「自分の気分が上がるものなら続けられる」
Freadaディレクター 小笠原希帆さんの場合
最近よく耳にする、地球環境や人、社会や地域に配慮をする“エシカル”という考え。小笠原さんが“エシカル”なアクションについて考えるきっかけとなったのは、“ファッション産業が自然環境に大きな負荷をかけている”という事実を知ったことがきっかけだったのだそう。
「事実を知れば知るほど悲しくなるような現実に悩んだりもしましたが、アパレル業界を辞めることは現実的ではないので、わたしが出来る範囲のサスティナブルはなにか? と考えを変えました。その結果、私が手がけているブランド“Freada(フリーダ)”では、新たに作る服の量を減らし、古着の取り扱いと古着のリメイクを増やしています。サスティナブル=手間で面倒のイメージが正直ありましたが、気分が上がるものなら無理せずに続けられるということに気づきました」
では早速、小笠原さんが実践している「エシカルなアクション」を紹介します。
その1:自分が長く着たいと思える服を選ぶことや、リメイクや古着も〝エシカル〟
「悲しい現実ですが、服飾産業は世界で最も環境負荷の高い公害を生み出している産業のひとつと言われています。洋服を新たに作るのではなく、すでにある洋服になにか加えて新しい価値を見出すのも、アパレルに関わる端くれとして、わたしにできる“エシカル”です。この写真のワンピースは、古着のインド綿のスカートを2枚解体してひとつのワンピースにしたもの。わたしが手がけるブランド“Freada”では、新品の洋服だけではなく、リメイク古着もよく作っています」(小笠原さん)
メゾンブランドはじめ、ZARA、H&Mなどのファストブランドもサスティナブルへと舵をきっています。今後はますます、社会や環境への取り組みをしている、サスティナビリティのあるブランドやアパレル企業が注目を集めていく時代になりそう。
その2:環境だけじゃない。お肌にも、お財布にも優しい〝湯たんぽ〟を愛用
「最近、寝る前にベッドに仕込んでいるのが、昔ながらの金属製〝湯たんぽ〟。それまでは、寝る直前まで暖房をつけていましたが、湯たんぽを使い始めてからは、寝る3時間前には暖房を切るようになりました。リモートワーク中も、寒い日は湯たんぽを抱いて仕事をしているので、暖房温度をそこまであげなくてすむようにもなり、経済的でもあります」(小笠原さん)
体をじんわりと優しく温めてくれる湯たんぽは、エアコンのように乾燥しないという利点もあるんだそう。
その3:エコバッグは、自分好みのものを選んで長く使う
「レジ袋有料化がきっかけとなり、エコバッグを持ち歩く癖がつきました。昔から布帛のトートバッグは、好きでたくさんもっていたのですが、意外と畳むとかさばる。そこで、丈夫で軽くかさばらないエコバッグを〝Freada〟でつくりました。自分好みのエコバッグなら、必然的に長く使うようにもなります」(小笠原さん)
自然環境のもとでは分解されにくいレジ袋は、野生動物が餌と間違えて食べてしまう被害が多発しているのだそう。コンパクトなエコバッグなら、普段のバッグに忍ばせておくことができますね。
その4:石鹸は、肌にも環境にも優しいものを選びます
「なるべく生活で使うものも環境負荷の少ないものを選びたいと思っています。この石鹸は、栃木県在住のアーティストによる無添加手作り石鹸のブランドRILY(リリー)のもの。添加物、合成界面活性剤、合成着色料を一切使っておらず、肌に優しく、環境負荷も少ないのだそう。古く昔から親しまれている石鹸の作り方、ゴールドプロセス製法で、低音かつ長い時間をかけて作られるために、熱に弱い原料の天然の保湿剤(グリセリンやスクワラン)などのスキンケア効果の高い美容成分も失うことなく保つことができるんだとか。この石鹸を使うことが、バスタイムの楽しみのひとつです」(小笠原さん)
“環境に優しい”ということは、必然的に“人間にも優しい”ということ。普段、何気なく使っているものが、誰が、どのように、どうやって作っているのか? と、店頭に並ぶまでの工程を知ることは“エシカル”への第一歩。
「サスティナブル=手間で面倒のイメージがあった」という語る小笠原さんですが、“自分の気分が上がるものから”というポジティブな意識でエシカルアクションを取り入れていました。ぜひ、皆さんも、気になったものから挑戦してみてください!
取材・文/Mio Nemoto
アパレルディレクター
小笠原希帆
1984 年生まれ。「FREAK’S STORE」渋谷店の店長やプレスを経て、2017年春にブランド「Freada」を立ち上げる。“わたしがいま本当に着たいもの”を作ることを大切にし、古着のリメイクや民族衣装のようなエスニックアイテムを展開している。