印象を起源とする説など、その成り立ちにはさまざまな説があります。言葉が生まれた背景を知れば、その言葉の奥深さを知ることができるはずです。ことわざに関する知識を身に付けて、ボキャブラリーを豊かにしていきましょう。
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Domani編集部
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