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LIFESTYLE インタビュー

2023.01.25

宝塚歌劇団を離れた上田久美子さんがオペラ初演出。文楽形式のヴェリズモ・オペラで新たな試みを【インタビュー前編】

 

宝塚歌劇団で活躍していた演出家の上田久美子さん。タカラヅカを退団し、来る2月に全国共同制作オペラで退団後初の舞台演出に挑みます。開幕を前に、上田さんの頭の中をのぞいてきました!

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演出家・上田久美子さんが仕掛ける“普通じゃない”オペラ

歌い手とダンサーがいる文楽形式、2種類の字幕、衣装は私服

演出家・上田久美子(うえだくみこ)さん。宝塚歌劇ファンの間では「ウエクミ先生」と呼ばれています。感情を揺さぶられるようなストーリーや新鮮な演出で、これまでも話題になった作品は多数。そのウエクミ先生が宝塚歌劇団を退団されたことに、とても残念な想いをされた人も少なくなかったはずです。

宝塚歌劇団退団後の上田さんは『バイオーム』の戯曲を手がけ、そして今回が退団後初となる舞台演出を務めます。しかもオペラ! オペラ、と聞くと少し身構えてしまいますが、今回の「ヴェリズモ・オペラ」はオペラの中のひとつのカテゴリーで、下町の人々の日常の生活(ときには実際に起きた事件など)を題材にしています。嫉妬や不倫、復讐といったゴシップを美しい音楽とともに届ける、そう聞くと、日頃オペラに触れたことのない人でもなんだか興味をそそられませんか?

「オペラ」という枠の中で斬新な試みを打ち出している全国共同制作企画にて、今回は『道化師』『田舎騎士道(カヴァレリア・ルスティカーナ)』という、実際にあったスキャンダラスな殺人事件が元ネタになっていると言われている2作品を上演。

上田さんいわく、「話自体、今の時代においては時代遅れな感じがあるし、当時のカトリックの規範の中で罪の意識に苦しむということは日本人にとってはいちばん理解しにくいポイントです。なのでそのままなぞるのではなく、当時の作者が社会の現実をもってインパクトを与えようと意図したヴェリズモ(現実主義)を、今の日本に置き換えて再現したというイメージです」

ヴェリズモ・オペラは美しい音楽もさることながら、ストーリー性や心理描写も大事な印象ですが、そのあたりは宝塚歌劇で培ったものを生かしたりしているかと聞いてみると、

「原作があるものなので改変はできないので、そこはやってみないとなんとも言えませんが、歌劇団時代に培ったものを生かしているとしたらエンタテイメント性でしょうか。オペラは曲を正確に歌いきっちりと音楽を存在させること。タカラヅカは序列を守り1時間35分内に収めることなど、その枠組みさえ守っていればどんなことをしてもいいわけですよ。その時間を、お客さんが退屈することなく過ごすことを実現する感覚です」

宝塚歌劇において、初めて観る人でも楽しめること、観ている人を飽きさせないことは大きなポイント。

「正直、ヴェリズモ・オペラも、オペラを初めて観る人にとっては簡単に入り込めるものではないかもしれません。それでも心をつかむための作り方をしているのですが、それは観てのお楽しみ!ということで、(一般的なオペラと)全然違うものになるのではと思います。確かに曲を歌っているからオペラなんだけど、これはオペラなのかと言われたらちょっと違う?みたいなものになるんじゃないかな」


▲上田久美子さん

昔のイタリアのスピリットが現代の日本に重ね合わさって見えるような仕掛けとは?

上田さんと一部の出演者が出席した記者会見で、出演者のみなさんが口をそろえて言っていたことは、「これは普通のオペラじゃないぞ」。上田さんが演出プランに取り入れたのは、日本の伝統芸能のひとつである文楽。オペラ部分の音楽が文楽の三味線にあたり、歌手は太夫(兼人形使い)としての存在。さらに今回の作品では歌と音楽に合わせて動くダンサーを配し、そちらが文楽でいうところの人形。

さらに、「このお話をいただいて最初に思ったのは、昔のイタリアの話だけど現代の日本の方に向けての作品にしたいということ」と上田さん。イタリア語の歌詞をイタリアのゲスト歌手の方たちを交えて歌うことで当時のイタリアのスピリットや真髄をちゃんと表現しつつ、舞台は現代の日本にしてダンサーの人たちは普段着(私服)で出てきて今の空気を動きで表す。昔のイタリアと今の日本が重なって見えてくるような舞台になるようです。

「わかりやすくオペラっぽい格好で出てきたら、『これはどういうこと?』と考える余地がないじゃないですか。『これは新しいな』と思ってもらった方が、ちゃんと観てもらえますから」

イタリア語の歌詞なので、もちろん字幕付き。通常に翻訳されたものと、上田さんが意訳した関西弁の2種類の字幕が映し出されるそう。

「私が書き下ろした意訳はキャスト越しに見えるようにして、リアルタイムでわかるようにするつもりです。ふたつの字幕があることでいろいろな見方ができ、自由度が増すと思うんです」

舞台美術も上田さんが手がけます。演出の人が美術を兼任することはよくあることなのかうかがってみると、

「海外ではわりといます。演出兼照明とか、演出兼装置とか。自分の考えていることを具体的なもので再現できるとより純度が上がるから、うらやましいですよね」

とは言え、今回は字幕という要素があること、コンサートホールでやるシアターオペラなので舞台装置の転換がほぼできないということから、美術はいたってシンプルなものを考えているそうです。

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