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2020.01.18

寝たフリ、仮病、脱走…リハビリをサボるため、あの手この手で悪知恵を絞る【うちのダディは脳梗塞21】

カリスマモデルとして活躍した10代を経て、20代でデザイナーに転身した佐藤えつこさん。順調にキャリアを築き、「まだまだこれから!」という35歳のとき、父親が脳梗塞で倒れました。後遺症である高次脳機能障害には欠かせないリハビリ。言語、動作など根気強い訓練が必要ですが、父親本人は気が進まなかったようで隙あらばサボろうとするのだとか――。親のまだ見ぬ一面を知る、そんな介護の側面を語ります。

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ズルをしたら、甘やかすべからず

倒れる前は常にテキパキしていたダディですが、脳梗塞後はいろいろなことが面倒になっている印象があります。

特にキライなのが、リハビリ。なんとか回避しようと、時にはズルい一面を見せることも。入院中からその兆しはあって、平日毎日行われるリハビリの時間になるとちゃっかり寝たフリをしていました。

在宅介護になってからも、言語療法士(ST)さんが、いろいろと工夫してリハビリしようとしてくれているのにまるで話を聞いていなかったり。家から脱走を試みたものの、車いすで玄関のドアを開けることもできずにしょんぼりしていたこともありました。プライドが高いので、「あいうえお」や「おやすみなさい」など、幼稚園児のような練習をさせられて、できない自分に直面するのがイヤなのかも、、、。

長くお世話になっている理学療法士(PT)さんにいたっては、もう慣れっこ。リハビリとなると具合の悪そうなフリをするダディを甘やかすことなく、「佐藤さん、そんなズルしないの!」と見抜きます。

「元気なの知ってますよー」
「さっきまで笑ってたじゃないですか」
「急にそんな疲れた演技しないの!」
などとツッコまれるダディ。他の方だとけっこうだまされてしまうのですが、お見事です。

「ハイ、大丈夫ですね。始めますよー」と促されながら、ダディは渋々動き出します(笑)。

5年がたち、今は週に2回、理学療法士さんが自宅に来てくれるスタイル。どんなにキライでも、リハビリをしていないと関節や筋肉がどんどん固まってきてしまいます。さらに筋力がまったくなくなってしまうと、トイレに行ってオムツを下ろす間もひとりで立っていられません。なんとか維持できているのも、プロのリハビリのおかげだなと。

そして、とにかく体をたくさん動かすことが脳へのいちばんの刺激なのだとか。病院の先生には、「体という土台ができてくると、言語機能も回復しやすくなる」と言われています。

基本は悪知恵を絞ってサボりがちなダディですが、ちょっとかわいい一面も。

お茶が大好きで、放っておくとトイレが追いつかないほど飲んでしまうため、私や家族がいるときは「ダメだよ」と止められています。先日、短期入院していたときのこと。ふだんは付き添いの私が帰るのをイヤがるのに、珍しくあっさり眠ったことがありました。直前までソワソワしていたのでおかしいなと思い、帰るていで部屋を出て陰からこっそりのぞいていたら、やっぱり寝たフリ! 私の姿が見えなくなると、すぐにテーブルに手を伸ばしてお茶を取ろうとしてたんです。「ちょっと、お父さんっ」と声をかけると、サッと手を引っ込めてまた寝たフリ(笑)。

お茶を飲みたいがために、早く帰らせようとヘタな芝居をする。そんな子供のような姿をほほえましく思ったのでした。

イラスト/佐藤えつこ 構成/佐藤久美子

▶︎過去のうちのダディは脳梗塞はこちらから

佐藤えつこ
佐藤えつこ

1978年生まれ。14歳で、小学館『プチセブン』専属モデルに。「えっこ」のニックネームで多くのティーン読者から熱く支持される。『プチセブン』卒業後、『CanCam』モデルの傍らデザイン学校に通い、27歳でアクセサリー&小物ブランド「Clasky」を立ち上げ。現在もデザイナーとして活躍中。Twitterアカウントは@Kaigo_Diary

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