「付け焼き刃」とは間に合わせの知識という意味
「付け焼き刃」は「つけやきば」と読みます。意味は次の通りです。
【付け焼き刃】
1 切れない刀にはがねの焼き刃をつけ足したもの。見た目は切れそうに見えるが、実際はもろくて切れない。
2 その場をしのぐために、知識や技術などを一時の間に合わせに習い覚えること。にわかじこみ。「付け焼き刃の勉強」
意味は2つありますが、一般的には2の意味で使われます。しっかりとした知識や技術を身につけている時間がないとき、一時的な間に合わせとして身につけるという意味です。例としては、試験前日の夜にあわてて一夜漬けの勉強をする場合が挙げられます。
そのような知識や技術は役に立たないという意味合いがあり、ネガティブなニュアンスを含む言葉です。
「付け焼き刃」の言葉の由来
「付け焼き刃」の由来は、日本刀に関する用語です。前項で引用した言葉の意味の1にある「切れない刀にはがねの焼き刃をつけ足したもの」が本来の意味にあたります。
「付け焼き刃」とは、間に合わせに刃を付け足すもののすぐに折れてしまい、結局のところ役に立たないことから転じて、一時の間に合わせに身につける知識などのことを一般的に指す言葉になったのです。
「付け焼き刃」のことわざ
「付け焼き刃」は、次のようなことわざにもなっています。
「付け焼き刃はなまり易い(つけやきばはなまりやすい)」
その場しのぎに習得した知識や技術は、一時的に役には立つものの、本当に身についたものではないため、すぐに見破られるという意味を表しています。
なまり易いの「なまる」が指すものも確認しておきましょう。なまるは「鈍る」と書き、次のような意味です。
【鈍る】
1 刃物の切れ味が悪くなる。「包丁が―・る」
2 鋭さが失われる。勢いが弱まる。にぶる。「からだが―・る」
3 技量・働きの冴(さ)えがなくなる。にぶる。「腕が―・る」
その場しのぎをしていても何の役にも立たず、本当の知識は身につかないことを戒めたことわざです。
「付け焼き刃」の例文
「付け焼き刃」とは、身につけた知識や技術を批判する意味で使われます。例文を紹介しますので、具体的にどのような使い方をするのかを確認しておきましょう。
・【付け焼き刃】の知識では難関校に合格できない
・我が社には【付け焼き刃】ではない根本的な改革が必要だ
・【付け焼き刃】の対策をしてきたおかげで、今の惨状がある
・【付け焼き刃】で身につけたビジネスマナーなので、予期しない事態に対応できない
「付け焼き刃」の類義語
付け焼き刃には、同じような意味を表す言葉がいくつかあります。「その場しのぎ」「一夜漬け」「にわか仕込み」などです。付け焼き刃と似た意味を持ちますが、微妙な違いもあります。
それぞれの意味を把握しておけば、付け焼き刃についてより深く理解できるでしょう。ここでは、それぞれの類語の意味や例文を紹介します。
【類語1】その場しのぎ
「その場しのぎ(そのばしのぎ)」は付け焼き刃とほとんど同じ意味合いです。
【その場しのぎ】
あとのことは考えずに、その場だけをとりつくろうこと。また、そうした態度・口実。一時しのぎ。そのばのがれ。「其の場凌ぎの答弁」
「その場しのぎ」には、なんとかそのときだけを切り抜けるというニュアンスがあります。「付け焼き刃」が間に合わせの知識や技術を指すのに対し、その場しのぎは状況を表す意味合いで使う場合が多いでしょう。
例文を紹介します。
・彼は【その場をしのぐ】ために嘘をついた
・【その場しのぎ】の対応をしてきたために、深刻な事態に陥っている
・彼女はいつも【その場しのぎ】に適当な返答をしている
【類語2】一夜漬け
「一夜漬け」は「いちやづけ」と読みます。試験の前日などに、足りない勉強量を補うために集中して勉強することを表す言葉です。
試験勉強に限らず、短時間で仕事を終わらせる場合にも使われます。「付け焼き刃」も「一夜漬け」と同じ意味で使われますが、「一夜漬け」が短い時間で集中的に仕事や勉強をする場合に使われるのに対し、「付け焼き刃」は知識や態度などに使う場合が多いでしょう。
例文は以下の通りです。
・彼の勉強法はいつも【一夜漬け】だ
・仕事を溜めてしまい、【一夜漬け】で終わらせなければならない
・【一夜漬け】で作成した資料だったが、上司から褒められた
【類語3】にわか仕込み
「にわか仕込み(にわかじこみ)」も、「付け焼き刃」とほぼ同じ意味合いで使われる言葉です。
【俄仕込み】
1 商品を必要になってから急いで仕込むこと。また、その商品。
2 間に合わせるために大急ぎで覚えること。また、そのもの。「俄仕込みの英会話」「俄仕込みの隠し芸」
「にわか仕込み」には商品を仕込む、もしくはその商品そのものを意味する場合があり、付け焼き刃とは異なる部分です。
例文を見てみましょう。
・【にわか仕込み】の知識では、その問題を解くことは難しい
・予定より多くの参加があり、【にわか仕込み】でテーブルを用意した
・彼女のテーブルマナーは【にわか仕込み】なので、どことなくぎこちない
「付け焼き刃」の対義語
「付け焼き刃」と、反対の意味を表す言葉もあります。「準備万端」や「用意周到」といった言葉で、どちらも急いで身につけた間に合わせの知識とは対極にある言葉です。反対の意味を持つ対義語を覚えることで、表現のバリエーションも広がるでしょう。
ここでは、「付け焼き刃」の対義語を2つ取り上げ、それぞれの言葉を使った例文も紹介します。
【対義語1】準備万端
準備万端は「じゅんびばんたん」と読みます。物事を行う際に、必要な準備がすべて整っているという意味です。必要なものが備わっておらず、一時しのぎをするという意味の付け焼き刃とは対極の意味合いがあります。
例文を見てみましょう。
・【準備万端】怠らず仕事に取り組まなければならない
・試験に向けての勉強は【準備万端】に整えている
・彼のことだから、今回のことも【準備万端】に整えているに違いない
【対義語2】用意周到
「用意周到」も準備に手抜かりがないという意味で、「付け焼き刃」とは対極の言葉です。
【用意周到】
[名・形動]用意が行き届いて、手ぬかりがないこと。また、そのさま。
「用意周到な(の)実施計画」
「付け焼き刃」とは異なり、そのような状態の人を指す場合にも使われます。「用意周到」の例文は次の通りです。
・【用意周到】な訓練を行なっていたので、今回の地震も被害が最小限に抑えられた
・彼はどの試験のときも【用意周到】に準備している
・課長はどんなものにも気配りを怠らない、【用意周到】な人だ
付け焼き刃ではない知識を身につけよう
付け焼き刃は、一時的に知識や技術を身につけることです。切れない刀にはがねの焼き刃をつけ足すという、日本刀の用語に由来しています。
間に合わせの知識などは役に立たないというニュアンスがあり、その場しのぎの習得に対し批判的に使われる言葉です。付け焼き刃とは言われないよう、知識の習得などは準備万端に整えるよう心がけましょう。
イラスト・写真/(C)Shutterstock.com
(引用全て〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
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