「虎の尾を踏む」の意味や読み⽅とは?
「虎の尾を踏む」という言葉の意味や読み方について解説します。また、言葉の語源や由来についてもあわせて見ていきましょう。
■意味
読み方は「虎の尾を踏む(とらのおをふむ)」です。この言葉の意味は、「極めて危険なことをする。非常に危険なことをする」です。意味合いは、知らずに虎の尾を踏むというよりは、故意に踏むことを表しています。凶暴な虎の尾を踏めばどうなるか、それなりの覚悟をもって行いましょう。そんな意味になります。
■語源・由来
出展は古代中国の書物で、占いの方法やその解釈などが書かれた『易経(えききょう)』の六十四掛第10番目『履卦』です。その書物の中にある「虎尾を踏む、人を咬(か)まず」という文章が語源となっており、「虎は恐ろしい猛獣だから、尾を踏むなんてかみ殺されても不思議ではない」という意味を表しています。また別の言い方で「危うきこと虎の尾を踏むが如し」という言葉が使われることも。
「虎の尾を踏む」という言葉で思い出されるのは、黒澤明監督の『虎の尾を踏む男達』という作品です。黒澤作品初の時代劇。能の『安宅』に由来する歌舞伎の『勧進帳』を原案に、源頼朝から追われる身となった義経と弁慶一行の『安宅の関越え』を描く作品で、第二次世界大戦中に撮影されました。
映画は1945年に完成しましたが、GHQ の検閲で義経と弁慶の主従の忠義を描いた部分が民主主義に反する映画と見なされ、1952年まで公開が認められなかった経緯があります。映画のタイトルとはイメージは異なりますが、作品としてはコミカルに仕上げられています。
「虎の尾を踏む」使い⽅を例⽂でチェック
では、この「虎の尾を踏む」はどのように使うのかを例文で見ていきましょう。
1:普段から気難しい上司が忙しくしているが、虎の尾を踏む覚悟で話しかけた。
いつも気難しい上司が険しい表情で忙しくしている時に、話しかけるのはかなり度胸が要りますよね。仕事の期限もあり、どうしても確認しなければならないときなどは、まさに「虎の尾を踏む」覚悟が必要。ですが、自分のその時の気分で仕事してもらっては困りますね。
2:株が大暴落している時に、今が底値だ! とレバレッジを活用して大きな金額を投資するのは、まさに虎の尾を踏む行為だ。
株が暴落して大きく金額を下げている時に、底値だと判断して自分の持つ資産より大きな金額を投資。ですが、それがまだ底値ではなかったとしたら大損してしまう可能性もあります。そういうリスクはまさに「虎の尾を踏む」投資だと言わざるを得ないですね。
3:わたしは慎重なタイプなので虎の尾を踏むようなことはしない。
人生において実際に「虎の尾を踏む」場面に遭遇することは何度あるでしょうか? 決して多くないとは思いますが、その都度できるだけ安全な選択をする判断力も今の時代大切なのかもしれませんね。
4:自分では気づかなかったが、彼を怒らせたのは「虎の尾を踏んで」しまっていたのかもしれない。
人は気づかないうちにとんでもないリスクを背負ってやっていることがあるのかもしれません。周りから見ると冷や冷やすることをやってしまい、後から大目玉を食らうということも。
「虎の尾を踏む」類語や似たことわざは?
「虎の尾を踏む」ということわざのほかにも、危険なことをするという意味のことわざはたくさんあります。「清水の舞台から飛び降りる」などは有名なことわざではないでしょうか。それ以外の類語や似たことわざについて一緒に見ていきましょう。
1:薄氷を履むが如し
「薄氷を履むが如し(はくひょうをふむがごとし)」とは、薄く張った氷の上を歩くように、非常に危険なことをするという意味のことわざです。
例文:断崖絶壁の登山。身体の幅しかないような場所を通り抜けるのは、命を落としかねない。まさに薄氷を履むが如しです。
2:氷に座す
「氷に座す(こおりにざす)」とは、池に張った氷の上に座ったら、体温によって氷が溶けて下に落ちてしまう。非常に危険な状態や地位にいることを表しています。
例文:わたしの仕事は常に危険と隣り合わせで、いつも氷に座す気分で仕事をしています。
3:危うきこと累卵の如し
「危うきこと累卵の如し(あやうきことるいらんのごとし)」とは、きわめて不安定で危険な状態のたとえ。累卵は積み重ねた卵のことで、いつくずれるかわからないという意味です。
例文:あの古いビルはいまにも崩壊しそうな感じで、危うきこと累卵の如しだ。
「虎の尾を踏む」英語表現とは?
「虎の尾を踏む」を英語ではどのように表現するのかを紹介します。
1:to step on a tiger’s tail
「虎の尾を踏む」を英語で直訳するとこうなります。
2:to rest on a inverted pyramid
直訳すると「さかさまになったピラミッドの上で休む」という意味です。表現が何ともいえず、すごく納得ですね。危険極まりのない状態であることが伝わります。
3:to take a great risk
大きなリスクを取るという意味です。虎に噛まれるかどうかというのは、はかなり大きなリスク(great risk)ですね。
最後に
「虎の尾を踏む」ということわざには、度胸試しの要素もあり、武勇伝として語られることも多かったのでしょう。だからなのか他にもたくさんの似たことわざがあります。
ところで、日本で野生の虎は現存していません。過去にも存在しなかった動物です。ですがこれほど身近に感じるのも不思議ですね。ネコ科の一種だからでしょうか? ですが悲しいことに虎は近年、絶滅危惧種となっているそうです。人間による密猟と乱獲が原因だといわれています。
これほど遠くて身近な存在である虎が、絶滅の危機に瀕していることはまさに「虎の尾を踏む」ことだと思いませんか? 今後虎が本当に地球から居なくなったらこのことわざの意味も薄れていくのでしょうか。
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