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2019.04.13

たった5分で、人の命の期限って決められますか?【うちのダディは脳梗塞2】

もし、人の命の期限を決めるよう迫られたら、どうしますか? 10代をカリスマモデルとして駆け抜け、20代でデザイナーに転身した佐藤えつこさん。順調にキャリアを重ねていた35歳のとき、父親が脳梗塞で倒れ、華やかだった人生が一変しました。アラフォーにして介護歴は4年。その道のりはけして楽なものではありませんでした。けして他人事ではない「究極の選択」の経験を語ります。

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延命する?しない?

前回の記事▶︎35歳、人生は一夜にして変わることを知った

人の命の期限を決める。想像もしていなかった究極の選択は、突然やってきました。ダディが倒れてから3日後、担当の医師にICU(集中治療室)に呼ばれまして。

「このままいくと、今日一日もちません。延命手術をするか、しないか。今ここで決めてください。リスクを説明しますので」

脳梗塞で倒れた当日、ダディが受けたのはその時点で最も有効とされる血栓溶解療法でした。3人にひとりが自分で生活できるようになるというそこそこ確率の高い薬を投与してもらい、ひとまず大丈夫だろうと言われていたけれど、残念ながらダディには効果がありませんでした。

「血栓を溶かす薬で血流がよくなっていますがこれが効かなかったことで、脳がフシュを起こし、すごいスピードでエシしています。フシュを抑える薬を投与してはいましたが、これ以上進むとノウカンをふさぎ、呼吸ができなくなり、命が危ない。最終手段として頭蓋骨を開き、脳のフシュを一時的に外に出して他の部分へのエシを阻止する手術をする方法があります。メリットは、命が助かってこれ以上の脳のエシを防げます。デメリットは、もう高齢なので、一生植物人間のように呼吸器をつけて意識のない寝たきりになる可能性や、カンセンショウの危険がある。脳みそが出たまんま戻らないこともあるし、佐藤さんは持病があっていろんな薬も飲んでいるから、ガッペイショウを起こすこともあります。ただ、手術をしなければ家に帰れることはないでしょう。脳を頭蓋骨の中に戻して何も起きなければ、少し重めの脳梗塞で終わるかもしれない。後遺症もそこまで悪化しないで済むかもしれません」

担当医師に浴びた、呪文のような言葉たち。……フシュ? エシ? ノウカン? ていうか、人間って脳みそ出たまんま生きていけるの?? ただでさえ混乱している頭に、魔道士(先生)からトドメの一撃が。

「〝今のレベル〟で、ご家族はどっちをとりますか?」

つまりは、脳が浮腫=ひどいむくみを起こして圧迫され、細胞やら組織やらがどんどん死んでいるということ。このままだと生命維持に重要な脳幹もやられてしまうということ。

そして行く先は、死。

私がモーローとしている間に、母と兄はもう「延命しない」と決めていました。「お父さんは病院ぎらい。自分で食事できない体になってまで延命処置で生きることは望んでいなかった。本人の意思を尊重したい」と。

「イヤイヤ、少しでも助かる可能性があるなら延命するでしょ⁉」

何が何でもダディに生きていてほしかった私は食い下がったけれど、「持ち帰って家族で検討します」なんて猶予は一刻もなく。

家族といえど、何が幸せかの基準は違うんだ。迷っている間にもダディの脳は確実に死んでいく。結局、私が決められることじゃないから……と延命しない選択を受け入れました。

たった5分の、生命の決断でした。

イラスト/佐藤えつこ 構成/佐藤久美子

佐藤えつこ

佐藤えつこ

1978年生まれ。14歳で、小学館『プチセブン』専属モデルに。「えっこ」のニックネームで多くのティーン読者から熱く支持される。20歳で『プチセブン』卒業後、『CanCam』モデルの傍らデザイン学校に通い、27歳でアクセサリー&小物ブランド「Clasky」を立ち上げ。現在もデザイナーとして活躍中。Twitterアカウントは@Kaigo_Diary

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