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LIFESTYLE インタビュー

2022.03.05

崩れた部分にこそ人間らしさが宿っている——演技における〝一筆書きの美学〟 声優・細谷佳正さんスペシャルインタビューvol.3

忙しい日々を送る女性たちに癒しを! 毎日頑張るワーキングウーマンにご褒美を! 現在上映中のアニメ『フルーツバスケット -prelude-』でヒロインの父親・本田勝也役を好演している声優・細谷佳正さんのスペシャルインタビューvol.3。細谷さんの演技論、声の強みと弱みなど、インタビュー連載ラストとなる今回も気になる話題が盛りだくさん。ワーママに向けた応援メッセージも必読です!

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インタビューvol.3では、声優としての想いなど細谷さんのパーソナルをクローズアップ!

現在公開中のアニメ『フルーツバスケット -prelude-』で、同シリーズのヒロインである本田 透の父親・本田勝也役をその高い演技力で見事に演じている声優・細谷佳正さんへのスペシャルインタビュー。キャラクターへの想いを中心に作品についてお伺いしたvol.1vol.2から話題を変えて、今回は細谷さんの演技論をはじめとしたパーソナルな部分について深掘りします。


▲〝グリーンな細谷さん〟もすっかり見慣れて(!?)きたところで…今回は細谷さんご自身のお話をフューチャー!

「点数や正解・不正解を意識した修正はいらない」細谷さんが想う〝一筆書きの美学〟

作品のサイドストーリーを自ら考え、演じるキャラクターの人格を構築していった…という深い役の掘り下げ方(その詳細はインタビューvol.1vol.2で!)にとても驚かされましたが、普段の細谷さんは、声優としてどんなことを意識しながら演技をしていらっしゃるのでしょうか。『声優として一番大切にしていること』について質問すると…

「自分では〝一筆書きの美学〟と呼んでいるんですけど…」

返ってきたのは、何とも興味深く、かっこいい言葉。「かっこいいのは言い方だけですよ(笑)」と笑いながら話を続けます。

「撮り直す部分を極力つくりたくないんです。だから、なんだかチープな言い方になってしまうかもしれないけれど、本番一回で終わらせる、という気持ちで常にアフレコにのぞんでいます。もちろん、修正する部分は出てくるけど、なるべくそれを少なくしたい。撮り直しが多くなって、シーン全体がつぎはぎになると…自分が何を作ってるのかわからなくなるし、僕はそういう時の自分のパフォーマンスを良いとは感じないんですね。一筆書きというか…一回で終わらせる方が感覚に鮮度があるし、一番いいと思っているんです」

後から足し引きすることなく一筆で描ききった〝真実〟の中にこそ、本当の感情が存在している——そんな細谷さんの演技論。深く感銘を受けていたら「最近また新しく大切にしていることがあって…」とその美学をさらに追求する取り組みについて教えてくれました。

「これは僕に限ったことじゃないと思うんですけど…たくさんのアニメや吹き替え作品に携わっていくうちに、求められる『台詞のニュアンス』のラインが自分の中で把握できるようになってくるんです。聴いた人に受け入れてもらえる演技のライン…もっと下世話な言い方をしてしまうと、収録でOKがもらえる『正解の』ラインですね。僕も無意識的にそこをボーダーラインにしながらアフレコしていることに気がついて」

正解や不正解がないはずの世界に、いつの間にか〝目指すべき基準〟を設定してしまっている…それは役者としての感性の鋭さがもたらす、演技の壁。

「ボーダーラインを少しはみ出すと『あ、違った』と思って反射的に修正してしまう。でもそういう正解や不正解が存在しているのは何か違う気がするんです。だって、人間ってそんな決まりきったものじゃないはずだから。だからもう〝100点〟や〝正解〟はいらないと思うようになりました」

その感情は確かに〝一筆書きの美学〟へと通じるところがありそうです。

「〝正解〟への意識を取っ払って、自分が本当に思うことや感じることを自由に、ある意味好き勝手に表現することを、今やっている最中というか…そういう時期なんだと思います」

演技からにじみ出る人間らしさとは…「整えてないからいいというか…そもそも整えるって何なのか?みたいな(笑)。結局、何にも考えないでやるのが、自分にとってはいいんだろうと思います」

そのこだわりは、現在公開中のアニメ『フルーツバスケット -prelude-』での演技にも生かされているようで…。

「本田勝也という役は、自分の中にある〝かっこいい男性キャラクターの音階〟で演じる役どころ。でも演じている最中にその音階から外れてしまったとしても、それは修正しなくていい。〝外した〟んじゃなくて、〝外れてしまった〟のなら、それでいいと思うんですよ」

その外れた音階が意味するものは、〝間違い〟ではなく、正解のない〝人間らしさ〟。

「むしろ音階が外れた瞬間にこそ、僕の『本質みたいなもの』がキャラクターに投影されていくのではないかな、と。たとえば誰かとずっと敬語で話していたとして…何か予期せぬことが起きると、その動揺で敬語がはずれて一言だけ普段の言葉づかいに戻ってしまうことがあるじゃないですか。でもその一言が自分のキャラクターとズレているかといわれたらそうじゃない。むしろ、『これが素なのかな?』と感じるというか。その感覚に近い気がします」

シーンを一筆で演じきる…そんな集中状態で役に入り込んでいる最中に〝無意識のズレ〟が生じたとしても、その前後を含めてすべてがまぎれもない本物。つくられた演技ではないからこそ、むしろリアルがにじみ出てくる…そんな細谷さんの演技論は『フルーツバスケット』で描かれる人間の本質を思い起こさせます。

「セリフで絵を描くとしたら、そのすべてが綺麗じゃなくてもいい。どこか崩れている場所があっても、そこに人間味が出ると思うんです。特に『フルバ』はそういう一面を大事にした方がいい作品だと思うんですね。僕が演じた勝也は、メガネやスーツ、敬語というわかりやすい特徴を持っていることもあって、典型的なキャラクターイメージを求められがち。でもそのイメージのままに演じてしまうと、人間らしさがなくなって、僕は自分でつまらなく感じてしまう。どこかツメの甘さやほころびを感じられる雰囲気が勝也に漂っていたらいいなと思います」


▲このままずっと聞いていたい…! と思わずにいられなかった、細谷さんの演技論。インタビューvol.1で自分を〝掴めない人〟と評していた細谷さんですが、尽きない探究心とともに常に進化する演技が、その掴みどころのなさにつながっているような気がします。

細谷さんの声の強みと弱みとは? 「馴染みやすくて自分だと気づかれない…そんな弱みは強みでもある」

続いて、こんなお話も伺いました。この『耳恋』シリーズでは定番となっているこちらの質問! 『自分自身が思う、自分の声の弱みと強みは何ですか?」
この問いかけに対して、細谷さんからすぐさま上がったのは〝強み〟に対する答え。

「海外の方に受け入れてもらいやすい声をしていると思っています」

と、これまでの連載で一度も挙がったことのない新たな角度からの回答にびっくり!

「洋画の吹き替えオーディションって、ボイステストの内容が日本で審査されることってあまりないんです。作品をつくっている本国に送られて、本国で審査を受けるんですが…なんかすごく受け入れられている気がして。いや、理由は特にわからなくて自分で勝手にそう思ってるだけなんですけど(笑)。海外の方になじみやすい、吹き替えるのにちょうどいいと思われるマッチングしやすい声をしているんじゃないかなと感じています」

洋画や海外ドラマの吹き替えでも広く活躍されている細谷さんならではの〝強み〟が飛び出しました。では〝弱み〟についてはどう感じていらっしゃるのでしょうか…?

「弱みを自分で感じたことはないんですよね…。だから、僕の個性だと思っていることでもいいですか?」と前置きをしながら続けます。

「同世代の声優さんたちはみんな声の特徴が強くて、作品を見ていると『あ、●●さんだ!』とすぐにわかる存在感があると思うんですね。でも僕にはそれがあまりない。どちらかというと『馴染んでいて気づかなかった』と言われることがいまだにあるんです。だけどその分、キャラクターそのものを見ていただけるので…これは、物語を楽しみたい視聴者にとっては、僕もそうなので分かるんですけど、めちゃくちゃいい個性だと思います(笑)」

細谷さんの素顔が垣間見える一問一答!&ワーママへの応援メッセージ

さて、ここからは一問一答形式で細谷さんのアレコレに迫ります。気になる部分については〝プラスα〟でコメントをいただくことにしましょう。

最近のハマりものはなんですか?

「日本酒です」

特に好きな銘柄は?

「作(ざく)」

癒されたいと思ったときにすることは?

「日本酒を飲む………さっきと同じ答えですよね(笑)。 日本酒を飲みながら、愛犬と戯れる」

目の前にクタクタに疲れた女性が…細谷さんならその女性をどう癒す?

「…そうですねぇ、話を聞きます」

どんな話をしますか?

「『最近どうですか?』とか何てことない雑談ですね。そしたら何か喋ってくれそうな気がするから。雑談しているうちに元気になることって多いじゃないですか」

確かに…!とっても素敵な回答です!

「例えば、コーヒーを一杯出したりしたところで……きっとそれは〝※ただし好きな人に限る〟んですよ」

〝※ただしイケメンに限る〟の派生版ですね!

「なんやかんややったところで〝※ただしイケメンに限る〟し、〝※ただし好きな人に限る〟んですよ。 だったらやっぱり、きちんとお話を聞いてあげるのが一番だと思いませんか?」

……と、なんとも素晴らしい回答でしめくくってくださいました。


▲ふわっと柔らかな空気をまといながら、優しい熱が込もったお話を繰り広げてくれた細谷さん。時折見せる、チャーミングな反応や回答もとても魅力的でした!

そして最後に、毎日仕事や育児に邁進するWEB Domani読者の皆さんに向けての応援メッセージをお届けします!

「本当につくづく、すごいな、と。働きながら〝お母さん〟をされているって、独身の僕の想像なんか追いつかないくらい大変なことをされていると思うんです。今回、『フルーツバスケット』という作品の中で親の役をやらせていただいたんですけど、その役を通して世間を見てみても、なかなかうまくいかない現実があって。さらにまだ男性優位にある社会の中で働きながらお子さんを育てていらっしゃるって、本当に素晴らしいお仕事ぶりだと思うんです。感謝しかないですよね。ありがとうございます…尊敬しています」

と真っ直ぐな想いを言葉にしてくださった細谷さん。最初から最後まで、作品に対しても役に対しても、仕事に対しても、そしてこちらが投げかけるどんな質問に対しても、嘘のない真っ直ぐな想いを込めて回答を返してくださる姿が本当に印象的でした。ありがとうございました!

『フルーツバスケット -prelude-』上映中!
劇場限定版Blu-ray同時発売!

【あらすじ】
この世の何も信じることが出来ず
荒れ果てた生活を送っていた今日子は、
教育実習生として赴任してきた本田勝也と出会う。
慇懃無礼でクセの強い勝也に翻弄され、
次第に惹かれていく。
ところが、不良仲間との間で起きた事件をきっかけに
親から勘当を言い渡されてしまう。
今まで散々好き勝手やってきた罰だ。
そう思う今日子の前に、勝也が現れて……。
【キャスト】
本田今日子:沢城みゆき 本田勝也:細谷佳正 本田 透:石見舞菜香 草摩由希:島﨑信長 草摩 夾:内田雄馬 ほか
【スタッフ】
原作・総監修:高屋奈月「フルーツバスケット」(白泉社・花とゆめ COMICS) 監督:井端義秀 脚本:岸本 卓 キャラクターデザイン:進藤 優 衣装デザイン:minatsu 美術監督:神山瑶子 色彩設計:菅原美佳 撮影監督:蔡 伯崙 編集:肥田 文 音響監督:明田川 仁 音楽:横山 克 音楽制作:トムス・ミュージック アニメーション制作:トムス・エンタテインメント 製作:フルーツバスケット製作委員会
©︎高屋奈月・白泉社/フルーツバスケット製作委員会

声優

細谷佳正

ほそや・よしまさ/2月10日生まれ。広島県出身。2014年、2016年の2度に渡り、声優アワード 助演男優賞を受賞。主な出演作に、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』シャン・チー 役、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』オルガ・イツカ役、『メガロボクス』シリーズ、『進撃の巨人』ライナー・ブラウン役など。40歳の節目を迎える今年の誕生日に出版した、自身の半生を綴ったフォトエッセイ『アップデート』(宝島社)も好評発売中!

撮影/谷口 巧(Pygmy Company) ヘアメイク/河口ナオ 構成/旧井菜月、福本絵里香

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