「不甲斐ない」の意味と語源とは
「不甲斐ない」とは、「情けない」を意味する言葉です。ここでは、そんな「不甲斐ない」の言葉が持つ意味や、その語源となったと考えられている諸説について解説します。なんとなくのイメージで使うと間違った内容で受け取られる場合もあるため、意味をしっかりと把握して正しく使えるようになりましょう。
さらに、「不甲斐ない」は「不」と「ない」が使われるため二重否定ではないか、という考え方もありますが、それは誤りです。その理由もあわせて答えますので、それぞれ確認しておきましょう。
■「不甲斐ない」の辞書などでの意味
「不甲斐ない」を辞書で確認すると「情けない」や「意気地がないさま」を意味する言葉である、と記載されています。ネガティブな意味合いが強く、「なにをしても駄目だ」などとマイナス思考に陥ったときに使われる形容詞です。
自分や周りの言動が思うようなものにならず、残念だと感じる様子を表します。 自分に対して情けなく思ったり、だらしないと思ったりといったニュアンスがあり、さらに他人に対して「不甲斐ない」と使う場合もある言葉です。
■語源は諸説ある
この「不甲斐ない」の語源には下記の3つの説があります。
・「甲斐」を否定してできた説
・「腑甲斐ない」からできた説
・「言う甲斐(いふかい)」からできた説
まずは「甲斐」の否定である説から見てみましょう。「甲斐」とは「おこなった結果のききめや効果、値打ち」の意味を持つ言葉です。
さらに「甲斐」を打ち消す「不」を付けることで、「おこなった効果がない、意味がない」となったと言われます。はじめは「不甲斐」だけで使われたものの、だんだん「不甲斐ない」でワンフレーズだとの認識に変わったのです。
「腑甲斐ない」からできたという説では、「不」の部分は当て字だとされます。「腑」とは「心の底」もしくは「はらわた」の意味があるため、「無駄である」を意味する「甲斐なし」を付けて「意気地がないさま」を表したのです。
また、「言う甲斐(いふかい)」からできた言葉である説もあります。「言っても無駄だ」の意味がある「いふかい」が、使ううちに変化したと言われているのです。
■二重否定かは語源から判断可能
「不甲斐ない」は「不」「ない」と否定する言葉が2つあり、「否定した表現をさらに打ち消すため二重否定ではないか」との意見も。しかし、先述した語源を確認すれば、二重否定にはあたらないと判断可能です。
まず、「甲斐」の否定である説から見てみましょう。この場合「不」は確かに打ち消しの意味を持つものの、「ない」はただの形容詞の接続語にあたります。「あどけない」の「ない」と同じくひとかたまりの言葉であるため、二重否定であるという意見は誤りなのです。
また、「腑甲斐ない」や「言う甲斐」の説の場合、「不」の部分は当て字です。この場合でも、否定の意味にあたる部分はひとつであるといえます。
「不甲斐ない」の使い方、例文、英語表現
「不甲斐ない」は反省を表明したいときなどに使える言葉です。先述したとおり「情けない」という言葉と似ているものの、頻繁に使われるシーンが少し異なってきます。
それでは、実際に使われるシーンで「不甲斐ない」を使った例文を確認していきましょう。さらに「不甲斐ない」の英語での表現についても紹介します。
■「不甲斐ない」を使うシーン
「不甲斐ない」という言葉は、自分に対しても他人に対しても使える表現です。自分に対して使う場合には「周囲の期待を裏切ってしまった」「やらなければならないことがあったのに逃げ出してしまった」などのシーンがあります。
また、周りの人に対しては、「すぐ否定ばかりして頼りない人だと思った」「いつもマイナス思考をしている」「人にすべて任せて甘えてばかりだった」などが「不甲斐ない」を使うシーンです。 なお、「不甲斐ない」のほうが「情けない」よりもビジネスシーンでよく使われています。
■「不甲斐ない」の例文
「不甲斐ない」を実際に使った例文も確認していきましょう。
・せっかく勉強を教えてもらったのに、テストで60点しか取れなくて不甲斐ない結果に終わってしまった。
・今までの不甲斐なさを反省して、今後は真面目に取り組んでいこうと誓った。
・家事がなにもできず、不甲斐ない気持ちでいっぱいだ。
・夫の不甲斐ない部分を見てしまい、幻滅した。
・わたしが不甲斐ないばかりに、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。
なお、目上に対して使う場合には「不甲斐なく思っています」などと、敬語にするようにしましょう。
■「不甲斐ない」の英語表現
「不甲斐ない」という言葉にはさまざまなマイナスイメージが含まれています。そのため、英語での言い換えでまったく同じ意味にあたる言葉はありません。ただし、使うシーンにあわせれば似たような意味にできる言葉もあるため、ニュアンスにあわせて使いましょう。
「臆病者」や「卑怯者」といった意味で使いたい場合には「coward」、「恥ずかしい」という意味であれば「ashamed」があっています。「恥」であれば「shame」、「無益」や「無駄」を表現したいときには「uselessness」を使うとよいでしょう。
「不甲斐ない」の類義語と対義語
「不甲斐ない」の類義語には「情けない」「意気地がない」「だらしない」「気概がない」などがあります。複数の類義語があるため、言い換えをする際にはシーンにあわせた言葉(どんな類義語があるか、結論ファーストの観点から先に簡単に述べてください)を選択可能です。
また、類義語のひとつである「情けない」は「不甲斐ない」にとくによく似た言葉であるものの、言い換えの際には注意しておきたいポイントもあります。さらに、対義語である「甲斐甲斐しい」もあわせてチェックしていきましょう。
■「不甲斐ない」の3つの類義語
「不甲斐ない」にはさまざまなマイナスイメージが含まれているため、類義語がたくさんあります。主な類義語は以下のとおりです。
・情けない
・意気地がない
・だらしない
・気概がない
・軟弱
・腑抜け
・腰抜け
これらの中でもとくに言い換えやすい、「情けない」「意気地がない」「だらしない」の3つの類義語について、チェックしていきましょう。
類義語1. 情けない
「情けない」は「不甲斐ない」にとくに近い表現です。「思った通りにできない」「期待と違ってしまい嘆かわしい」などの意味を持ち、ひどく残念であるという気持ちが含まれます。
できるはずだったのにうまくいかなかった、といったニュアンスの言葉で言い換えをしたいときに、選択するとよいでしょう。 「不甲斐ない」とどう違うのかを比べられやすい言葉であるため、それぞれの詳しい違いを後述します。
類義語2. 意気地がない
「意気地がない」も意味合いが近い言葉であり、同じ内容のまま言い換えをしたいときに使える表現です。なにかをやり抜こうとする気力を持っていない、やり抜くための役に立たない、困難を乗り越えようとする元気がないことを指します。なにかに挑戦したいとき、そのためにどうにかして頑張ろう、といった気力がない人を「意気地なし」といいます。
類義語3. だらしない
「だらしない」も言い換えが可能な類義語のひとつです。「だらしない」の言葉にもネガティブなイメージがあり、「気力に欠ける」といった意味合いを持ちます。待ち合わせ時間よりも遅く来たり、約束を破ったりなどの行動をして、あきれてしまったときに「だらしない人だ」などとマイナスの意味で使われる言葉です。