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EDUCATION 教育現場より

2023.08.14

【お受験ママの相談室vol.13】どうしたら算数が得意になれる?データから読み解く理系脳の伸ばし方

 

教育編集者・田口まさ美による教育者との対談連載。子供の進路に悩む母親向けにお送りしています。第13回目の今回は、「うちの子は算数が苦手なので、どうしたらいい?」「算数が得意だからもっと伸ばしてあげたい!」などと思われている保護者必見! なにかと話題に上りやすい算数についての学習法や、算数好きの子供を育てるご家庭でできる取り組みをご紹介します。中国の最先端の教育事情も大変興味深いので、ぜひご一読を!

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第13回:「算数が苦手」を脱却するコツは?

〈お話を伺った方〉
RISU Japan株式会社 代表取締役 今木智隆さん

聞き手・原稿:教育エディター 田口まさ美
▶︎Instagram: @masami_taguchi_edu

子どもがタブレットを操作している様子

今回のテーマは「理系脳」をどう育てるか?「RISU算数」という算数タブレット企業の代表取締役 今木智隆さんに、様々な角度からお話を伺いました。記事の最後に、「子供を算数好きにする」今木さんの父親としての実体験に基づいた、とっておきのテクニックもご紹介します。中国の最新教育事情も大変刺激的なので、ご一読を。

田口:はじめに、御社の教材、RISU算数のタブレット誕生経緯を教えてください。

今木:私は以前、コンサルファームに勤めていまして、複数の教育系企業を担当していたのです。当然企業からは、市場拡大を目指して、マーケティング依頼がたくさんきていました。ですが私は、集客を伸ばすためのマーケティングだけでなく、子供たちの学業の伸び率や、成績結果に関してのデータ分析やマーケティングを率先して行ったら、どうなるんだろう?と思ったんです。そこで、我が社では独自にデータ分析をして、確実に「成績を伸ばせる方法」を見つけてきました。

田口:算数・数学というと、私自身もそうですが、なんとなく苦手意識のあるお子様も多いような。悩んでいる保護者も少なくないと思います。

今木:算数は、完全に積み上げ式の教科です。授業で分からないことが1点でもあると、次の授業ではもっと分からなくなってしまいます。この雪だるま式にわからないことが膨らむ特性が、「苦手」になってしまうお子様が多い一番の原因ではないかと思っています。

他の教科のように、「このジャンルは弱いけどここは強い」みたいなことがなく、全てが繋がっているんですよね。そこに着目して、私たちのタブレット教材では、最初に実力テストを行い、その子に合ったところから自分のペースで、スモールステップで進んでいける形をとっています。自分のペースで分からない、できないところを確実に全て潰しながら進んでいけるのです。これが算数を苦手にしない最大のコツとなります。無学年制度で、学年ごとの単元にとらわれずに進んでいけるシステムになっていまして、実際は7割ほどの生徒さんが先取り学習をしています。

タブレットの画面▲RISU算数のタブレットとペン

簡単な問題からスタートして、自分で説明を読んで、やってみる。わからないことがあったり、何度も躓く場合は、それがデータで確認され、チューターによる動画での解説が届く、という仕組みです。それでも解けない場合や、保護者よりご連絡(メール)をいただいた場合は、急ぎ解説動画を作成してお送りするだけでなく、保護者向けにも解説をお送りします。

これによって、子供たちは先生に教えられるのではなく、自分で解決していく力をつけていきます。毎日15分など決めてやっている生徒さんが多く、中学受験に相性が良いと思います。また、慶應幼稚舎など小学校を受験されるお子様にも大変好評をいただいてるんですよ。

田口:なぜ算数という科目に特化したのですか?

今木:私は京都大学の物理工学科を出ているので、おそらく自分の頭の中が理系、というのもありますが(笑)、「算数は、他の科目よりも効率的に成績が伸ばしやすい」とも思っているんです。英語は慣れ親しんで使うことで覚えていく科目ですよね。「100時間やるか・やらないか?」という、シンプルに費やす時間数が成果となって現れやすい科目です。また、社会などは直前に丸暗記すれば、なんとかなったりします。

算数は、それと違って、積み上げ式です。一桁の計算ができない子が、二桁の計算ができるようにはなりません。なので、苦手の全部を潰さなければならないのです。これが、数学嫌いなお子さんと、好きなお子さんの差を大きくしてしまいます。わからなくなると、嫌いになる。嫌いなので、やらない。そして、どんどんわからなくなる。という、悪循環が生まれます。

逆に考えますと、つまずきを全て潰せば、成績が上がるんです。ここに注目しました。大事なのは、自分が何ができていないかを可視化して、コツコツと潰していくことなんです。

田口:なるほど〜!自分のペースでコツコツと、でも確実に、がいいんですね。

算数好きはメリットばかり!女の子こそ理系はおすすめ

今木智隆さん 正面

田口:算数が得意だと、どんな良いことがあると思われますか?

今木:大人になっても、お金の計算など算数は身近にあるものなので、基本的な数学的知識は生きていくのに絶対に必要ですよね。また、社会に出て働く際には、データの集計や分析などでも役に立ちます。そして、理系人材は高収入であることが多いので、年収にも差がつきやすく、あるデータでは文系と理系では年収に約40万の差があるとも言われています(※参考文献)。文系と比較しても職業選択の幅が広いことが強みです。

特に、女性にとっては、理系の人数が少ないので就職で有利です。それだけでなく、味覚や嗅覚など女性の強みを活かせる仕事も実は多いのです。ですから、理系の女性は、食品や化粧品業界では引く手あまたです。それゆえ、人生設計しやすいというメリットも生まれ、さらに、企業内の研究は長期間継続して行うものなので、研究職の人材は、例えば出産で抜けても、他の人材にとって代わられにくく、職場復帰がしやすいという面もあります。

最終的に選ぶのは、理系でも文系でもよいと思いますが、算数が得意であることで選択の幅が広がることは、大きなメリットですよね。子供が成長して、目指すものができた時に、諦めなくてはいけないことが生じないよう、可能性を広げてあげられれば素晴らしいと思います。

※参考:独立行政法人経済産業研究所「理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果-」

田口:おっしゃる通り、女性が数学が苦手というイメージを抱きがちですが、現実には大差ないのですよね。昔見たノンフィクション小説をもとにした映画の「ドリーム(邦題)」で黒人の女性科学者たちがアポロ計画の時にNASAのエンジニア活躍したことが描かれていたのも印象的でした。女性脳と男性脳と言われますが、実際にはほとんど男女の脳の形に差がないというのは、近年脳科学界でも明かされていることで、保護者が偏見を持たないことは重要ですね。

今木:はい。データ上で分析しても男女差はほとんど出ないのが現実です。保護者が「女子は文系でいいや」という固定概念を持っていると、女の子が数学を諦めてしまいます。それだと、将来の選択肢が半分になってしまいますよね。もったいないなと思います。

田口:私ももっとがんばればよかったな(笑)。海外の教育にもお詳しいとのことですが、例えばアメリカの教育はどう見られていますか?

今木:現在アメリカでは教育の格差が大きくなっています。ヒスパニック系の人口が増えているのですが、経済的格差が広がりから、彼らの多くが教育リテラシーの低い環境に置かれています。その結果、掛け算割り算などができない子供たちも多くいるのが現状です。

アメリカでは、成績が良い学校には、国から補助金が出るので、良い学校と悪い学校の差がさらに生まれる結果にもなっています。そういった状況を見ると、日本は、公教育の平均的なレベルが高いのではと感じます。

田口:補助金が格差を生む結果にもつながり得る、という視点は抜けていました。日本の公教育は、比較的ボトムアップを重視しています。それは日本の良い点でもありますね。逆に飛び抜けたトップの才能を伸ばす教育システムが弱いことが課題とされ、文部科学省ではギフテッド教育が近年謳われています。そういったお話をお聞きすると、どちらも等しく大切なのだと改めて実感します。

この国の公教育が福祉的な意味合いを持ち、国民が等しく教育を受けられる権利が原則としてあることが、この日本の治安の良さに繋がっていることを、決して忘れてはならないですね。

今木:世界的に見ても、夜に女性が一人で歩いて安全な国なんてほとんどないですからね。とても恵まれていると言えます。ただ少子高齢化で日本人の人口が減るので、国家としての勢いがなくなるのは事実です。日本で今後、突出した企業が出てくるか?突出した人物が出てくるか?と言うと、難しいかもしれません。ビル・ゲイツのような人物を産むアメリカは確かにすごいと思います。

とはいえ、3人に1人の食も行き届いていない状況を、良しとするか?となると難しいですよね。また、例えば、両親がGoogleのマネージャーのような超富裕層のご家庭でも、栄養学の知識がなく、非常に偏った食生活をしているような家庭もあったり、と、海外は教育に偏りがある印象を個人的には持っています。日本では、多くの人に基礎的な栄養学の知識があったりと、比較的一般教養が普及しています。

田口:教育というと、英語力や、ITスキル、など特別なスキルに目を向けがちですが、そういった一般教養や生きるための知恵も、価値ある教育財産ですよね。

中国では、学習もお習い事も全て無料で学校で!

田口:一方、最近の中国での教育はどうですか?

今木:中国は、広すぎてどこを切り取るかで全然違うのですが、都市部で言いますと以前は「学歴がすべて」というような学歴偏重の風潮があり、受験戦争が過熱し、また低年齢化していました。幼少時から子供の将来を見据えて、親は金銭的な負担を強いられていたため、少子化対策を廃止しても、少子化に歯止めがきかない状況だったのです。一方、子供は学校、塾、宿題や習い事に追われて疲弊していました。

そのような動きに歯止めをかけるため、政府が2021年、学習塾を禁止したり、宿題を年齢によって禁止したり、その量を制限したのです。この出来事は大きかったと思います。これにより大手塾会社や私立学校もほとんど全て無くなったのです。

共働き家庭が多い中国では、今も祖父母が孫の面倒を見るのが普通です。ただ、宿題などを祖父母が見ることは難しいですよね。そこで、これまでは学校が終わった後、子供たちは塾や日本で言うところの学童に行っていました(日本の学童とは違って、おやつや遊びの時間などのアクティビティはなく、宿題、勉強を行うのみ)。

そういった状況を解決するため、今は小学校の終了時間がおよそ18時と遅くなりました。その分、その時間内で、宿題も学校で終わらせるのです。もちろん分からないことがあればその場で先生が教えてくれます。また、学習だけでなく、部活のように学校内で様々なお習い事を導入してくれるので、子供たちはそれらに無料で参加できます。

保護者からすると、学費の高い私立学校が廃止されて学費がほぼ無料になり、今まで家に帰って見なくてはいけなかった宿題もなくなり、さらに習い事も学校で無料でできるようになった。まさに、良いことずくめなんです!

また、国家を挙げてAIを使って教育をリードするという方針に舵を切っていて、AI機能がついたデスクスタンドのような機器(下写真)を使って、子供たちの手元をスキャンして採点し、勉強を進めたりもします。

AI機能がついたデスクスタンドのような機器 左側は本体を開いた様子、右側は閉じた様子▲見た目は普通のスタンドのように見えるが、実は子供たちの手元をスキャンし採点する機器

加えて、子供の視力低下を防ぎ平均視力を保つために、「スマホのゲームを週末に何時間やったらダメ」のような規制があります。中国ではGoogleを使っていないことはご存知の方も多いと思いますが、子供のゲームへの課金も同様に禁じられています。知育エンタメも、国の許可したコンテンツ以外は使ってはいけません。代わりに、中国独自のデバイスがあって、ユニークなコンテンツが開発されているんです。

田口:国家を挙げてのダイナミックな取り組み、すごいですね!この結果が10年後、20年後、どう出てくるのか、大変興味深いです。教育について、個人的に思うことはありますか?

今木:子供って本来、いろんな興味を持つものだと思いますし、持てるといいなと思っています。なので、個人的には、大学受験までの準備は、なるべく短い時間で終わらせて、できるだけ自分のやりたいこと、趣味や部活や課外活動に取り組めればいいのではというのが私の意見です。なので、算数も効率よく学べるといいなと思うんですね。

子供たちの世界への好奇心を育むには、生きた体験が必要

今木:学校外の時間に育まれるものは、とても大事ですよね。例えば、サイエンスへの好奇心なども、自然体験から生まれると思います。僕は田舎出身なので特に感じるのですが、都会には人口が集中していて、色々あるけど視野が狭い空間になりますよね。縦に伸びて陽の光がなくなり、夜にオリオン座が見えない。昔は、小学校の校庭に鶏がいたりして生物に触れることもできましたが、今は綺麗な人工芝になっていたりします。

僕の子供が田んぼを見て「あれ、何?」と聞いたのは衝撃でした。田舎では当たり前のようにある、自然科学の体験が失われるのです。逆に、田舎は田舎で財源がなく設備が廃れています。星空をもっと深く知るための、天文台や博物館に行き、体験を知識に結びつけるような経験は、なかなかできません。パソコンとかiPadの中の情報は、本当の意味での刺激ではありませんよね。本当の意味で脳を刺激する体験を、どう提供していくか。ここは親として工夫が必要です。

世界への疑問を、どう育むか。山に登るでもいいし、お城に行くでもいいので。そういった実体験を子供にさせていくことです。また、不便な経験、苦労することも力になりますよね。日本の高度成長にしても、戦後の焼け野原を見た人が、日本を復興させたのだと思います。そういったサバイバル的な強さを育む経験は、現代の子供に足りていないなと感じます。そこをどう補うかは、親としての課題ですね。

田口:本当にそう思います。本日はありがとうございました!

家庭でできる「子供を算数好きにする」今木さんご推薦とっておきの技

田口:最後に、今木さんからとても参考になる子供が算数付きになる日常の中でできる工夫をお伺いしたのでご紹介します!どれも、ご家庭で無理なくできて、とっても効果の高いアイディアです。

今木:算数は、実は身近に溢れています。実際の体験の中で学んだ方が、感覚として身につきますので、勉強として学ぶ際にも理解が進みやすいと思います。ぜひ試してみてください。

未就学児さんへ

■数字や単位を意識させるような声がけを行う
例えば、階段の階段を登る時、降りる時、「1、2、3」と一緒に数えてみると、子供は体感でどんどん数が大きくなっていく(小さくなっていく)ことを理解できます。
また、物を数える際には単位をつけていると、自然と単位が身につきます。「猫が1匹、2匹・・」

■天気予報でマイナスの概念
気温で「今日はマイナス2度だから昨日より寒いね」などと言えば、小さい子でもマイナスは0よりも小さいのだとなんとなくわかります。うちの子がそうでした。

■アナログ時計を置いて、時計を覚える
アナログ時計で「針が2に来たら出かけよう」「さっき12だったのが、6にきたから30分だね」などと声がけするのも効果的です。時計は10進法だけではないので、小学1年で理解するには意外と難しいもの。詳細まで理解できなくても、感覚だけ身につけておけば勉強する際に楽です。

■好きなことで数の感覚を養う
例えば電車が好きな子には、電車にまつわることで色々な算数に触れられます。「何分後に電車が到着するか?」、「1本あとの電車は今どの駅にいるかな?」などと問いを与えて、計算を促すなど。切符を買うのも現金を使うと、いくらかかったか?で距離との関係もなんとなく掴んでいきます。また、速さも「時速90kmだよ」というような具体的な数字の声がけをすることで、理解できなくても速い、遅いという感覚が身についてきます。

小学生低学年さんへ

■おつかいで「位」の概念を理解
お金は、つまずきやすい「位」の概念を理解するのに非常に最適な教材です。電子マネーが主流になりつつあるが、必ず現金を使うとよいです。100円を10枚集めたら1000円札に交換すれば、100が10個で1000とわかる。「500円で何が買えるのかな?」と概算すれば、おおよその数や四捨五入が理解できますし、消費税の計算も有効です。

■料理のシーンで単位に強くなる
お料理でも、計量することで単位や“かさ”に強くなれます。特にお菓子だときちんと計量しないと失敗します。レシピを見ながら、2人分のレシピを3人分にしたり、4人分を3人分にしたり、分数や小数の計算にも繋がります。野菜を切った時は立体の断面図を知れます。子供が料理をしない場合でも、例えば味噌汁や煮物に親がわざと色々な形に切って入れても面白い。

■工作で立体図形の感覚を
工作も、立体図形の感覚が身につきます。木工などは厚みも考慮しなくてはいけません。
折り紙は、パーツがいくつでこの立体ができるなどの立体感覚を養うことができます。

■お風呂でLとmlを学ぶ
ペットボトルや牛乳パックなどを持ち込んでお湯を入れて移し替えてみると、1Lの方が500mlよりも多い、と実感できます。

 

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プロフィール

RISU Japan株式会社の代表取締役 今木智隆

京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。ユーザー行動調査・デジタルマーケティングのbeBitにて国内コンサルティング統括責任者を経験後、2014年、RISU Japan株式会社を設立。

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Interview& Writing

田口まさ美

〈教育エディター〉
小学館で教育・ファッション・ビューティ関連の編集に20年以上携わり独立。現在Creative director、Brand producerとして活躍する傍ら教育編集者として本連載を担う。私立中学校に通う一人娘の母。Starflower inc.代表。▶︎Instagram: @masami_taguchi_edu

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