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LIFESTYLE 飲み物

2021.03.21

今、飲みたい1本は「調和」の名を持つ、多様性時代のワイン

 

世界的にいま、大事な価値といわれる「多様性」。誰もが多様に、そして共存して生きたい。そう願う私たちにふさわしい、「調和」という名を持つ伸びやかな味わいのワインを食卓に。

Text:
鳥海 美奈子
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あらゆる人が真に「自分らしく」あるために

いま、あらゆる分野で、世界的潮流となっているのが「多様性」。それは男女の社会的平等はもちろん、人種や肌の色、出自などにとらわれず、あらゆる人が真に「自分らしく」そこに佇んでいられる社会のこと。

それはたとえば同じ女性でも、ステレオタイプの美ばかりを追い求めるのではなく、背が高かったり低かったり、スキニーだったりぽっちゃりしていたり、ベリーショートも艶やかなロングの髪の人もいたりと、さまざまな美が混在していい、ということ。なぜなら、そういった個の集合体こそが、伸びやかでしなやか、靭(つよ)く弾力ある社会的精神の源となるから。

多様なぶどう品種をブレンドして調和させるワイン

ワインの世界でも、多様なぶどう品種をブレンドすることで、調和した味わいを目指すものが存在します。そのひとつがフランス・アルザス地方の「エデルツヴィッカー」という白ワイン。

アルザスは、リースリングやピノ・グリといった単一のぶどう品種のみでワインを造るのが主流ではあるけれど、エデルツヴィッカーは、複数の品種をブレンドしていいと、ワイン法でそう定められています。


▲ アルザス南部の中心地コルマール。マルク・テンペの本拠地ツェレンベルグはここから約7km離れている。

アルザスでワイン法が制定されたのは1962年以降のことですが、それ以前の20世紀半ばまでは、ぶどう畑にさまざまな品種を一緒に植える「混植」が、むしろ主流でした。カジュアルラインのエデルツヴィッカーは、そんなアルザスの意識をいまなお残し、人々が気軽に、日常的に飲むワインとして、親しまれているのです。

ぶどうは農作物。毎年ワインの味が違って当然

マルク・テンペの「アリアンス」も、そんな1本。


▲ 2017年の「アリアンス」は生産量が少ないので、早めに購入するのがお薦め。

この2017年にはシルヴァネール、シャスラ、ピノ・ブランというぶどう品種がブレンドされています。生産者のマルクは、アルザスのなかでも最も早く、ビオディナミというヨーロッパ有機農法をはじめたひとり。その味わいは金柑や夏ミカンなどの熟した柑橘系果物を連想させて、伸びやかなミネラルと旨みが口中に広がり、やはり柑橘の皮を食べたときのような苦みが、後味を引き締めます。バランスよく、もうするすると飲み進められてしまうのです。

とても面白いのは、ヴィンテージにより使われているぶどう品種が、違うということ。たとえば同じ「アリアンス」の2016年には、オーセロワやシルヴァネール、ゲヴュルツトラミネールなど7種ものぶどう品種がブレンドされていました。

ぶどうというのは、まぎれもなく農作物ですから、天候などによって収穫量や味わいが異なるのは至極、当然のこと。だから「毎年同じ味にしよう」と、無理やりその規格におさめるのではなく、年ごとに柔軟に変えていく。むしろ「それでいい」という考え方なのです。


▲ アルザスらしいフードル(大樽)を使い、24 ヶ月間にわたりワインを発酵、熟成をする。

そして「アリアンス」の意味とは、「協力」や「調和」。まさに多様でありながら、誰もが共存して生きたいと願う私たちへのエールともいえるかもしれません。

マルク・テンペの本拠地ツェレンベルグは、アルザスのなかでもごくごく小さい田舎町だけれど、マルクはその地を心から愛しています。アルザス地方を訪れて、高台からツェレンベルグをともに一望したとき、「ほら、見て。世界で一番美しい街だろう」と、そう笑った姿が、長く残像として留まりました。

そう、フランス人は自ら住む地に、大きな誇りを持っているのです。


▲ 生産者マルク・テンペ。日本が好きで、コロナ禍以前はたびたび来日していた。


▲ 96年からビオディナミに取り組む畑は様々な生物や植物が混在して、まさに多様性に富む。

美しく伸びやかな精神を呼び覚ますワイン

いまは「グローバル」も世界で盛んに叫ばれている意識のひとつではあるけれど、真のグローバリズムとはむしろローカリズムであり、その地ならではの魅力や価値を高めることなのでしょう。

そんな時代を生きる私たちに、ビオディナミ農法の恩恵を受けたこの美しく伸びやかな酒質のワインは快く健やかな精神を呼び覚まし、豊かなひとときを提供してくれます。

ドメーヌ・マルク・テンペ「アリアンス」¥2,900 (税別)
問い合わせ先:ディオニー 075・622・0850

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ライター

鳥海 美奈子

共著にガン終末期の夫婦の形を描いた『去り逝くひとへの最期の手紙』(集英社)。2004年からフランス・ブルゴーニュ地方やパリに滞在、ワイン記事を執筆。著書にフランス料理とワインのマリアージュを題材にした『フランス郷土料理の発想と組み立て』(誠文堂新光社)がある。雑誌『サライ』(小学館)のWEBで「日本ワイン生産者の肖像」連載中。ワインホームパーティも大好き。

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