「おしとやか」は「しとやか」に「お」をつけた言葉
「おしとやか」とは性格や仕草が物静かで上品という意味の言葉です。「おしとやか」は「しとやか」に「お」という接頭辞をつけて丁寧な言い方をした言葉です。デジタル大辞泉では「しとやか」という項目に掲載されています。
【しとやか】
性質や動作がもの静かで上品であるさま。また、つつしみ深いさま。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「しとやか」に「お」をつけた「おしとやか」は一般的に女性の立ち振る舞いを形容する場合に使われることの多い言葉といえるでしょう。
「おしとやか」の漢字表記は「お淑やか」
「おしとやか」の漢字表記は「お淑やか」、もしくは「御淑やか」です。「淑やか」で使われている「淑」という漢字は「淑女」や「貞淑」などの語句でも使われており、「淑」という漢字にはしとやかやよいと思う、慕うなどの意味があります。
「淑」に「人」をつけた「淑人(しゅくじん)」という語句の意味は道徳にかなった良い行いをする人、善良な人、美人などです。
「おとなしい」との違い
「おしとやか」と「おとなしい」の違いは、「おしとやか」という言葉が上品で穏やかといった長所のニュアンスを含んでいるのに対して、「おとなしい」は口数が少ない、従順であるなど、必ずしも長所とはいえないニュアンスがあるところが大きな違いといえるでしょう。
「おとなしい」は漢字で、「大人しい」とも書きます。大人びいている、思慮深いなどの意味で使われることもあります。
「おしとやか」の使い方と例文
「おしとやか」という言葉は一般的には女性に対して使われることの多い言葉で、基本的には褒め言葉として使われます。
【例文】
・小さい頃の彼女はおてんばでやんちゃな印象があったのですが、今ではすっかり【おしとやか】になっていたので、驚きました。
・うちの母は「【おしとやか】な女性になりなさい」と口癖のように言いますが、今はそんな時代ではないと思います。
・彼女は普段は【おしとやか】で物静かな人ですが、試合に出場している時には気迫あふれる戦いぶりを見せてくれます。
「おしとやか」の4つの類義語
「おしとやか」にはいくつかの類義語があります。主な言葉は以下の4つです。
1.慎ましやか
2.雅びやか
3.たおやか
4.優美
これらには褒め言葉というニュアンスを持っているという共通点があります。またこの4つの言葉は「おしとやか」と違って、人以外の対象を形容する場合にも使えるという特徴があります。それぞれの言葉の意味と使い方をご紹介しましょう。
1.慎ましやか(つつましやか)
「慎ましやか」には慎ましいさま、しとやかなさまという意味があります。「つつましやか」と読み、人以外の対象に対しても使われます。
【例文】
・彼の夢はぜいたくな暮らしは一切しなくてもいいから、ただ家族が仲良く平和でありますように、という【慎ましやか】なものだった。
・いつもは大声で騒いでいるのに、片思いの相手の前に出た時の彼女が【慎ましやか】な態度をとっているのを見て、意外でした。
・年をとったら、必要最小限のものだけ残して【慎ましやか】に暮らしたい。
2.雅びやか(みやびやか)
「雅やか」には上品で風雅なさまという意味があります。読み方は「みやびやか」です。「雅び」という言葉には朝廷風という意味があり、貴族的であることを形容する場合にも使われます。この言葉も人以外の対象にも使います。
【例文】
・お茶の師匠が開催した春のお茶会は実に【雅やか】な集いになりました。
・【雅やか】な着物を身にまとっているだけで、気持ちも仕草もゆったりとしたものになりました。
3.たおやか
「たおやか」は姿や形がしなやかでやわらかいさまという意味があります。一般的に女性に対して使われることの多い言葉ですが、花などの植物やしなやかさを備えた生き物を形容する言葉として使われるケースも少なくありません。
【例文】
・野に咲く花のようなさりげなさと【たおやか】さが彼女の魅力です。
・私の祖父は風に揺れながら夕陽を浴びて輝いている、【たおやか】な草原を見るのが大好きでした。
・私の飼っている猫は【たおやか】なポーズを取りながら歩いています。
4.優美(ゆうび)
「優美」には上品で美しいことという意味があります。読み方は「ゆうび」です。人に限らず、幅広い対象に使われる言葉となっています。
【例文】
・小高い丘の上からこの【優美】な景色を眺めたことのある人ならば、誰でもこの土地のことが好きになるでしょう。
・彼女は多くの観客の前で【優美】な舞いを披露して、拍手喝采を浴びました。
・彼女の生き方そのものが【優美】だったからこそ、彼女を知るすべての人から彼女は尊敬されていたのです。
「おしとやか」の反義語はがさつ
「おしとやか」の反義語は「がさつ」です。「がさつ」には細かなところまで気が回らず、言葉づかいや動作が荒っぽくて落ち着きのないさまという意味があります。「ガサツ」とカタカナで表記することもありますが、該当する漢字はありません。
ガサガサという音が語源ではないかとの説もあります。動作や様子を表す言葉で、基本的には対象となるのは人です。
【例文】
・うちの部の部長は性格的にはいい人なのですが、【がさつ】なところがあるので、そばで誰かと話しているだけで落ち着きません。
・自分でも【がさつ】なところが欠点だと自覚しているのですが、なかなか直すことができない。
・食事の時の振る舞いが【がさつ】な人とは一緒に食事をしたくありません。
「おしとやか」の意味を知って正しく使おう
「おしとやか」とは性質や動作が上品で物静かで落ち割いているさまを表す言葉です。漢字を含んだ言葉として「お淑やか」「御淑やか」と表記することもあります。接頭辞である「お」を取って、「淑やか」「しとやか」と表記した場合にも意味はほぼ変わりません。
「淑」という言葉にはしとやか、良い、良いと思って慕うという意味があります。「おしとやか」は女性に使われるのが一般的です。
「おしとやか」は褒め言葉ではありますが、褒めればいいというものではありません。ふさわしいタイミングやシチュエーションで使うようにすべきでしょう。「おしとやか」の意味を知って、正しい使い方をしてください。
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