【目次】
・「のし」とは?
・お歳暮にふさわしいのし紙
・のし紙の名前の書き方
・のし紙についてよくある疑問
「のし」とは?
贈答品を準備するとき、贈る品に「のし紙」を掛けるかどうか悩んだ経験はありませんか?そもそも「のし」とは何を指すのでしょうか。
一般常識として知っておきたい、「のし」について解説します。
のし紙の右上にある飾りのこと
「のし」とは、のし紙の右上にある小さな「のし飾り」のことをいいます。慶事の贈答品に添えるもので、古くからある伝統的な飾りです。
古来、吉事には魚や鳥肉のような生ものが欠かせなかったため、海産物を贈る習わしがあり、神様には「鮑(あわび)」をお供えしていました。やがて日持ちがするよう鮑を薄く剥いて干し、熨(の)した「のし鮑」を奉納するようになり、贈り物にものし鮑を添えるようになりました。その後、高価なのし鮑の代わりに、のし鮑を包んだ「のし飾り」を贈答品の掛け紙に添えるようになり、その掛け紙を「のし紙」と呼ぶようになりました。
もともと吉事に用いていたので、お葬式や法事などの弔事の贈答品にのし飾りはつけません。
また、のし飾りそのものが生ものの代用なので、魚介類や肉などを贈る際は、意味が重複しないよう、のし飾りの無い水引きだけの掛け紙を用います。
お歳暮にふさわしいのし紙
のし紙にはさまざまなデザインが用意されていて、贈答するシーンによって使い分けます。
お歳暮の贈答品に掛けるには、どのようなのし紙が最適なのでしょうか?
紅白の蝶結び
のし紙で気をつけたいのが、水引きです。お歳暮の贈答品の場合には、紅白の蝶結びの水引きを選びます。白黒の水引きは弔事用なので、お歳暮には用いるのはタブーです。
蝶結びの水引は「ほどけても結び直せる=何度あってもよい」という意味があり、出産や開業祝いなどの慶事に使用されます。お歳暮をはじめとした贈答品は蝶結びです。なお、紅白の水引きでも「繰り返したくない」結婚や病気などのお見舞いには結び切りを用います。
また、水引の本数が多いほど格が高くなります。一般的に5本のものと7本のものがありますが、どちらを選んでも差支えはありません。
短冊タイプを使う場合も
近年は、小さな短冊タイプののし紙も出回るようになりました。贈答品の中央ではなく、右上に貼り付けます。
通常ののし紙と意味合いは変わりませんが、掛け紙に比べると略式なので、伝統を重んじる方には向かないかもしれません。中身が同じであっても、包み方1つで気持ちの伝わり方が違ってきます。贈る相手との関係性などを考えて選ぶとよいでしょう。
のし紙の名前の書き方
お歳暮ののし紙に名前を書くときは、どのように表記するのが適切なのでしょうか?個人の場合、複数人の場合、会社などで贈る場合で、それぞれに書き方が異なります。
いずれも名前を書く前に、「表書き」を水引上の中央部分に書き入れます。「御歳暮」または「お歳暮」と書きますが、年内にお届けできない場合には、、元旦から1月7日まで(松の内が15日までの地域は15日まで)に贈る場合は「御年賀」または「お年賀」、さらに遅くなる場合は「寒中御見舞」または「寒中御伺い」と書きます。
のし紙へ名入れする際の詳しい書き方について見ていきましょう。
個人で贈る場合
名前を書く場所は、水引を挟んだ表書きの真下です。贈り主の名前は、表書きよりも少し小さめに書きます。個人で贈る場合はフルネームで書くのが一般的ですが、贈る相手が目下の場合は名字のみでもよいといわれています。
複数人で贈る場合
親戚や友人へお歳暮を贈る際は、家族を代表し主人の名前を書くことが多いようです。夫婦共にお世話になっている方には、連名で名入れをしてもよいでしょう。水引きの真下に、夫の名前をフルネームで書き、左側に妻の名を書きます。
連名で書く場合、3名までが一般的です。水引下の中央部分に、目上の人からフルネームでそれぞれの名前を並べて書きます。
会社などで贈る場合
会社などでお歳暮を贈る場合は、個人で取り扱う贈答品ではないため、会社名と代表者の名前を書き入れます。水引下の中央部分に、会社名と代表者名を書きましょう。
のし紙についてよくある疑問
のし紙はシーンによって選ぶ種類が異なり、掛け方も変わります。
贈る相手へ失礼がないよう、のし紙にまつわる疑問について見ていきましょう。
喪中のときはどうする?
喪中は年賀状を控えるため、お歳暮を贈ってもよいか悩む人も多いでしょう。お歳暮は「お世話になった人への感謝」であるため、贈る側または受け取る側が喪中でも贈ることができます。
ただし、「四十九日」が過ぎていない場合には、時期をずらして「寒中御見舞」「寒中御伺い」にしたり、紅白の水引きを控えたりするとよいでしょう。
内のしと外のし、どちらがいい?
「内のし」とは、贈答品にのし紙を掛けてから包装をする方法です。一方「外のし」は、贈答品を包装してからのし紙を掛ける方法です。
昔は包装紙をつけず風呂敷で包んで持参していたので、贈答品の上にのしをつけていました。その後、のしが汚れないよう包装紙で包むようになり、「内のし」「外のし」の2種類となりました。
「内のし」「外のし」の使い分けに決まりはないので、状況に応じて判断します。「内のし」は贈り主が誰かすぐにはわかりませんが、「外のし」は誰が贈ったかが一目でわかります。お歳暮の場合、配送するのでのし紙が汚れないよう「内のし」にする、控えめに贈りたいから「内のし」にする、たくさんのお歳暮が届く家には贈り主が一目でわかるよう「外のし」にするなど臨機応変です。
また、関東では「外のし」、関西では「内のし」が多い傾向があります。地域性もあるので、お店の人などに聞いてみるとよいでしょう。
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和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。
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