東大生は「復習」のクオリティが高い
「東大生は、どんなふうに勉強をしているんですか?」
というのは、シンプルですが多くの人が気になる質問だと思います。僕も偏差値35のときにこれと同じことを思っていましたし、今も多くの人からこの質問を受けます。
さて、勉強にはいろんなやり方があります。本を読んだり授業を聞いたり、ノートを取ったりまとめ直したり、問題を解いたり悩んだり……。
東大生にもいろんな人がいますので、「東大生は、特にこのやり方が優れている!」と一言で言うのは、とても難しいです。
しかしそんな中でも、「この勉強だけは、どの東大生もめちゃくちゃうまい」といえることが1つあります。
それは、「復習」です。東大生には、他の人よりも「復習がうまい」から成績が上がり、東大生に合格できたという人がとても多いのです。さらに、東大生が受験勉強以外のことでも異様に速く上達するのは、この「復習のうまさ」が理由なのです。
今日は、この東大生が実践している「復習のやり方」について解説したいと思います。
復習は、基本的に「つまらない」もの
どんな勉強をしていても、1回ですべてを覚えられるのは天才だけです。1回聞いてやってみたら全部できる、なんて天才は、東大の中にもいません。
ですから、1回覚えたこと、実践したこと、難しかったところなどを振り返って、「復習」していく必要があります。
でも、復習ってつまらないですよね。
だって復習は、1回やったことのある、もう知っている部分も多いことを、もう1回やらなければならないわけです。やっぱり二度手間に感じられて、つまらないものです。
ですが、「同じことを何度も実践する」ことにこそ、意味があるのです。
例えば、一流のスポーツ選手がやっている練習は、そのスポーツの初心者、もっと言えば小学生がやっている練習と、内容自体はそれほど変わらないことも多いです。
サッカーでは一流の選手も初心者も等しく、対面のパス練習やシュート練習をします。プロ野球選手やメジャーリーガーも初心者も同じように、素振りをしたりノックを受けたりするのです。
練習の中身自体は、プロも初心者も、そこまで大きくは変わらない。すごい人は、何か特殊な練習をしているわけではなく、むしろ普通の人と同じ練習をしていて、それなのにすごい結果を出すことができるのです。
「復習の質」が上達のスピードを決める
なぜそんなことが起こるのかというと、同じ練習でも、練習の質が普通の人とは全然違っているからです。
サッカーのパス練習を例に考えてみましょう。1回目のパスは左から相手選手に詰められていることを想像しながら蹴ったけれど、ちょっとタイミングが遅かった。それを振り返って、2回目は「次はもっと早いタイミングで蹴ってみよう」と考え、やってみる。これが「復習」です。こうすれば、2回目と1回目のパスは、一見同じ練習でも、質が全然変わってくるはずです。
復習は、「ただ同じことをすること」ではありません。復習とは「1回やったことを振り返って、改善策を考え、改善策を試してみるための行為」なのです。だから、同じ練習に見えても、1回練習した初心者と1万回練習して1万回改善を試しているプロとでは、その質に天と地ほどの差があるのです。
たとえ東大生であっても、まったく新しい分野の勉強をするときの勉強の仕方は、東大生以外の人とまったく変わらないと思います。それでも東大生の「学ぶ速度」が速い理由は、復習を通じて改善するスピードが速いからです。
他の人が違うことを実践している間に、東大生は復習をしっかりとして、質を爆上げしているのです。
「復習の質」を高めるためにすべきこと
その証拠というわけではありませんが、東大生は暗記する分量の多い理科や社会などの科目の勉強をするとき、同じ1冊の教科書を、何百回も読み込みます。
理科や社会の参考書はいろんなものが売られてはいますが、それらの中からたくさんの参考書を買うのではなく、ただ教科書1冊を、覚えられるくらいまで何度も何度も読んでいるケースのほうが多いです。
特別な参考書を使っていることもなければ、特別な勉強をしているわけでもなく、ただ1冊を復習しまくることによって、東大に合格できるほどの能力を身につけているのです。復習の質の高さと意義をわかってもらえるエピソードではないでしょうか。
復習とは「できない」を探して、埋める作業
さて、もっと具体的に、どうすればそんな質の高い復習ができるのでしょうか? それはシンプルに言うと、「できない」という穴を探して、それを埋めていけばいいのです。
PDCAサイクルという言葉を聞いたことはありますか? P=plan をつくり、D=do で実行する。ここまでで終わるのではなく、今度はC=check で振り返り、A=action でもう一度実行していく。
これが仕事でも何でも必要だと言われているわけですが、この4つの過程の中でいちばん引っかかる人が多いのは、「C=check」です。誰だって、自分のダメなところ、できないところを自覚するのは嫌ですよね。
でも、東大生はチェックから逃げません。むしろ「できない」を積極的に探す勉強をします。それが見つかれば、あとは「D=do」で、その「できない」穴を埋めればいいだけです。
ですから、勉強する中で、自分の苦手な部分・不得意・弱点・欠点を、しっかりとメモしておきましょう。例えば以下のような感じです。
・覚えにくそうな箇所・単語を赤ペンで線を引く
・1回では理解できていないと思うところに波線を引く
・今は覚えられているけれど、次に見るときに忘れている可能性が高いところにオレンジペンで線を書く
こうしたうえで、何度か「目的を変えて」復習をしていきます。たとえば以下のようなやり方です。
・2回目には赤ペンの引かれた箇所を見て、覚えにくいところを覚えやすくするための工夫を考える
・3回目には波線の箇所を見て、どういう意味なのか他人に説明できるようになるまで勉強し直す
・4回目にはオレンジペンの箇所を見て、確実に覚えているかどうかを確認する
こうやって実践していけば、どんどん復習の質は向上していきます。
それでも「復習はつまらない」。だから…
もちろんこのやり方は一例で、「何のために何を学んでいるか」によって、具体的なやり方は千差万別でしょう。ここで大切なのは「1回1回、目的を変えて、自分のできるところ/できないところを確認しながら復習する」ことです。
きちんと復習すれば「復習の回数」を減らせる
いかがでしたか? もしかしたらみなさんの中には、「それでも復習なんて、面倒臭いよ」と思う人もいるかもしれません。確かに、何度も何度も同じことをするのは、面倒臭いものです。
そういう人は、逆に、復習はできるだけ少ない回数ですませられるようにしましょう。
なぜ多くの人が独学で挫折してしまうかといえば、この復習を何度も何度も何度も何度も繰り返さざるを得ないからです。
振り返りが不十分なままで何度も実践し、でもまた振り返りが不十分になってしまって、ということを繰り返し続けているから、うまくいかないのです。
逆に言うと東大生は、この復習をバシッと1回や2回で終わらせられるように努力しているから、質がすぐに上がり、習得のスピードが速いのです。
きちんと振り返れば、同じミスどころか「似たようなミス」すらしないように成長できます。多くの人が何度も何度もやるところを1回や2回ですんでいるから、必然的に「速い」わけです。
みなさんも、振り返りの質を大きく向上させて、復習の回数をできるだけ減らせるように、頑張ってください!
『「学ぶ力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大独学』(東洋経済新報社)
現役東大生・ドラゴン桜2編集担当
西岡 壱誠(にしおか いっせい)
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。
そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。
著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。
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