「水魚の交わり」の意味
「水魚の交わり」の意味は、水のないところでは魚が生きていけないように、切っても切り離せない親密な関係を表しています。読み方は「すいぎょのまじわり」です。
水と魚の関係にたとえることによって、他の誰かには引き裂けないほど、強固な関係であることがイメージしやすくなっています。
【水魚の交わり】
《「蜀志」諸葛亮伝から。劉備が諸葛孔明と自分との間柄をたとえた言葉》
水と魚との切り離せない関係のような、非常に親密な交友。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
もともとは主従関係を表す言葉でしたが、現在では親しい関係を表す言葉として広く使われています。
■「水魚之交」と表されることもある
「水魚の交わり」はすべて漢字による表記で「水魚之交」と表されることもあります。その場合の読み方は「すいぎょのまじわり」と「すいぎょのこう」の2つです。表記の仕方が変わっても、意味は変わりません。
「水魚の交わり」の語源は『三国志』
「水魚の交わり」の語源となっているのは、中国の後漢末期から三国時代にかけて記述されている歴史書『三国志』の「蜀志・諸葛亮伝」のエピソードです。
のちに娯楽小説として書かれた『三国志演義』の中でも、この「水魚の交わり」について紹介されており、この言葉が広まりました。戦乱が続く過酷な時代であり、信頼関係を重要視していたからこそ、こうした故事成語が生まれたのでしょう。
■劉備と諸葛孔明の関係を表す言葉だった
「水魚の交わり」という言葉は、もともとは三国時代の武将である劉備と、彼の軍師である諸葛孔明の関係を表す言葉でした。
劉備が諸葛孔明を臣下として迎えて以降、2人の間であつい友情が育まれたとのことです。しかし、古くから劉備に仕えていた関羽や張飛などの武将は、2人のあまりの親密ぶりに不安を感じて異を唱えました。
その時に劉備が武将たちに諸葛孔明との関係について、「私にとっては、孔明がいることは、魚に水があるようなものだ」と説明したのです。そこまで言われたら、武将たちも納得するしかなかったとのエピソードが、「蜀志・諸葛亮伝」には記されています。
■「水魚の交わり」の漢文は「如魚得水」
「水魚の交わり」は漢文を用いた四字熟語として「如魚得水」と表現されることがあります。読み方は「うおのみずをえたるがごとし」です。
「如魚得水」と表記された場合には、親密な関係を表す以外にも、もうひとつの意味があります。「まるで水を得た魚のように、自分の才能を発揮するのにふさわしい環境を得て、目を見張るような活躍をする」という意味です。
2つの意味があることに注意してください。
「水魚の交わり」の例文
「水魚の交わり」の語源は、劉備と諸葛孔明という主従関係を表す言葉でした。しかし、その後、さまざまな関係で用いられるようになり、ビジネスでもプライベートでも使われています。
【例文】
・同じ幼稚園・小学校にかよっていたAくんとは、かれこれ30年以上も水魚の交わりが続いています。
・彼とは異なる野球チームに所属するライバルでしたが、同じ日本代表として戦って以来、水魚の交わりといえる関係になりました。
■「水魚の交わり」は夫婦間でも使える?
「水魚の交わり」は夫婦間でも使える言葉です。互いに支え合っているパートナーとの関係を表すのにふさわしい言葉といえるでしょう。
【例文】
・弟夫婦はどんなに苦しいときも助け合って暮らしており、水魚の交わりという言葉がぴったりなカップルです。
・職場の同僚同士で結婚したAさん夫妻は「水魚の交わりが目標」と語っていたのですが、先日離婚しました。
「水魚の交わり」の類語4つ
「水魚の交わり」にはさまざまな類語が存在します。おもな類語は以下の4つです。
「管鮑の交わり」
「刎頸の交わり」
「金蘭之契」
「莫逆の友」
それぞれの言葉の意味や例文をご紹介します。
1.「管鮑の交わり」
「管鮑の交わり」は親密な関係、仲の良い関係を表す故事成語で、読み方は「かんぽうのまじわり」です。語源は『史記』の「管仲伝」で、中国の春秋時代の「管仲(かんちゅう)」と「鮑叔牙(ほうしゅくが)」という2人の友情を表すエピソードからきています。
【例文】
・当社の社長と専務は互いに新入社員だったころから管鮑の交わりをしており、助け合ってきた間柄です。
2.「刎頸の交わり」
「刎頸の交わり」とは、どんなにつらい目にあったとしても、揺るがないほどの固い友情を表す言葉です。読み方は「ふんけいのまじわり」で、「刎頸」には「首をはねる」という意味があります。
語源になっているのは『史記』で、中国の春秋時代の廉頗(れんぱ)将軍が、当初は敵視していた藺相如(りんしょうじょ)と深い関係を持つようになった際に、この表現が使われました。
【例文】
・取引先の会社の社長とは刎頸の交わりのつきあいです。我が社が苦しいときにはいつも助けてくれるため、感謝の気持ちは一生忘れません。