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EDUCATION 教育現場より

2022.10.16

英国オックスフォードの名門小学校から、 日本の私立小学校を選んだ理由【お受験ママの相談室 vol.4 前編】

 

今回は、長男は、英国「ドラゴン・スクール・オックスフォード」のボーディングスクールに8歳〜11歳半、次女はロンドン市内の幼稚園・小学校に2歳〜5歳半まで通い、現在は二人とも日本の私立小学校に通学中、イギリスと日本の両国での名門私立小学校受験を経験され、全て第一志望に合格されたMAYAさんにイギリスと日本の学校生活や教育の違いなどについて聞きました! 日本の私立小学校は、海外から見るとどうなのでしょう? 

Text:
田口まさ美
Tags:

第4回〈前編〉:イギリスでの世界のエリートを育てるための授業内容

<お話を伺った方>
経営者・オンラインコミュニティ「Bon Voyage」主宰 MAYAさん

聞き手:田口まさ美

笑顔の女性二人

〈前編〉英国オックスフォードの名門小学校から、日本の私立小学校を選んだ理由  ← この記事
〈後編〉お受験全勝ママに聞く〝小学校受験を成功に導く母の心得〟5か条  

—— 経営者でありながら、お受験についての講演もされ、また先日親子で参加できるオンラインコミュニティ「Bon Voyage」をスタートさせたMAYAさんをお招きして、2回に分けてお話をお聞きします。初回は、ご長男が経験されたイギリスのボーディングスクールの様子をお伺いしながら、英国教育と日本教育の在り方を比較してみたいと思います。

まず、日本の教育制度が、6・3・3・4年制であるのに対し、イギリスの教育制度は、 6・5・2・3(4)年制。義務教育期間はイギリスの中でもイングランドでは、5〜18歳(2015年に16歳から18歳へ引き上げた)です。この辺りの基本的な違いから、教えてください。

MAYA:イングランドでは、下記のように4歳からレセプションという義務教育の準備クラスが始まります。

〈イングランド〉
4歳 レセプション 読み書き スタートする  

Key stage1(5〜7歳)Year 1-2
Key stage2(8~11歳 )Year3-6
Key stage3(12~14歳)Year7-9
Key stage4(15−16歳)Year 10-11

 

ですから、5歳の時にはある程度読み書きができて、読書できるようになっている子が大半です。日本より少し早いですよね。子供たちの読書量も、アメリカや日本より平均して多いと感じます。学校で読書が大々的に推進されていて「読書することが素晴らしい」という教育なんです。

4歳、5歳くらいから自力で読み始められるように、図書館の本棚にはレベル別に分類されて本が置かれていて、自分の読書レベルに合う本を手に取れるように工夫してあります。これにより、その子に合った読書のステップアップをしていけるのです。日本の図書館ようなジャンル別分類も良いと思うのですが、このレベル別分類も子供が読書能力を上げていくのには、とても良い工夫だと感じていました。

本を数冊持つ子供
 
また、英国ではYear1から「クリエイティブライティング」という宿題が頻繁にあります。これは、つまり「お話づくり」です。私の子供たちの学校では、毎日このクリエイティブライティングの宿題が出ていました。どんなお話でもいいので、想像力を膨らまし、起承転結を考えて、お話を展開させていくのです。

日本でよくある「日記」の宿題とは違って、イギリスでは現実世界の話ではなく、想像上の世界を大切にするんです。こんなところからも、学校が子供の能力の中で、クリエイティブ面を重要視していることを感じます。そして、みんなの前で自分の考えたお話の発表をするのですが、先生もお友達も必ずしっかりと褒めてくれる文化です。

——子供が自由に発想したことを、みんなの前で発表し、周りに拍手喝采を受ける。このような経験を通して、自分のオリジナルな発想や想像力を育んでいくのでしょうね。ファンタジー小説の国、イギリスっぽいです。

MAYA:そうですね。こうしたことを続けると、子供たちはクリエイティブな世界へどっぷり入り込むことができるようになります、3時間ぶっ通しで読書ができたりする集中力がつくんです。「読書」の宿題もよく出ていました。あと、お話の続きを、クラスメイトが順番に想像してみんなで話を続けていく「お話づくりリレー」も授業でよくやっていたと思います。

——「お話づくりリレー」は子供たちも楽しいですよね。クリエイティブなことに価値を置くイギリスでは、アートに対しても高い価値を置いた教育をしているのではないでしょうか。

MAYA:はい、学校でもアートに重きを置いています。絵画の時間数も日本より多いですし、私立のボーディングスクールでは、毎週日曜日にアクティビティがあるのですが、月に一度は週末にミュージカルやオペラ、クラシックコンサートを観に連れ出してくれます。子供の頃から一流のアートに触れて感性を磨くのです。

その際には、服装のTPOを自分で考えてコーディネートし、ネクタイを締めて革靴を磨いていく、トイレは事前に済ませて最後まで静かに座って聴く、などの立ち居振る舞いも同時に学びます。

インタビューを受ける女性

——そうした経験から、“小さな紳士・淑女”と言われる風格も身についていくのでしょうね。そのほか、日本と違う面白い授業はありましたか?

MAYA:英国だけでなく欧米諸国の多くでは、「Drama(演劇)の授業」があります。「全員で、動物になる」などと課題が出されます。ある動物が何を食べるときに、どういう行動をするか?そこに恥じらいなく演じ切ることを求められます。

授業では、「誰が一番良かった?」などと先生が声をかけます。動物の他、男子に王女様の役、女子に王様の役をやって見せて、「どういう怒り方をする?どんな気持ちになる?」などと声をかけたりもします。みんな棒読みではなく、想像力を膨らませながら本気で演じるのです。

ある1つの台詞を、みんなで感情を乗せて全力で読み、表現力を養うこともしますし、一人で大声で歌ってみるなど、下手でもなんでも精一杯やってみて、みんなで褒め合います。これは、人前で話すこと、プレゼン力、インタビューや面接などを受けるときの受け答え方、などの能力育成を意図しています。 

特にエリートたちほど、将来オフィシャルな場で話す機会が多くなるので、その際に魅力的なスピーチができることを重要視しているでしょうね。イギリスらしい教育の1つですよね。

——スピーチの表現力を磨くという授業は、日本ではなかなかないですね。褒め合うというのも、素敵な文化だと思います。英語には褒め言葉がたくさんありますし、外国人の先生は子供がたとえ間違えても、発言したこと自体を大袈裟に褒めてくれますよね。

MAYA:みんなで“褒める”と言えば、「Show & Tell」というのもあります。家から何か好きなものを持って来て、みんなの前に立って紹介するんです。毎朝、朝会の5分間などで習慣的に行います。 写真、人形、道端で摘んだ花、落書きしたメモ、本当になんでもいいんです! 

クラスのみんなに伝えたいことを5分以内で伝え、先生も友達もそれを必ず「褒める」。そうすると、子供たちは人前で緊張せずに話せるようになっていきます。「自分が大好きなものを否定されない」という経験を積めることが素敵ですよね。

人種・ジェンダー、様々な多様性を積極的に受け入れる

——日本では、小学校に限らず教師の長時間労働が問題になっていますが、イギリスではどうですか?

イギリスでは4歳のスタートから担任制ではなく科目制になり、その科目のスペシャリストが教えてくれます。教師はあくまで教師の仕事に徹している感じです。

あと日本と違うなと思うのは、イギリスの多くの私立学校では、ダイバーシティアジャストメントと言って一定数他民族やLGBTQの子供を入れるべきという規律があります。この多様性を受け入れる意識も高いです。私もアジア人として差別を受けたことは一度もありませんでした。むしろ、娘の学校では日本人が一人だったので、娘は人気者!各ご家庭で「仲良くなって、多様性を吸収して来なさい」という教育をされるようで、ホームパーティにもよくお招きいただきました。

また、生徒だけでなく保護者たちもダイバーシティなので、娘のお友達で、男性同士のご両親から「うちの娘の髪の毛の編み方教えて〜!」などと頼まれたこともあります!(笑) そんな環境で、パパ同士、ママ同士が仲良く手を繋いでいる様子を、子供たちは自然な風景として眺めて育つんです。

学校からは、「仮にある生徒から性的なカミングアウトがされた場合に、それに対して悪く言ったりした場合には厳重な処罰がある」という内容の、かなり厳しめの手紙が家庭に届きます。多様性を学ぶことは、認め合う優しさであり、それだけでなく子供たちが将来広い世界に出て活躍するためにも非常に重要な要素だということですよね。

——素晴らしいですね。他民族が暮らすヨーロッパでは、諸国間の争いが絶えない歴史的背景がありますし、近隣諸国との経済的な繋がりも深い土地柄もあります。ゆえにダイバーシティという価値観が身近で、それはアッパークラスほど進んでいますよね。

日本では、「多様性=マイノリティを受け入れてあげよう」というような福祉的なイメージにとられることもありますが、「自分と立場の違う人々と手を繋ぐことができる力をつけることは、自分にとってプラスになる」というポジティブな前提を感じます。単一民族国家の日本人にも今後は絶対に必要な力ですし、学びたいですね。

MAYA:保護者会も面白くて、私立学校ならではだとは思いますが、夜にお酒飲みながら、学校の一部や時には美術館を貸し切って、シャンパンを片手に絵画を眺めながら先生たちや保護者さんたちと交流するんです!タキシードを着た人がピンチョスを持って来てくれる立食パーティスタイルで、校長先生もいらっしゃって自由に話しかけたり。先生と保護者の距離は近いですね。

——とても楽しそう!日本では、学校の先生がお酒を飲む姿を保護者に見せるイメージはありませんね。先生が、ありのままの“一人の人間”として保護者にも子供にも相対してくれるのは、海外の良さだと思います。日本の先生方も、本当はそうありたいのかもしれませんね。

ところで、イングランドの私立学校の場合、気になる「学費」ですが、日本よりもかなり高いと聞きます。大体どのくらいなのでしょう?

MAYA:学校により差はあると思いますが、一般的な感じですと、おおよそ日本円にして幼稚園で年間で200万円、小学校も年間200万円、ボーディング(寄宿学校)ですと寮費込みで年間500万円、合宿があればプラス50万円くらいでしょうか。今は円安なので、レートにより変わりますが。ボーディングは8歳からスタートで18歳までです。

ボーディングの費用は高いですが、24時間子供と先生が一緒に共同生活をするので、勉強のみならず生活や身の回りのことを自分でやらなければなりません。ですから、究極の自立を学びますし、世界各国からくる子供たちとのコミュニティ作りにもなるという価値もあります。ですから、今なおイギリスのボーディングスクールは世界各国から人気があるのでしょうね。

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