「不肖」とは愚かや未熟という意味
「不肖」は「ふしょう」と読みます。 取るに足りない、未熟で劣るという意味です。親や師に似ていないという意味合いでも使われます。
【不肖】
[名・形動]《「肖」は似る意》
1 取るに足りないこと。未熟で劣ること。また、そのさま。不才。「不肖ながら誠心誠意努力いたします」「不肖の身」
2 父に、あるいは師に似ないで愚かなこと。また、そのさま。「不肖な(の)弟子」「不肖の子」
3 不運・不幸であること。また、そのさま。
「身の難に逢ひ—なる時は」
(引用〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
あやかる、似ているという意味の「肖」に、否定を表す「不」をつけた言葉で、不肖はあやかれていない、似ていないという意味になります。
ここでは、「不肖」の意味や間違った使い方について紹介しましょう。
「肖」はあやかる・似ているという意味
「不肖」の「肖」はあやかるという意味です。あやかるとは何かの影響を受けて同じような状態になりたいという意味で、良い状態になりたいというニュアンスで使われます。「彼の幸運にあやかりたい」といった使い方です。
そのあやかるを否定しているため、「不肖」は良い状態にあやかれていないという意味になります。
「肖」には似ているという意味もあり、それを否定していることから、「不肖の息子」には「親に似ていない息子」という意味もあります。
ただし、「不肖の息子」にはただ似ていないだけではなく、親が立派であり、その息子である自分は似ていないというへりくだった意味が込められているのが特徴です。
「不肖の息子」を親が使うのは間違い
「不肖」という言葉は、「不肖の息子」というフレーズで覚えている方が多いかもしれません。親が自分の息子を紹介するときに使うこともありますが、このように「不肖の息子」を親が使うのは間違いです。
不肖の息子は「立派な親に似ていない未熟な息子」という意味になり、親が使うと自分を褒め称えていることになります。本来は息子が親に対して使う言葉で、親が自分の息子をへりくだって紹介したいときは「愚息(ぐそく)」が適切です。
「愚息」はそのままだと愚かな息子という意味ですが、言葉の裏には親として子に対する愛情がある前提で使われます。
また、「不肖の息子」は親を褒める言葉であるため、自分が使う場合でも家族以外の場面には適しません。
なお、「不肖」は謙遜する言葉としてフォーマルな場面で使いがちですが、使うのにふさわしくないケースもあります。例えば、披露宴などで挨拶に指名され、「不肖ながら」と添えるのは避けたいところです。単に自分をへりくだるだけでなく、指名してくれた人に失礼にあたる表現になります。
「不肖」を使った例文
「不肖」の意味を正しく理解するには、例文を見るとよいでしょう。いくつか紹介しますので、参考にしてください。
・【不肖】の身ながら、今後もいっそう努力していきたいと思います
・(父に対し)【不肖】の息子ですが、今後ともよろしくお願いいたします
・有名人の子供は【不肖】の息子と言われやすい
「不肖」の類語
「不肖」は自分をへりくだるときに使い、同じように使う言葉があります。「小生」「拙い」「至らぬ」などがありますが、それぞれ使う相手や場面は異なるものです。
言葉の持つニュアンスも、それぞれ違います。「不肖」と同じく、使う場面によって使い分けなければなりません。ここでは、「不肖」の類語について意味や使う場面、例文について紹介します。
【類義語1】小生
「小生(しょうせい)」は、男性が自分をへりくだって紹介するときに使う言葉です。同格、もしくは目下の相手に対して使われ、目上に対しては使いません。会話では使わず、主に手紙など書面上で使います。
文面での例文を見てみましょう。
・しばらく会っていませんが、お変わりありませんか。【小生】は相変わらず元気に過ごしています(友人への手紙)
・お疲れさまです。本日は2時から会議ですが、【小生】は〇〇社との打ち合わせで10分ほど遅れます(同僚へのメール)
【類義語2】拙い
「拙い(つたない)」は能力が劣っているという意味です。技術が劣っている、上手にできないなど、ピンポイントで能力の不足を示すときに使われます。ビジネスシーンで使われることが多く、実際に能力が劣っていない場合も謙遜して使われやすい言葉です。
例文を紹介しましょう。
・【拙い】文章ですが、ご容赦ください
・【拙い】意見かとは思いますが、最初に出ていた案が最適かと思います
【類義語3】至らぬ
「至らぬ(いたらぬ)」は、配慮が不十分で行き届かないという意味です。挨拶やお礼、お詫びのシーンで使われます。挨拶で使う場合、「未熟者である自分」という謙遜した意味で使われ、お礼では行き届かない自分に対する助力を感謝するという意味合いです。お詫びで用いる場合、配慮が行き届かなかった点に対して使われます。
例文は以下の通りです。
・【至らない】点もありますが、今後ともよろしくお願いいたします
・【至らない】ことが多くご迷惑をおかけしたこと、お詫び申し上げます
「不肖」の対義語
「不肖」には対義語も少なくありません。自分をへりくだって使う場合と、愚か・未熟という意味で使う2種類があり、それぞれに対応した対義語があります。
へりくだる意味の対義語には「貴殿」「貴方」「貴兄」などがあり、愚か・未熟の意味では「熟練」「精通」などがあげられます。不肖の対義語について、それぞれ紹介しましょう。
自分をへりくだる意味の対義語
自分をへりくだる意味で使う「不肖」は、次の言葉が対義語になります。
・貴殿(きでん)
・貴方(きほう)
・貴兄(きけい)
・貴公(きこう)
どれも同等もしくは目下の相手を敬う言葉です。目上の者にへりくだって使う「不肖」の対義語になります。
例文は以下の通りです。
・【貴殿】の尽力で無事に乗り切ることができた
・【貴兄】の成功を祈っています
愚か・未熟という意味の対義語
「不肖」の愚か・未熟の意味に対応する対義語には、次のものがあげられます。
・熟練(じゅくれん)
・精通(せいつう)
・利発(りはつ)
「熟練」は慣れていて上手なこと、「精通」は物事に通じて詳しく知っていることを表します。「利発」は賢いという意味です。
例文を見てみましょう。
・彼は【熟練】した腕前で素早く仕事を終えた
・彼女はこの分野に【精通】しており、質問には正確に答えられる
「不肖」は使い方に注意しよう
「不肖」とは取るに足らないこと、未熟なことを表す言葉です。主に自分をへりくだって紹介するときに使われます。似ていないという意味もあり、「不肖の息子」というフレーズは、立派である親に似ていないという意味合いです。親が自分の息子を人に紹介する場合に使うのは間違いで、自分が立派な親であると自慢することになるため注意してください。
「不肖」には類義語、対義語も多く、合わせて覚えれば「不肖」についてより深く理解できるでしょう。
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