個性的な味わいが人気の小規模生産者の泡
三寒四温。コロナ禍ではまだまだ、誰もが生きづらさや我慢を強いられてはいるけれど、陽光は確実に柔らかさを増して、草も木も土も鳴動し、私たちの心を少し、浮き立たせてくれます。
祝祭の春の訪れ。それを歓ぶなら、選びたいのは、やはりシャンパーニュ。しかも、何かしらこだわりのものを開けたいですね。
シャンパーニュは近年、大手だけでなく小規模生産者の銘柄が人気となっています。以前は大手メゾンなどにぶどうを売っていた栽培農家が、「自分でもオリジナルシャンパーニュを造りたい」と独立。その個性に満ちた味わいに、多くの人が魅了されているのです。
▲ ぶどう畑の樹齢は35~60年と古木が多く、味わいのポテンシャルの源に。
シャンパーニュ界の「アンファン・テリブル」
なかでも、特別な光を放つのが、ベレッシュ。彼らが注目を浴びたのはすでに15年ほど前になるけれど、その革新性はいまなお揺らぎません。
▲ ベレッシュの味わいを堪能できるベーシックな銘柄「ブリュット・レゼルブ」。
それはなぜか、といえば、シャンパーニュをただ「乾杯」のためのお酒として捉えるのではなく、味わいの質を大切にしようという意識を、明確に打ち出した人だから。生産者のラファエル・ベレッシュは当時、まだ20代後半。シャンパーニュに改革を起こそうとの強い意志と意欲とアイディアに全身、貫かれていました。
そこで彼は、泡立つシャンパーニュの原酒となる、ワインの状態のお酒を試飲させるサロンを開催したのです。いわば、お化粧をする前のすっぴんの顔を晒して、堂々と勝負してみせたといったところでしょうか。シャンパーニュでは過去になかったその行為は世界のワインジャーナリストやソムリエたちを驚かせ、彼はたちまちスターダムへと駆け上りました。
▲ 例年、フランスのランスで春に行われる試飲会。ベレッシュのブースには多くの人が集う。
アンファン・テリブル Enfant Terrible。型破りで、慣習にとらわれず、人目を惹き、そして成功を手中にした若き人を表すそんな言葉がフランス語にはあるけれど、当時の彼は、まさにそれを具現化した存在でした。現在は弟のヴァンサンとともに、より質の高いシャンパーニュ造りへと邁進しています。
▲ フランスのワイン専門誌で紹介された記事のタイトルには「成功には、多くの年月を必要としない」の文字が。おもに兄ラファエル (左) は醸造を、弟ヴァンサン (右) はぶどう栽培を担当。
コロナ禍の日々を経て、新たな人生の一歩のために
コロナ禍のいまは、多くの人がさまざまな問いを、自分自身に投げかけているのではないでしょうか。これからどうするのがいいのか、自分はなにを決して手放せない大切なものとして、この心や掌に握りしめていけばいいのか、と。
コロナ禍の日々が単なる失意や停滞ではなく、新たな人生の一歩となる日のために。そんないまの私たちの想いを受け止めるのにふさわしいベレッシュの「ブリュット・レゼルブ」。
▲ 「ブリュット・レゼルヴ」は24ヶ月の瓶熟成を経て、出荷される。
グラスに注ぐと、そのシャンパーニュは溌剌とした黄金色。凛とした酸と旨みに溢れた輪郭のはっきりした味わい、オレンジや蜂蜜、ややスパイシーな香りも魅力的で、誰もが美味しいと感じられる1本です。
春の訪れの陽光と風の匂いを感じながら、ぜひ味わってみてくださいね。
ベレッシュ「ブリュット・レゼルヴ」希望小売価格¥7,500 (税別)
問豊通食料 03・4306・8539
マルシェ・ド・ヴァン銀座で購入可能
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ライター
鳥海 美奈子
共著にガン終末期の夫婦の形を描いた『去り逝くひとへの最期の手紙』(集英社)。2004年からフランス・ブルゴーニュ地方やパリに滞在、ワイン記事を執筆。著書にフランス料理とワインのマリアージュを題材にした『フランス郷土料理の発想と組み立て』(誠文堂新光社)がある。雑誌『サライ』(小学館)のWEBで「日本ワイン生産者の肖像」連載中。ワインホームパーティも大好き。