「破天荒」とは誰もが成し得なかったことをすること
「破天荒」とはこれまでに誰もがやったことのなかったことを初めて行うことという意味の言葉で、読み方は「はてんこう」です。
【破天荒：はてんこう】
前人のなしえなかったことを初めてすること。
また、そのさま。前代未聞。未曽有(みぞう)。
（引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より）
「破天荒」という言葉は日常会話からビジネスまで、さまざまな分野で使われています。しかし、「多くの人が意味を間違えている」との文化庁による調査結果が出ている言葉です。
ここではどんな間違え方をしているのか、正しい意味とはどういうものなのか、ということとともに、「破天荒」の語源を解説します。
「豪快で大胆」は間違った意味
文化庁が2021年9月に発表した2020年度の「国語に関する世論調査」で、破天荒に関する意外な結果が出ています。調査内容は「彼の人生は破天荒だった」との例文を出し、正解を選択するというものでした。
間違った回答の「豪快で大胆な様子」を選択した人が65・4%、正しい回答「誰も成し得なかったことをすること」を選択した人が23・3%で、不正解が正解を大きく上回る結果が出ています。
「大胆で型破り」「非常識」「枠の中に収まらない」など、誤った理解をする人が数多くいるため、意味を間違えないように注意してください。
「破天荒」の語源は中国の故事成語
「破天荒」の語源となったのは中国の唐時代に書かれた「唐摭言‐巻二」「北夢瑣言‐巻四」などの資料に掲載されているエピソードです。
「破天荒」という文字の中の「天荒」とは未開の荒れ地という意味の言葉です。当時、官吏採用試験で誰も合格者がいなかった荊州は、他の地域の人々から「天荒」と呼ばれており、荊州の人々は悔しい思いをしていました。
しかし劉蛻（りゅうぜい）が初めて採用試験に合格し、その快挙を喜んだ荊州の長官が「天荒を破る」と賞賛し、劉蛻に報奨金をたくさん与えたエピソードが残っています。この逸話から「破天荒」が誰にも成し得なかったことをするという意味になりました。
「破天荒」の例文
「破天荒」は人物を形容する場合によく使われており、日常会話からビジネスまで幅広く登場する言葉です。しかし誤った意味が広まっているので、使う場合には注意が必要な言葉といえるでしょう。
【例文】
・織田信長は、誰もがやらなかったことを数多く改革を断行した【破天荒】な人生を送った人物です。
・商品開発部のＡ君は、次から次へと奇抜なアイディアの新商品を開発している【破天荒】な人です。
・私の友人の冒険家は前人未踏といわれている高山に次から次へと挑んでおり、【破天荒】な人生を送っています。
「破天荒」を使う際の注意点
「破天荒」という言葉を使う場合に注意しなければならないのは、誤った意味で使わないようにすることだけではありません。文化庁の調査結果によると、誤った意味を覚えている人が65・4%います。
こちらが正しい意味で使っても、相手が違う意味でとる可能性が高いことを認識しておく必要があります。「あなたは破天荒な人ですね」とほめたつもりの発言が、「非常識な人」と悪い意味にとられる可能性があることを考慮しなければなりません。
「破天荒」の類義語4つ
「破天荒」にはいくつかの類義語があります。主なものは「前代未聞」「前人未踏」「未曾有」「空前絶後」の４つです。「破天荒」は意味を間違えて覚えている人が少なからずいる言葉であるため、誤解されないように、別の語句で言い換えたほうがいい場合もあります。
この4つの言葉を覚えておくといいでしょう。それぞれの意味と例文をご紹介します。
前代未聞（ぜんだいみもん）
「前代未聞」はこれまでに一度も聞いたことがないような変わったことという意味の言葉です。「ぜんだいみもん」と読みます。ニュース番組やスポーツ番組でよく使われている言葉といえるでしょう。
【例文】
・こんな季節にこの地方に雪が降るなんて、【前代未聞】の出来事です。
・いつも散歩している時のように、愛犬と一緒にマラソンに参加したのですが、「【前代未聞】である」と主催者からさんざん叱られました。
