初めから終わりまでを意味する「ピンからキリまで」の語源はポルトガル語であるという説が有名です。
Summary
- 「ピンからキリまで」の語源はポルトガル語であるという説が有力
- 「ピン」が上で「キリ」が下であり、最高から最低までなどの意味で使われる
- 相手に失礼な印象を与える可能性があるため、使用する際は注意が必要
Contents
「ピンからキリまで」とは?
「ピンからキリまで」は、物の善し悪しや値段、品質などが幅広い範囲にわたることを意味する言葉です。最高のものから最低のものまで、あらゆるレベルが存在することを表現します。
「ピンからキリまで」の意味
「ピンからキリまで」の意味を調べてみると以下のように書かれています。
始めから終わりまで。最上のものから最低のものまで。上等なものから下等なものまで。(<小学館 精選版 日本国語大辞典>より引用)

「ピンからキリまで」の語源とは?
「ピンからキリまで」の語源は諸説ありますが、一般的にはポルトガル語が由来である説が知られています。「ピン」は「点」を意味する「pinta(ピンタ)」でカルタやサイコロの目の「1」の数を表しており、「キリ」は「十字架」を意味する「cruz(クルス)」が語源とする説です。こちらは「十字架」から「10」を意味するものに転じたようです。
この2つが組み合わさった「ピンからキリまで」は、本来「最初から最後まで」という意味でしたが、そこから「一流のものから三流のものまで」などという意味合いで使われるようになったとされています。

なぜポルトガル語とされているのか?
では、なぜポルトガル語とされているのかというと、その話は16世紀まで遡ります。
当時、ポルトガルから伝来したカルタは、日本で「天正カルタ」と呼ばれ広く遊ばれるようになりました。天正カルタは12枚×4組の計48枚のカードで構成されています。
このカルタ遊びの中で、1を表す言葉「ピン」や十字架を意味する「クルス」などのポルトガル語が日本語に取り入れられたそうです。そこから「ピン」と「キリ」は、最初と最後を表現する言葉として浸透していったとされています。

まだある! 語源が同じ「ピン」や「キリ」がつく言葉
私たちが普段使っている言葉で、ポルトガル語の「ピン」と「クルス(キリ)」が語源とされているものは他にもあります。
「ピン」がつく言葉
たとえば、「ピン芸人」。コンビではなく、1人で芸をするスタイルの芸人をいいます。また「他人に渡す代金の1部をかすめ取る」という意味の「ピンハネ」。これらの「ピン」もまた語源は同じという説が有力です。
「キリ」がつく言葉
そして「キリ」は、「キリがない」や「キリのいいところまで」が挙げられます。「キリがない」は「終わりがない」ということ、「キリがいいところ」は、「区切りやすいところ」をいいます。これらの「キリ」も「終わり」や「最後」を意味する言葉が由来だそうです。
「ピン」と「キリ」はカタカナ表記
「ピンからキリまで」と文字で書く際、「カタカナ表記なのか平仮名表記なのか?」と迷う方もいるかもしれません。「ピン」と「キリ」は外来語だと考えられているため、カタカナ表記が一般的です。辞書などもカタカナで表記されています。
「ピン」と「キリ」はどっちが上で、どっちが下?
「ピン」と「キリ」はどちらが上なのでしょうか? その答えは「ピン」が上、「キリ」が下です。「ピン」は「最初」や「1」という意味なのに上なの? と思うかもしれません。本来は「ピン」が最小や価値の低い意味で用いられていましたが、江戸時代以降に「ピンからキリまで」という言い回しが広まる中で、評価の上下が逆転したとする説があります。

「ピン」が上、「キリ」が下と覚えておきましょう。
「ピンからキリまで」の使い方を例文でチェック
「ピンからキリまで」は、主に物のランクや価格の幅が広いことをいう際に用いられます。しかし最近では、物の種類が多いことなどを表現する際や言葉を省略して使われることも。「ピンからキリまで」の使い方を例文でチェックしていきましょう。

「新しい腕時計を買いにデパートに行ったが、値段がピンからキリまであって選べなかった」
この場合、時計の値段が低価格のものから高額なものまである、ということを伝えています。
「大学を出ていると一口にいっても、大学にはピンからキリまである」
この場合の「ピンからキリまで」は、大学のレベルを表したもの。レベルが高い大学から低い大学までさまざまある、ということを表した例文です。
「人の香りの好みはピンからキリまであるから、香りのあるものをプレゼントに選ぶのは難しい」
物の品質の優劣ではなく、好みの範囲の広さを言及した一文です。「ピンからキリまで」は、ランクや品質の優劣のほか、物事の幅の広さを表現するときにも用いられる言葉です。
「東京にフレンチレストランは数多くあって、値段もピンキリだ」
「ピンからキリ」を略して「ピンキリ」と表現されることもあります。
【実際の体験談】ビジネス等で使う時の注意点
実際のビジネスシーンで「ピンからキリまで」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。「ピンからキリまで」にまつわる実際の体験談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】役員会議での「プロ」の表現力
Tさん(管理職、39)
先日、新規事業の予算案を役員会議でプレゼンする機会がありました。その際、上席の役員から「提案されたベンダーは、どれも同じようなものなのか?」と質問されました。u003cbru003eu003cbru003e担当役員の一人は、少し考えてから「いえ、技術力もコストもピンからキリまででして、今回は当社の要件に最も合致するベンダーを厳選しました」と答えていました。この簡潔な一言で、u003cstrongu003e私たちは多くのベンダーの中から最善の選択をしたプロフェッショナルであることが伝わりました。u003c/strongu003eu003cbru003eu003cbru003e冗長な説明をすることなく、選択肢の幅広さと、その中から選び抜いたという過程を瞬時に示すこの言葉の力を目の当たりにしたのです。私も、自分の言葉に責任と重みを持たせる上で、こういった的確な表現を身につけたいと強く感じました。
【episode2】部下の「軽々しい」発言
Kさん(役員、41)
私が管理職としてチームを率いていた頃の話です。部下の一人がクライアントとの打ち合わせで、自社サービスのラインナップについて「うちのサービスはピンからキリまであるので、どれでも選べますよ」と話しているのを聞きました。u003cbru003eu003cbru003e打ち合わせ後、私は彼を呼び、「その言葉はクライアントに失礼だよ」と指摘しました。彼は「どうしてですか? 種類が多いことを伝えたかったのですが」と困惑。私は、u003cstrongu003e「『キリ』という言葉には、悪いもの、価値の低いものというニュアンスが含まれる。自社の商品に対して使うのは、品質に自信がないと受け取られる可能性がある」u003c/strongu003eと説明したのです。u003cbru003eu003cbru003eその上で、「『お客様の幅広いニーズにお応えできるよう、多様なラインナップをご用意しております』のように、より丁寧でポジティブな表現を心掛けるように」とアドバイスしました。
「ピンからキリまで」の類語・言い換え表現とは?
「ピンからキリまで」の類語・言い換え表現には「玉石混交」・「大小さまざま」・「当たり外れ」が挙げられます。意味や使い方をみていきましょう。
「玉石混交」
「玉石混交(ぎょくせきこんこう)」または「玉石混淆」と表記する場合もありますが、どちらも意味は同じ、以下の通りです。
価値のあるものとないものが入りまじっていること。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「玉」は宝石を表し、その中に石がまじっていることを表現しています。そのことから、価値のあるものから価値のないものがまざり合っている状態をたとえた熟語です。なお、「玉石混合」とするのは誤りですので注意しましょう。
例文
・インターネットの中の情報は「玉石混交」だ




