【目次】
・立春とは
・旧正月や春分とは違うの?
・節分は立春の前日に行う行事
・立春大吉のお札とは?
・立春の縁起の良い食べ物
・春の訪れを感じる、立春の時期に咲く花
立春とは
日本には古くから季節を表現するたくさんの言葉があり、立春も季節を表す言葉の1つです。なんとなく春に関係する言葉ということは分かっても、具体的にどんな日なのかまでは説明できないという人も多いのではないでしょうか。
立春とはどのような日なのか、解説します。
二十四節気の1番目、暦の上では春の始まり
立春は季節の指標である「二十四節気」のひとつで、24ある節気の1番目です。季節は太陽の動きに影響されるので、季節の目安として一太陽年を24等分したものが二十四節気です。
旧暦は、月と太陽の動き取り入れた「太陰太陽暦」なので、年ごとに季節と月日にズレがあります。そこで季節を知るために、中国で考案された二十四節気が取り入れられました。
季節には春夏秋冬の4つがありますが、それぞれの季節の始まりが立春・立夏・立秋・立冬で、立春は春の始まりを意味しています。実際にはまだまだ寒い時期ですが、春が立ち上がりこれから近づいてくるということです。
また、旧暦では立春のころに1月1日が巡ってきました。春の始まりは新しい年の始まりであったため、立春を新しい年の始まりと捉えるようにもなりました。それが、お正月の「迎春」「新春」などのことばに表れています。
旧正月や春分とは違うの?
立春と合わせて覚えておきたいものが、旧正月や春分との違いです。時期や語感が似ているので、混乱してしまうことがあるかもしれません。
3つの違いを知れば、意味を混同することはなくなるはずです。旧正月と春分の日の意味を紹介します。
旧正月との違い
立春は前述のとおり「春の始まり」や「新しい年の始まり」を表します。一方、旧正月は「旧暦の正月」「旧暦の1月1日」を表します。
どちらも1年の始まりを意味するので混同しがちですが、二十四節気と旧暦は成り立ちが違うため、日付も違います。ただし、約30年に1度、立春と旧正月が重なる年があり、「朔旦立春(さくたんりっしゅん)」や「立春正月」と呼ばれています。
暦はもともと、中国から朝鮮半島を経由して日本に伝わったものなので、現代でも中国やアジアの一部地域では旧正月を祝う風習があります。
春分との違い
二十四節気では、春夏秋冬がそれぞれ6つの節気で構成されています。
春は、立春・雨水(うすい)・啓蟄(けいちつ)・春分・清明(せいめい)・穀雨(こくう)の順で進んでいきます。立春は1番目、春分は4番目で、春分は春の中間です。2月上旬の立春に比べると、3月下旬の春分はぐっと暖かくなります。
また、春分の日は国民の祝日です。春分の日を迎える頃は、昼の長さと夜の長さがほとんど同じになります。暖かい日が増え、多くの植物が芽吹き始める時期なので、春分の日は「自然の素晴らしさを讃え、生物を慈しむ日」となっています。
なお、二十四節気の日付は、国立天文台が地球の運行や太陽の動きを観測して導き出した結果に基づいて決定し、前年に発表されます。
節分は立春の前日に行う行事
立春とセットで語られることが多いのが節分です。日本で古くから行われている行事ですが、定番の行事だからこそその由来までは知らない人も多いかもしれません。
節分の意味や、立春との関係を紹介します。
年4回ある節分
節分という言葉には、「季節を分ける」という意味があり、二十四節気以外の季節の移り変わりの目安となる「雑節(ざっせつ)」の1つです。「彼岸」や「入梅」も雑節の一種となります。
本来、節分は立春・立夏・立秋・立冬の前日なので年に4回ありますが、立春前日の節分は年の分かれ目に等しい意味があるため、年越しの行事をするようになり、節分といえば最も重要な立春前日の節分を指すようになりました。
豆まきは邪気を払う儀式
節分の豆まきは、新春を迎える前に邪気を払い、健やかに暮らすことを祈願する儀式です。病気や災害などをひき起こす邪気を鬼に見立て、「鬼は外、福は内」と唱えて豆をぶつけることで、悪いことが起こらないように願います。
古来、日本では、米・麦・豆・ひえ・あわなどの穀類に霊力が宿ると信じられてきました。昔は病気になっても原因が分からず治療法もありません。また、災害は人の力ではどうにもなりません。そこでこれらは邪気のしわざであると考え、その象徴である鬼を払う行事をするようになりました。現代の神事でも、災厄を払う儀式として米や豆を用いることがあります。
また、「豆(まめ)」は「魔滅(まめ)=魔を滅する」に通じることから豆を投げるようになったなどの説もあります。
節分の食べ物
節分で食べるものといえば豆。「魔の目を射る」に通じる炒った大豆を、年の数だけ食べて無病息災を願います。
しかし、節分ならではの食べ物は豆だけではありません。例えば、関西発祥の恵方巻は、七福神にちなんで7つの具を巻いた巻き寿司を、縁が切れないよう切らずに1本丸かぶりします。
また、春から新しい年が始まるという考えのもと、年越しそばと同じように「節分そば」を食べる地域もあります。
立春大吉のお札とは?
禅寺では、立春の朝が来ると門に「立春大吉」のお札を貼る風習があり、一般家庭でもこの風習にあやかってお札を貼ることがあります。
お札に込められた意味や、貼り方を見ていきましょう。
厄除けの意味がある
立春大吉という文字は左右対称なので、和紙に墨で書いて裏側から見たときも、立春大吉と読めます。そのため、玄関から入ってきた鬼が裏側からお札を見て、まだ中に入っていないと勘違いして逆戻りするということから、厄除けに効果的だとされました。1年間、無事で良い運に恵まれるようにと願いを込めて貼ります。
立春大吉のお札は、禅寺でもらう以外に、自分で書く方法もあります。自分で書くときも、無事で過ごせるようにと願いを込めて丁寧に書くと良いとされます。白い紙に墨で書き、書き終えたら、息を3回吹きかけて完成です。
お札の貼り方
お札を貼る場所は、門(玄関)の右側(外側から見て右側)や、入ってすぐの柱などです。玄関以外の場所だと、鬼門の方角や子ども部屋に貼ると良いとされます。お札を神棚に供える家もあり、地域やそれぞれの家の考え方によって違いますが、神様に対して失礼がないようにという意味から、目線よりも高い位置に貼ることがポイントです。
また、曹洞宗の檀家では、立春大吉のお札と一緒に「鎮防火燭(ちんぼうかしょく)」のお札をもらうことがあります。火を鎮め、防火の水を呼ぶ力があるとされるお札です。
2つとも貼る場合、立春大吉のお札を門(玄関)の右側、鎮防火燭を左側に貼ることが一般的となっています。1年間、無事に過ごせるようにという願いが込められているので、翌年の立春の日に新しいお札と取り替えるまで貼っておきましょう。
立春の縁起の良い食べ物
何か新しいことを始めるときや人生の節目のときなどに、食べ物の縁起を気にすることがありますが、立春を祝うためにはどのような食べ物がふさわしいとされているのでしょうか。
立春の日にいただくと縁起が良いとされるものを紹介します。
立春朝搾り
立春の朝に搾ったお酒を、「立春朝搾り」と呼びます。節分の夜からお酒の原料であるもろみを搾り続け、当日の朝に澄んだお酒として完成させるというもので、立春の日のために作られる特別なお酒です。蔵元の地元と近郊地域でしか購入できない銘柄ばかりなので、日本酒が好きな人はぜひ試してみてはいかがでしょうか。
立春大吉豆腐
節分に豆を投げて邪気を払うのと同様に、大豆から作られる白い豆腐には邪気を払う力が宿るといわれています。節分に食べる豆腐はそれまでの罪や穢れを払い、立春に食べる豆腐は幸福を呼び込むとされ、節分と立春に食べる豆腐のことを「立春大吉豆腐」と呼んでいます。
立春朝生菓子や立春大福
立春の朝に作ってその日のうちに食べる和菓子を「立春生菓子」と呼びます。中でも立春の日に食べる大福や豆大福を「立春大福」といい、「福」の文字が入っていることから縁起が良いとされています。
また、小豆の餡や餅にも邪気を払う力があるとされ、昔からさまざまな行事で食べられてきました。立春の日に和菓子店へ行くと、立春を祝うさまざまな和菓子が並んでいるはず。春らしさを感じさせる「うぐいす餅」「椿餅」「桜餅」などの和菓子を食べてもよいでしょう。
手作り派の人は、自宅で簡単に作れるぜんざいや白玉あずきなどの小豆を使ったお菓子はいかがでしょうか。
立春に汲む若水
元旦の朝の行事として、家長が湧き水や井戸水を汲みに行く「若水取り」があります。その年最初の水(若水)を汲んで神様に供え、お茶や雑煮などに用いると1年間無事に過ごせるといわれています。もともとは立春の日の行事なので、立春の朝にぜひどうぞ。
現代では湧き水や井戸水を汲みに行く機会はなかなかありません。水道でもペットボトルの水でも構わないので、心を込めて水を用意してみてはいかがでしょうか。
春の訪れを感じる、立春の時期に咲く花
立春の時期、本格的な春に先駆けて咲く花は意外に多くあります。
立春を祝うために飾りたい、春の訪れを感じさせる花を紹介します。
福寿草
縁起が良い名前で、お正月の花としても人気がある植物です。古くから、福を招くおめでたい意味がある花として知られてきました。早春の花が少ない時期に咲き、南天や松などと一緒にお正月飾りとして寄せ植えにされていることもあります。
また、「朔日草(ついたちそう)」や「元日草」などの別名でも呼ばれ、日本では江戸時代頃から親しまれてきました。
お椀のような形に花が開き、色は明るい黄色をしたものが多いですが、白やオレンジ色もあります。日本に自生しているのは4種類ほどで、自生する場所は落葉樹の下などです。
福寿草は、早ければ12~1月頃からポット苗や鉢植えが出回ります。丈夫に育てるには、しっかりとした芽がついている、大きめの株を選びましょう。
梅
白梅や紅梅などのさまざまな品種があり、香りも楽しめる花木です。古くから春の訪れを告げる花として愛されてきました。
開花時期は品種によって異なり、早咲きの品種は1月頃から咲くものもありますが、多くは2~3月頃に花を咲かせます。また、八重咲の花を咲かせる種類もあり、色も白・薄紅・真紅とさまざま。梅の切り花は1~3月頃に出回ることが多いです。
花を楽しむものと実を楽しむものに分かれていますが、どちらも楽しめるように改良された品種もよく見られます。庭木として植えるなら、花・香り・実と三拍子そろった品種を植えることをおすすめします。
雛菊
丸みのある可愛らしい花を咲かせるキク科の植物で、「デイジー」とも呼ばれます。原産地はヨーロッパや地中海沿岸部などです。日本に入ってきたとき、小さく可憐な姿をしていたことから「雛菊」と名付けられました。開花期間が長いので「延命菊」と呼ばれることがあります。
白・ピンク・黄色・オレンジ・赤・青・紫など花色が豊富で複色のものもあり、好みのものがきっと見つかるはずです。
雛菊は2~5月上旬頃までと開花時期が長く、時期をずらして種まきすれば長い期間花を楽しめます。

年中行事、ならわし、旬の食べ物、まつり…1年を通じて楽しいことがいっぱい! 二十四節気も暮らしに潤いをもたらします。季節とともに暮らすノウハウやちょっとしたアイデアが満載です。

和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。
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