災厄を断ち切る
また、大晦日にそばを食べることは、その年の「悪縁」「苦労」といったさまざまな災厄を断ち切る意味がありました。
というのも、そばはうどんなどと比較すると切れやすい食べ物です。そのため、人々はこれを「旧年の災厄と縁が切れる」という験かつぎと捉え、1年最後の日に好んで食しました。
そもそも、江戸時代に一般的だったのはつなぎのない「十割そば」だったそうです。現在のごく一般的なそばよりも切れやすく、「災厄を断ち切る」という意味合いによりマッチしていたと考えられます。
金運向上
江戸時代の金細工職人は加工中に飛び散った金を集めるとき、そば粉で作った団子を使っていたそうです。このことから、「そば=金を集める」縁起物とされたようです。
「金運を上げたい」という願いは、今も昔も変わりません。人々は大晦日になると験かつぎに「金を集める」そばを食べ、翌年の金運向上を願ったというわけです。
【目次】
食べるタイミングに決まりはある?
さまざまな由来のある年越しそばですが、気になるのは「食べるタイミング」です。大晦日に食べると分かっていても、具体的にはいつ食べるのが望ましいとされているのでしょうか?
年越しそばを食べるタイミングについて見ていきましょう。
大晦日であればいつでもOK
実際のところ、年越しそばは「○時に食べる」「午前中はダメ」などのしきたりはありません。基本的には、12月31日中であればいつ食べてもOKです。そばを食べるタイミングによって「縁起がよい」「縁起が悪い」などもありません。家族の都合のよい時間に食べましょう。一般的には、新年の準備が一段落して落ち着ける「夕食時」に、家族そろってそばを食べる家庭が多いようです。
年をまたぐ前に食べ終わろう
年越しそばはいつ食べてもよいとはいえ、年内に食べ終わるのがベターです。例えば、夜、大晦日のテレビ番組を見ながら食べるという習慣の家庭は、深夜0時を回る前に食べ終わるようにしましょう。
というのも、前述したとおり、年越しそばには「1年の災厄を断ち切る」という意味もあります。この験かつぎをするつもりなら、年が明ける前にそばを食べてしまわないと意味がないからです。
年越しそばは、新年を迎えるための習わしの1つです。旧年中に食べ終わり、気持ちよく新年を迎えましょう。
季節の行事を親子でいっしょに学べる絵本形式の実用書です。ものごとの由来やしきたり、遊び方、箸の持ち方、衣服のたたみ方など、行事を子育てに役立てるコツを豊富なイラストで楽しく紹介。文化と愛情を伝える「行事育」が手軽に実践できます。
和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。
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