「うちの子は勉強嫌い」と決めつける前に
「いくら言っても勉強しない」
「勉強しなさいと言うと渋々机に向かうけれど、集中力がない」
「勉強にやる気を出してくれない」
こんな悩みを抱えていませんか?あるいは、ご自身の悩みとして、
「突破しなければいけない試験があるのに、勉強が続かない」
「やる気が出ない」
「気が散って集中できない」
という方もいるのではないでしょうか。
今回私たちが精読した勉強法の名著100冊の中には、人間の学びの仕組みやモチベーションの維持方法などが多数紹介されていました。それらの記載の中からここでは、勉強のやる気を引き出し、集中力を高めるための、3つのポイントを紹介していきます。
そのポイントは、
・「ほめ」でドーパミンを活性化すること
・勉強がはかどる環境をつくること
・「はやさ」よりも「理解」を重視すること
です。さっそく見ていきましょう。
「ほめて伸ばす」は正しい
勉強法のベストセラーの中には、「勉強で結果を出して、思いっきりほめられることで、勉強が楽しくなる」と書いてあるものがありました。
私たちの脳には、「嬉しいこと、気持ちいいことは続けたくなる」という性質があります。最初は勉強があまり好きでなくても、努力の結果をほめられることで、勉強を好きになっていく、ということはよくあります。
なぜなら、私たちの脳の中に「報酬系」と呼ばれる神経系があるからです。報酬系とは、欲求が満たされたとき、あるいは満たされるとわかったときに幸福感がもたらされるシステムのこと。
たとえば「誰かにほめられたとき」「目標を達成したとき」「できなかったことができるようになったとき」「ほしかったものが手に入ったとき」に、私たちは心地よさを感じます。この心地よさを生み出しているのが、報酬系の1つ、「ドーパミン」と呼ばれる神経伝達物質です。
脳の専門家たちは、この報酬系の働きが驚くほど強力であることを述べた上で、この性質をうまく使うことで、学力をアップできると説いています。
このときに大切なのは、「正しくほめる」ことです。むやみやたらに子どもをほめるのは逆効果と考える教育者もいます。勉強法の名著に書かれてあった「ほめ方のポイント」をまとめると、以下になります。
★「正しいほめ方」のポイント★
・「即時」が大事。やったことがすぐに認められるとうれしい。
・「能力」「結果」よりも、「努力」をほめる。
×「頭が良いね」
〇「よくがんばったね」
・ほめた理由を明確にする(「ほめ+理由」でほめる)。
〇「今日は昨日より4ページも多く問題集が進んだね。よくがんばったね」
100冊の中には、「自分で自分をほめよう」とアドバイスする本もありました。
「理想とする行動ができたときは、感情を込めて3回ほめる」
「自ら行った選択と戦略を肯定する」
「自分の良いところをほめると、自然とそういう人になる」
など、自分で自分をほめると、「自己肯定感(ありのままの自分を認める感覚)が高まる」「自信が出る」「やる気が高まる」ことがわかっています。
勉強しやすい空間をつくる
勉強法に精通する著者の多くが「環境が変わると、集中力も変わる」と書いていました。環境を整えると、脳は勝手に集中しはじめることがわかっています。子どもに限らず、「勉強」のための空間は集中しやすいように整えておきましょう。
ポイント1 気が散るものを遠ざける
そのためにまず大切なのは、集中の妨げになるものを遠ざけることです。今すぐできるのは、以下の3点です。
・「誘惑になるもの(ゲーム、スマホ、マンガなど)」を目に入れない
……視界に入るだけで勉強の妨げになる
・雑音、騒音を遠ざける
……静かなほうが勉強ははかどる。音楽をかけるのもなるべくやめる
・今の勉強に必要な参考書だけを出しておく
……次にやる勉強道具などを出しておくと「これもやらないといけないんだった」と気になり、集中が乱される
ポイント2 快適な空間をつくる
部屋や机の上が散らかっている、部屋が暑すぎる(寒すぎる)など、不快な状態だと、効率と集中力は下がります。勉強しやすい環境を整えましょう。
文部科学省の「学校環境衛生基準」によると、望ましい室温は18℃以上、28℃以下です。この数値を参考に、快適に過ごせる室温に調整しましょう。
また、机や部屋の片づけや整理整頓をすると、頭の中が整理されたり、やり忘れていた勉強が見つかったりするといった意見もありました。「勉強しなきゃと思うと部屋の片づけをしたくなる」とはよく聞く話ですが、無駄と決めつけることはありません。片づけをしてから勉強をすると、より効果が期待できそうです。
「はやさ」よりも「理解」
子どもの勉強を見ていると、つい「はやくしなさい」「まだそんな最初のところを読んでいるの?」と言いたくなるかもしれません。
しかし、大切なのは、「はやさ」よりも「理解」。理解することで記憶が進み、試験などでも正しい答えを導き出すことができます。
勉強法の名著には、
・英単語はパーツに分けて語源を理解すると覚えやすくなる。
・数学の公式は導き方を理解した上で覚えると活用できる。
・歴史は流れを理解すると知識が定着しやすい。
と書かれていました。
勉強をしているとつい気持ちが焦り、はやく先に進もうとしがちです。また、理解せずに丸暗記をすることもあります。
しかし、理解せずに先に進んだり、丸暗記をしても逆に無駄になることもあるので、「着実に理解する」ことが大切です。
子どもの勉強でも同様です。はやく先へ進むことよりも、きちんと理解を積み重ねていくことが、勉強継続の秘訣といえそうです。
これらのポイントは、子どもだけでなく、大人の勉強にとってもたいへん効果があります。
『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)
株式会社文道 代表取締役
藤吉 豊(ふじよし ゆたか)
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて、自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。文化人、経営者、アスリート、グラビアアイドルなど、インタビュー実績は2000人以上。2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行なっている。
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