正解のない時代に、正解の無い子育てをする
このDomani連載「お受験ママの相談室」ですが、タイトル通りお受験、つまり小学校受験に取り組むお母様に向けてお送りする連載です。ですが、“絶対に小学校受験が良い”とか、“何がなんでも私立”という立場で、お伝えしているわけではありません。
近年(都心では特に)小・中学校の受験者数は年々増えており、子供の進路に悩む保護者も増えています。世の中の変化に伴い教育のあり方も変化する今、「小学校受験・中学校受験ってどんなものなんだろう?」はたまた「今の日本の教育内容で本当によいのだろうか?」と悩まれるご家庭は多いと思います。
このような疑問に自分なりの解を持たず、また確かな知識や、新しい情報もよく知らず、ただなんとなく周りの雰囲気に流されてしまったり、自身の過去の体験に基づいて判断してしまう方も少なくないのではないでしょうか。
世の中はダイナミックに変わり続けています。親世代が育った時代とは全く変わってしまいました。また、今の日本の教育環境は、世界の先進国から見ると、かなり特殊な環境に置かれていると言えます。加えて子供は親とは違う別の人格です。
それなのに、長いものに巻かれてみたり、過去の常識に囚われたり、自らの昔の体験から判断したりすることは、得策とは言えません。では何を頼りにしたらよいのでしょう?
何もかもが手探りで迷える親たちが、幼い子供の本当の幸せにつながる進路の舵取りをしたり、納得感のある受験を選択したりするためには、どうしたらよいのでしょう。
それには、まず保護者が幸福感と教育観を確立することだと私は思うのです。
いち編集者として、いち母親として
私が教育の世界を本格的に知ったのは、娘が小学校に入った頃です。それは、出版社で女性向けファッション誌の編集者だった私が、一転して教育編集部(初等教育教員向けの編集部)に配属されたことがきっかけです。
それまでは、まさか自分が教育の編集に携わるとは、夢にも思っていませんでしたが、配属先が決まってから、母が保育士免許を持っており自分も中高生の頃から実家の本棚にずらっと並んだシュタイナー教育、モンテッソーリ教育などの幼児教育書を読んでいたことを思い出しました。
そんな古い記憶を辿りながら、また新たに仕事を通して初等教育の知識を入れ直しました。たくさんの教育者・学者・識者の方々に取材させていただき、本も読みました。そして、少しずつ教育の知識を蓄えながら、いち母親として思ったことは、「これって、もう少し早くに知っておきたかったかも」ということでした。
忙しく働きながら、あっという間に過ぎてしまった我が子の幼少期に、もう少しだけ子供の心の育ちについてなどの知識と理解があれば、親として違った対応ができたのかな?と思うことが多々あったのです。
また、ネット上にはフラットな立場での専門的な情報が足りなすぎる、とも思いました。信頼できる著者の書籍を読むのならよいのですが、身近に目にするスマホ上には、企業本意や個人の偏った情報などに溢れていて、私自身も、Google検索やインスタ検索の中から、確かな情報をピックアップするのは至難の業です。
そんな自身の経験から、この連載では、教育編集者・母親の両方を経験した私のフィルターを通して、今保護者が知っていたらよいのでは?と思う知識や情報のみをお届けできたらと思っています。
ただ、良質な知識や理論であっても“鵜呑み”してほしいわけではありません。
今は、正解がない時代と言われます。変化が早く多様性が担保された社会では、家庭教育についても何か1つの考え方や誰か一人の成功例を盲信して、まるっと真似るのではなく、様々な知識を得て、たくさん自分なりに考え、自分の価値観で取捨選択することが大事です。
そういった行為が、自分(ご家庭)なりの正解、つまり教育観と幸福感にたどり着くことに役立つだろうと思っています。