――仕事ができるイメージが強い黒沢ですが、町田さんの思う“仕事のできる人”の条件を教えていただけますか?
清潔感ですね。服装もあるし、仕事を任せられそうだなと思える雰囲気。あとは、自分自身にも、仕事にも自信を持っている方ですかね。そういう人は、仕事ができそうに見えますよね。僕は、自分が仕事できない人だと思っているので…(笑)。その分、とりあえずできる限りのことを考えて、仕事に臨もうと意識しています。きっと、その積み重ねをしていくことで自分に結果として返ってきて、自信につながると信じています。
――この作品が日本をはじめ海外まで広く受け入れられた理由はどこにあると思いますか?
たくさんの方に楽しんでもらえたとスタッフさんからも聞いていました。業界内でもドラマを観てすごく好きだったと知り合い伝いに言ってくださる方がいたり、他の現場で会ったときに“チェリまほ”の感想を話してくださる方がいたり。多方面からそういうお声をいただいて、いまだに本当かな?と思ってしまうほどうれしい限りです。
これだけ多くの方に受け入れられた理由は、僕自身では正直あまりわかっていないのですが、この結果こそが答えなのかなと。「楽しい!」と伝えてくださる方が多かったのが理由のひとつだと思います。あとは現場の雰囲気ですね!全員が優しい空気感で現場にいてくれて、妥協せず丁寧につくろうと結束していて、僕も心地よかったです。そういう現場の空気は映像を通してプラスアルファとして、皆さんに伝わったと思います。
それから、やっぱり赤楚くんじゃないですかね。物語の主人公である彼がみんなに分け隔てなく接して、みんなで一緒に楽しくつくりたいと心から思っているのが伝わってくる。だから自然と周りにも受け入れられたと思います。
原作の持っている世界観のパワーは間違いなく大きいですし、僕らも映像化するときに、絶対に原作の空気感を大事にしようという共通認識は持っていました。それも相まっていろんなことが偶然なのか必然なのか…交じり合ってきた結果、皆さんが受け入れて楽しんでくださったので、物づくりをする上でもすごく勉強になりました。
――映画ならではの注目点や、映画での安達と黒沢の展開は?
今回、現場に入るのが楽しみで、楽しみで!現場で超ベテランの大先輩が駆け寄って来て「またよろしくね!」と声をかけてくださってすごくうれしかったです。そうやって僕たちつくり手側の人間が一緒に喜べているのも本当にありがたいこと。この機会を貰えたのは、観てくれた皆さまのおかげなので、感謝しています!ドラマと変わらない世界観を大事にしようという思いで演じましたが、映画ではその後の物語を描いているので、より一層ふたりの関係性も深まります。その過程で起こる物語には、ドラマとはまた違う乗り越えるべきことがたくさん描かれているので、どう決断して行動するのか、見応えたっぷりだと思います。僕も台本を初めて読んだとき、すごく素敵だなと思いました。演者として楽しみながら、よりよくするにはとすごく考えた時間は新しい挑戦でした。
――安達と黒沢が描く『愛』について、監督や赤楚さんとは話し合われましたか?
毎シーン話し合いました。思い返すと色々ありますが、ドラマのときからふたりの心の距離感がどう変化したのか、単純に距離だけではなく関係性の深さを立体化させる作業をしていました。
ドラマでふたりの心が固く結ばれるところまで描いたので、そこからさらにというと難しいですが、“恋愛”から“愛”へ変わっていく様が、今回はすごく大事でした。監督や赤楚くんともその部分はディスカッションを重ねましたね。「仲が深まっているふたりだからこそ、こういう会話になるよね」、「こういう空気感は新鮮かも」と。演じている僕らも新しい空気感を感じて、“こういう感じなんだ”と話したときもあります。スクリーンの大画面で観るとそこをより感じていただけると思います。
――赤楚さんと3回共演した間に、ふたりの関係はどういうふうに変わってきましたか?
赤楚くんの第一印象は、本当に誠実な人。まず挨拶をしてくれたときに思ったのは目が素敵だなということ。まっすぐで嘘がない目線が強くてすごく誠実さを感じました。眩しいと思ったぐらい…(笑)。相変わらずなんでも話せる間柄ですし、信頼がより強くなったと思います。赤楚くんもだんだんとお茶目なところやふざけて冗談を言ってくれるようになって…(笑)。それが単純にすごくうれしいです。もちろん赤楚くんだけではなくて僕自身もそう振る舞えるようになってきていると思うので、お互いにだんだんと打ち解けたのだと思います。
――おなじみとなった黒沢の愛情表現ですが、パワーアップした黒沢のシーンの見所を教えてください。
和気あいあいとしたふたりのシーンももちろんたくさんありますので、そこは懐かしいなと思いながら演じました。「ここPRで使われるかな?」と現場で盛り上がりながらやっていたシーンもありました。ドラマのときから僕が台本からはみ出していろいろやりがちなところがあって、迷惑をかけているんですけど…(笑)。そういうところも面白がってくれるので、そういう空気感は感じてもらえると思います。そういうときの赤楚くんの反応もすごくかわいいので注目してほしいですね。
――台本をはみ出した表現というのはアドリブですか?
そういう部分もありますが、風間監督は余白の部分を大事に描いてくださる方なので、台本にはト書きやセリフがないシーンでもセリフを少し加えてくれる。それで一度やってみようとなることもあって、すごく楽しかったです。
――町田さんの中で、台本をはみ出した表現の引き出しが増えてきた感覚はありますか?
いやいや! 本当に必死でしたよ(笑)。ドラマから映画の撮影まで時間が空いた分、客観視している部分もあります。当時は気づかずにやっていたこともあったので、今回パワーアップした形でお届けできるように、とすごく苦しみながら楽しみながら演じました。ひねって絞って一滴出てきた、ということが多かったかもしれません。
はみ出すという表現が合っているかわからないですが、台本から出て来た“膨らみ”が、はみ出ているのはOKだと思うのですが、とりあえずコレをやりたいからとただはみ出すのは、ちょっとナンセンスかなと思います。だから、やっているうちに生まれたらトライしてもいいと思いますが、それを選択するのは僕ではなく監督やプロデューサー、視聴者の方々。役者として、本は絶対。その中でどのくらい膨らませられるか、結果として膨らんだということはあっても、自分がやりたいからやることは一切ないです。「それいいな」、「今のいただきますね」と監督のディレクション以外で予期しないものを出せたときに、僕も作品にお返しできているんだなと実感して、すごくうれしいです。
今回、脚本家の坂口先生と現場に入る前にお会いする機会があって、「台本は設計図であり、ここからなので皆さんにお任せします。是非遊んで自由に楽しくやってください」とおっしゃってくださったのもすごく救いになりました。台本はよく考えられた上での言葉なので一言一句、句読点まで大事にしたいと常々思っていますが、僕たちにも選択肢を与えてくださったことはとてもありがたかったです。