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LIFESTYLE インタビュー

2022.12.13

【宝塚歌劇団OG連載/天寿光希さん】綾 凰華さんからの同組先輩後輩バトン

退団後に星組公演をご覧になられたそうですね。

天寿:はい、9月に全国ツアーとバウを。全国ツアー公演の『モンテ・クリスト伯』はただただ感動して大号泣しました。みんなが舞台からめいっぱい想いを伝えようとする一所懸命な姿を見て、心が震え涙は止まらず…、お客さまもこの想いを体感してくださっているのだろうと思うと、人を感動させることってこんなに尊いことなんだと改めて感じましたね。宝塚歌劇っていい空間だな、と思いながら帰りました。

演じる側のものすごい熱量になんとか応えたくて、客席でめちゃくちゃ拍手したりリアクションを返したり、なんとか全身で喜びを表してみたけれど伝わったかな?(笑) タカラヅカって、舞台と客席のキャッチボールが熱いですよね。そこが好き。

その気持ち、とてもよくわかります(笑)。バウホール公演はいかがでしたか?

天寿:極美(慎、きわみ・しん さん)主演の『ベアタ・ベアトリクス』。私は全身全霊でエールを送りました。客席にいて動けないけど(笑)、「がんばれー!!!!」って。若手メインでひとつの作品を作っていることに感動しました。みんながもう次に進んでいることを目の当たりにして、私も元気をもらいましたね。下級生は本当にかわいく、上級生の方は存在だけでありがたくて、もう家族。

今回は演出の熊倉飛鳥先生のデビューでもありました。座付き作家の先生やスタッフのみなさんもタカラヅカで育っていくじゃないですか。それをみんなで応援して、次はどんな作品を作っていかれるんだろうとワクワクして。その過程もとても好きなんです。

天寿光希さんと秋田犬

演出家の先生方も、まずはバウホールでデビューですもんね。

天寿:そう、バウでデビューして、経験を積んで大劇場公演デビュー。そのデビューに携われるのは役者冥利に尽きると思うんですよね。ひとりの演出家人生に関わってきますから。演出家だけでなく音楽、美術、衣装、照明…など見えないところでもたくさんの方が動いていて、みんなで総力をあげて作品を高めていくことがうれしい。「いいよね、この世界」と思います。

そしてそして先日! 念願の星組大劇場公演(『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~/JAGUAR BEAT-ジャガービート-』)を観劇させていただきました。礼 真琴のバースデー公演というとてもスペシャルな回を客席からお祝いさせていただいて、楽しくて幸せすぎて、大号泣しました(笑)。組全体で舞台を通して礼 真琴をお祝いしているその空間に、お客さまがアツい、本当にアツすぎる拍手で舞台を作り、盛り上げてくださってもう大興奮! 星組生ひとりひとりのまぶしい笑顔を見ていたら涙が止まらなくなりましたね。一生忘れられない、言葉にならない感動をいただいた素敵な舞台でした。

宙組の『HiGH&LOW』も観劇されたとのことで、感想を教えてください。

天寿:めっちゃ楽しかったです。大拍手して帰ってきました。真風(涼帆、まかぜ・すずほ、宙組トップスター)さんがカッコいいのはもちろんで、あのハイローを舞台化するってどんなふうにやるんだろうと思っていたらなんともすごくて! 大階段をいい意味で贅沢に使っていたり、男役さんが原作に寄せていたり。役の当て方もぴったりで、(演出の)野口(幸作)先生は素晴らしいなぁと思いました。娘役さんもかわいくて、キュンキュンがいっぱいありました。はい、ひとりのファンです!(笑)

今後の星組へエールをお願いします。

天寿:みんなで力を合わせて幕を開けて、そして一日でも舞台に立てる日が続いたらそれでいい。ただそれだけを願っています。もうそのまま、元気いっぱいに舞台で暴れまわって、さらに個性の大渋滞で大劇場の舞台に収まりきらないオンリーワンのひとりひとりを目指して、日々素晴らしい舞台をお届けしてください。

同期の方々には厳しいと言われることが多かったと思いますが、今はとても温和な印象です。

天寿:サバサバというか、はっきりしている性格は変わっていないと思うんです。温和に見えているのは、年齢とともにそうなってきたのかなと。音楽学校では委員をやっていたため、自分がまとめなきゃという使命感でしたね。地方から出てきて秋田弁で話しているのを根気よく聞いてくれた同期たちには、特別な想いがあります。

天寿光希さんタテ

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これからの道についてお聞かせください。

天寿:行動というより、「こんな心持ちで生きていきたい」という気持ちを大事にしています。生涯を閉じる時も「楽しかった」と言いたい。まだ人生の途中なので、ご縁を大切にしつつ、この旅路を自由気ままに楽しむ生き方をしたいですね。

「これから何をしていきたいですか?」と聞いてくださることに、答えが決めきれなくて。ひとつに絞れない状態なんです。今は見聞を広めつつ、頑張ってきた自分を愛でつつ、自分の芯を強化していきたい。新たな人と出会い、たくさんのいろいろなものを吸収し尽くしてその日を終える…。時代に必要なものを学びつつ、今まで大切に培ってきた感性の強度も強めていくという、両極端なことを同時に磨いている日々です。

現役時代と心持ちはまったく違いますか?

天寿:タカラヅカの世界は、ありがたいことなのですがいただくものが決まっています。その中で、自分をどう最大限に生かしていくかということに心を砕いてきました。それが次、また次と短いスパンでやってくる。その生活を長期間続けてきたためか、本名の自分が疎かになっていた時期がありました。これはいけないと思い、本名である時間と役として生きる時間を、1日の終わりに必ずオフすることを心がけました。私の本名は「ちひろ」というのですが、土台にきちんと「ちひろ」の考えがないと、役を生きている時もブレてしまうことをだんだん学んできたんですよね。

でも『ロミオとジュリエット』など、世界観にグッと入り込まないといけない作品の場合は、本名の自分を一度なくさないと1日1日を積んでいけない。初日から千秋楽まで役として生きることをどこまで積み重ねていけるか。積み重ねていって、千秋楽にそれを振り返るのが毎回の自分の楽しみでした。仲間とともに一緒に積み上げていくその時間は、心を開いて本気で向き合う戦いの時間だったと思います。人としてとても貴重な財産なんですよ。だからこそ18年も頑張れたのかもしれません。

「楽しかった」と思える人生の、第1幕が終わったという感じですか?

天寿:第2幕が終わったのかな。第1幕はタカラヅカに入る前までの時間ですね。9歳でタカラヅカに出合いましたが、小さい頃は将来なりたい職業もいろいろ考えました。学ぶことも好きでしたね。秋田から宝塚歌劇団を受験をすると決めたのは、過去に前例がないことからかなり覚悟がいる決断でした。日に日に募る、あの舞台からいただいた「感動」に憧れ、どんな人物になれば必要としてもらえるのか模索する日々の受験生でした。

この世界にありがたいことに足を踏み入れてから、文や感情を読み解くとか人物を深めることの喜びを知りました。人に興味を持ち出したのは、この世界に入ってからなんです。役を演じるにあたり人間を好きになり、新しい出会いを大事にしたいと思っています。人生でお会いできる人数って限られているじゃないですか。まさに一期一会で、そのご縁を大切にしたいなと考えています。自分以上に周りの人に興味を持ちすぎてしまうと、自分が置いてけぼりになっちゃうのが悪いクセだな、と自分で分析しているんですけど。

その分析力、理系っぽいですね。

天寿:あはは、分析めっちゃ好きです(笑)

天寿光希さん笑顔

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秋田出身ということで、撮影場所に選んだのは秋田犬のいるギャラリーカフェ。秋田犬のののちゃんとの微笑ましいショットに癒されました。さらに、過去の想い、今の気持ちを包み隠さず丁寧に話してくださった天寿さん。いつでも「オープンハート」な天寿さんは温かくてまぶしく、お話を聞いている私たちにも感動を与えてくれました。

次回は天寿さんのパーソナルなことを深掘りします。お楽しみに!

撮影/熊谷直子 構成・文/淡路裕子

天寿光希

てんじゅ・みつき/9月10日生まれ、秋田県出身。2005年に91期生として宝塚歌劇団に首席で入団。花組大劇場公演『マラケシュ・紅の墓標/エンター・ザ・レビュー』で初舞台を踏んだのち、星組に配属。舞台に奥行きを与える存在感と圧倒的な美しさで、人気を博す。タカラヅカ・スカイ・ステージの番組内から生まれたユニット「紅5」のKURENAI GREENとして、舞台とは別のユニークさで魅了した。2022年ミュージック・パフォーマンス『ten∞ten TIME』を経て、7月『めぐり会いは再び next generationー真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)ー/Gran Cantante!!』にて退団。エトワールも務めた。
▶︎Instagram:@mitsuki_ten10

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