世界最高峰のドリームスクール設立の背景
<お話を伺った方>
RUGBY SCHOOL Thailand 最高顧問・実業家 立澤賢一さん
聞き手・原稿:教育エディター 田口まさ美
▶︎Instagram:@masami_taguchi_edu
田口:ラグビースクールは英国のザ・ナインと言われる名門校の一つですが、そのタイ校(タイ南部パタヤ近く)の説明会が、東京・大阪で行われ、大盛況。どちらも告知翌日に定員500名程が埋まったとか。一体どんなところが魅力的なのでしょうか?
立澤:はい。わが校が他校と大きく違っている第一の理由は、この学校のオーナーご夫妻にあります。ご主人はタイ人の前・文部大臣、奥様は元・バンコク副知事。ご夫婦ともに国家トップクラスの富裕層で、国際的なエリートであり、その上スーパー教育オタクなのです(笑)。昨今日本含めアジアにできている英国名門スクールはオーナーが中国の投資会社という学校も多いのですが、この学校は母国タイ人の主要なポジションにいる人物がオーナーで、自国の国民の教育支援のために、ビジネスとしてではなく、誠心誠意「夢の学校」を作るという目的で設立されています。
ご夫婦は以前から500エーカー(約61万坪)の土地を使い、私立学校を運営していらっしゃったのですが、「ドリームスクールを作りたい」との思いが高じて、ついにはイギリスのザ・ナイン※であるRugby School(ラグビースクール)を持ち込んだという経緯です。
※イギリスにある名門パブリックスクールの中でも厳密な意味でのトップ9校について、このような名称で呼ぶ。オックスフォードやケンブリッジへの進学者を多数輩出する。
ですから、オーナーご夫婦自ら英国本校と熱心にコンタクトを取り、優秀な教師を集め、常日頃学校のことばかり考えて過ごしています。二人と一緒に過ごしていると、本当に朝から晩まで教育の話で、さすがの私も疲れてしまうほど(笑)! 学校のハードウェアは、当然オーナーが全て用意をしており、ソフトウェアを担う校長も、ケンブリッジ大学修士を3つも取得しているとても優秀な方です。現場の教師たちは、敷地内に住み込みで働け、給与も申し分なく、教師の子供は無償でこの学校に入学できるという待遇の良さ。教師の労働条件の良さは、必然的に志ある質の高い教師の担保に繋がっています。
生徒は2歳から18歳まで受け入れがあり、ボーディングは8歳から。国籍比率は、タイ43%、イギリス17%、中国11%、韓国7%、日本人は現在3%ほどです。この夏には、新たに5〜6人入学する予定です。昨年は慶應義塾大学湘南藤沢高等部(SFC)で数学が学年トップだった生徒が転入してきましたが、彼は「この学校では僕より(数学の学力が)上が2人いた」と、むしろ嬉しそうに語っていました。ちなみに、ラグビースクール・タイランドは日本の千葉県柏市にできているラグビースクール・ジャパンとは全く異なる運営でして、別の学校です。
▲どこまでも大きくハイテクな体育館
▲ここまでかと広大なプール!
▲校舎は最新の設備が完備
失敗を全力でサポートする教育
田口:教育内容には、どんな独自性がありますか?
立澤:生徒たちは、いわゆるオックスブリッジや、アメリカのアイビー・リーグへの入学目標がデフォルトのようになっていますが、それは必ずしも最終的な目的ではなく、手段。我が校では、その先につながる人材育成を見据えています。
このAIの進化が凄まじいこの時代に、AIを使いこなすだけでなく、本気でAIに勝つ人材とはどんなことか。「人間にしかできないことは何か?」「人格者とは一体どんな人か?」そんなことを念頭に置いています。人格者という意味の中には、勉強・スポーツ・音楽などができるだけでなく、人間としての優しさ、愛も当然ながら含まれています。学力は、人間の能力の1つですが、全てではありませんよね。愛や優しさ、思いやりの心を育むことも大切にしています。
今までの時代の教育は、アダプターの育成でした。組織や社会において、優秀な調整者の育成です。でも、これからの時代には、「クリエイター」の育成が必要です。クリエイターにとって一番大切なことは、新しいことにチャレンジする心。
ですから、我が校が特に大切に行なっているのは、チャレンジ精神を育む教育と言えるかもしれません。もし生徒が失敗したら、教師は徹底的に救います。「自分のリミッターの先に行った時、たとえ転んでも大丈夫。手助けしてもらえる」と生徒が感じられる環境を用意して、常に生徒たちの挑戦する心を育みます。完全に一人一人に寄り添う教育スタイルです。
▲日本人生徒たちと立澤氏
当然、莫大なお金がかかります。でも、教育をお金儲けでやってはいけないんですよね。
私学の付属校の場合は下からの内部生より、途中で入ってきた外部の生徒の方が優秀なことは日本でもよくありますよね。でもこの学校では、下からの生徒が優秀です。2歳から入っている子は、3〜4ヶ国語話せるのが普通になっていたりしますので。
教育メソッドは、イギリスの学校なので「GCSE」や「A- Level」が基本です。高校生になると、まず「何を学びたいか」を決めて、それに沿って「行きたい国」を決めて、例えばそれが米国であれば「SAT」を学んだりと個別に対策をとっていきます。
また、ボーディングスクールと言うと、外界の情報がシャットダウンされて孤立してしまうのではと心配される方もいらっしゃいますが、この学校は街が近くて、週末には街で遊べます。共学であることも、今の時代には良さですよね。宿題は、家に持ち帰ってはいけないルールになっています。
大切なのはグローバルではなくインターナショナル教育
田口:気になる学費は?
立澤:学費は、2歳で200万円〜高校生3年生で350万円ほどです。日本のインターとさほど変わらないですよね。ですから、地に足がついたご家庭のお子様が通えます。この質に対してこの誠実な価格設定にもオーナーの本気度が見られますよ。利益目的で作っていないからこそできることです。
東京のインターナショナルスクールは、今97校以上あります。ですが、校長・先生の質、授業の質、理念などは、実にさまざまです。きちんと中身を調べて選択しないと後々後悔してしまうこともあると思います。
1989年には、世界のトップ企業50社のなかで32社が日本企業が占めていました。2023年現在、日本企業は1社も入っていません。昨年はトヨタが入っていましたが、今年は落ちてしまいました。こうした背景に、ただ焦って、闇雲にグローバル人材を目指せというのは少々違います。
昨今よく使われる「グローバル」というこの言葉。それは地球は1つという価値観です。世界の富裕層や世界の大企業にとって優位な、さらに富を一極集中する考え方です。でも本当に大切なのは「インターナショナル」であることではありませんか? お互いの文化・言語・慣習などを大切にすることが大事ですよね。単純にグローバルになればよいわけではなく、自分と相手の幸せを双方が考えられる賢い教育こそ、本当に今必要な教育だと思います。
田口:ありがとうございました。
(田口まさ美:あとがき)
国や会社に頼らず自立して生きていける教育を求めて海外スクールを目指す流れは今後も強まりそうですが、グローバルではなくインターナショナルであることが大切という視点は、まさに重要なポイントです。そのような視点で学び身につけた能力を、これからの社会に愛を持って還元していける人材に育成するために、ただ単に海外校のブランドネームに踊らされるのではなく、こうした高い教育理念のある学校を選べたら素晴らしいですね。
また、現場で働く先生が幸せな学校は、子供たちも幸せ。ここも、学校を選ぶときに間違いなく大切なポイントです。
プロフィール
立澤 賢一
〈RUGBY SCHOOL Thailand最高顧問・実業家〉
HSBC証券会社前代表取締役社長。住友銀行、メリルリンチなどを経て、現在は投資家、企業経営者、コンサルタント、書道師範、そしてプロゴルファーでもある。全国で講演多数。
DMMサロン『立澤賢一・一流の流儀』やYouTube・インスタグラムで定期的に無料ライブを開催している。
Interview& Writing
田口まさ美
〈教育エディター〉
小学館で教育・ファッション・ビューティ関連の編集に20年以上携わり独立。現在Creative director、Brand producerとして活躍する傍ら教育編集者として本連載を担う。私立中学校に通う一人娘の母。Starflower inc.代表。▶︎Instagram: @masami_taguchi_edu
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