馬が合わないの意味や由来
なにかと意見が対立したり、こちらの想定とは違う反応が返ってきたりすると人間関係がぎくしゃくしがちです。「どうしても、あの人とは馬が合わない」。どうしても良好な関係性が築けないと思わず愚痴がでてきてしまうことありませんか? こうしたシチュエーションで用いられる、「馬が合わない」という言葉は具体的にどのようなことを指すのでしょうか。意味や由来を解説します。
馬が合わないとは
馬が合わないという表現は、「特定の相手と価値観や考え方が合わない」という意味。あることに対しての、互いの考え方やスタンスに大きな違いや隔たりがあることを指します。馬が合わない人に対しては、自分が努力しても相手の性格や考え方に合わせられる自信がなくなり、良好な関係を続けることが困難になりがちです。
上述のように「彼女とは馬が合わない。一緒に仕事がしづらい」「馬が合わない上司とは話が続かない」などのように使われますね。
馬うまが合あ・う
気がよく合う。意気投合する
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
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乗馬が語源
馬が合わないという言葉は、乗馬が語源と言われています。乗馬では騎手と馬の相性が重要ですが、相性が悪ければ馬の走りは悪くなり、最悪、騎手が馬から振り落とされてしまいます。騎手の立場にしてみれば、馬との呼吸が合わない理由は「この馬は自分とは合わない」ということになるでしょう。自分にはどうすることもできないという意味合いも含んでいます。
このような、人間と馬の関係を意味する言葉が人間関係にも使われるようになり、自分には合わない相手との関係を「馬が合わない」と表現するようになりました。逆に、相性が良い馬とめぐり合えれば、「馬が合う」という関係になります。馬が合うという言葉も、気が合う相手との関係を表現する言葉として一般化しています。
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「反りが合わない」との違い
馬が合わないと同じような意味で使われる言葉に、「反りが合わない」があります。馬が合わないと同様に、気が合わない相手との関係を意味する言葉です。反りは、日本刀の形状を指します。刀身の反りと鞘(さや)の反りが完全に一致しなければ、刀身をしっかりと鞘に収められないことから、互いの性格が合わないことを「反りが合わない」と表現するようになったとされます。
馬が合わないは人間と馬の「相性」が合わないことを指すのに対し、反りが合わないは刀身と鞘の「形状」が合わない状態を意味します。従って、この二つを人間関係において厳密に比較すると、馬は相性、反りは性格に言い換えることも可能です。
そり【反り】
4 (刀身と鞘さやとの関係から、「そりが合う」「そりを合わせる」などの形で用いる)人の性向や、世の風潮。また、それとの相性。「上役と反りが合わない」
「世間の―に合わぬことも多い」〈福沢・福翁自伝〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「反りが合わない」以外の類語
「馬が合わない」の言い換え表現には、以下のものがあります。
気が合わない
き【気】 の解説
生命・意識・心などの状態や働き。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「気が合わない」は、「馬が合わない」よりも、よく使われている表現です。「気」は、「心などの状態や働き」を表し、相手と考え方が異なっていて付き合っていくのが難しいと感じる時に「気が合わない」と表現します。
相容れない
あい‐いれ◦ない〔あひ‐〕【相▽容れない】 の解説
[連語]互いの主張や立場が相反していて両立しない。「—◦ない関係」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「相容れない」は、自分と相手の主張や立場が相反していて両立することができない人に遭遇した時に使える言葉です。「彼女とは相容れることはできない」というように使うことができます。また、人だけではなく状況に対して「相容れない状況だ」と言うこともできます。
折り合いが悪い
おり‐あい〔をりあひ〕【折(り)合い】 の解説
2 人と人との関係。仲。「お姑 (しゅうと) さんとの—が悪い」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「折り合い」には「譲り合って解決すること」という意味もありますが、「人と人との関係」も指す言葉です。「折り合いが悪い」と言えば、相手との関係が上手くいっていないことを表すことができます。
肌が合わない
はだ【肌/▽膚】 の解説
気質。気性。「研究者—」「—が合わない友達」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「肌」は皮膚のほかに「気質」や「気性」も表す言葉です。「肌が合わない」と言う場合には、気質や気性が合わず居心地が悪い状態を表すことができます。
相性が悪い
あい‐しょう〔あひシヤウ〕【相性/合(い)性】 の解説
互いの性格・調子などの合い方。「上司と—が悪い」「—のいい対戦相手」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「相性が悪い」は相手との性格や考え方、調子などが上手く合わない時によく使われる表現です。決まったポイントはないけれど上手く歯車が噛み合わず落ち着かない状態にも使える表現です。
波長が合わない
は‐ちょう〔‐チヤウ〕【波長】 の解説
互いの気持ちや意思などの通じぐあい。「彼とは—が合わない」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「波長」は電磁波や音波などの波動を表す言葉ですが、人と人との気持ちや意思などの通じぐあいを表す時にも使われます。「波長が合わない」と言うときには、相手と何となく気持ちが通じ合わないと感じている状態を指します。
噛み合わない
かみ‐あ・う〔‐あふ〕【×噛み合う】 の解説
[動ワ五(ハ四)]
1 歯車などで、双方の凹凸の部分がぴったりと組み合わさる。「ファスナーがうまく—・わない」
2 それぞれ違う内容をもつものどうしがしっくりと合って、うまく事が進む。「話がなかなか—・わない」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「噛み合わない」は歯車の凹凸になぞらえて、性格などが合わずしっくりこないさまを表しています。「会話が噛み合わない」と言えば、会話の論点などがズレていて、会話や議論がうまくいかないことを表現できます。
相反する
あい‐はん・する〔あひ‐〕【相反する】 の解説
[動サ変][文]あひはん・す[サ変]互いに反対の関係にある。一致しない。対立している。「—・する対応」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「相反する」は相手と反対の関係にあることを指します。馬が合わないよりも明らかに相手と対立している時に使うと良いでしょう。
話が合わない
はなし【話】 の解説
言葉を交わすこと。会話。談話。また、声を出して言うこと。「—が尽きない」「こそこそ—」
「話が合わない」もよく使われる表現です。相手と仲良くしたいと思っていても、度々話が合わないと感じると「どうも馬が合わないな」と感じるのではないでしょうか。
なぜ合わないのか
馬が合わない原因は、論理的な説明がしにくいものです。性格の不一致や価値観の違いなどのように、一言で簡単に表せるものではないと言えます。心理学の世界では、馬が合わない原因について研究がなされています。馬が合わないと感じる心理を、学問の観点から理解してみましょう。
第一印象が影響
馬が合わないと感じる大きな理由の一つに、相手から受ける第一印象の影響が挙げられます。多くの場合、実際に話をしたりする前から、自分には合わないと決めつけているのです。大半の人は、相手の話し方・話の内容・表情・態度などを、第一印象でほぼ無意識のうちに確認し、自分との相性を判断する傾向があります。
第一印象だけで馬が合わないと決めつけている場合は、性格や価値観が合わないかどうかは分かりません。過去に接してきた人たちと比較し、経験上の先入観により、「この人とも馬が合わない」と判断していることになります。
習慣言動が影響
実際にある程度接している人との関係において、馬が合わないと感じている場合、相手の習慣言動が影響していると言われています。習慣言動とは、生まれてから早い段階で身に付ける、その人特有の言動です。例えば、断言するような話し方をする人は、無意識のうちにあらゆる場面で断言口調になります。声が大きく命令口調になりがちな断言傾向の人に対し、相性の悪さを感じた場合、その人は馬が合わない相手になります。相手の言動が習慣化されているため、自分が慣れるしかないと感じるからです。
また、習慣言動は、性格とは関係のない要素だとされています。つまり、習慣言動による判断も、第一印象で相手を判断するのと同じだと言えます。
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