「住処を失う」「住処を追われる」というように使われる「住処」という言葉。なんとなく意味はわかるものの、改めて考えてみると正しい意味がわからないという方も多いかもしれませんね。そこで本記事では、「住処」の意味や使い方、「終の住処」について解説します。
住処の意味や読み方は?
「住処」は、「すみか」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。
1 住んでいる所。住まい。「―を移す」
2 好ましくないものの住む所。「鬼の―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
基本的に、「住処」は、「住んでいる所」を指します。「住処を失う」というのは、「住んでいる場所を失う」と言い換えることができますね。「すまう」などの意味を持つ「住」と、「場所」という意味を持つ「処」を組み合わせた言葉です。
使い方を例文でチェック!
もともと「住処」は、「(人が)住んでいる所」という意味がありますが、近年では動物や好ましくないものが住む所という意味合いで用いられるのが一般的です。ここでは、3パターンの「住処」の使い方を見ていきましょう。
1:家族が増えて今の家が狭くなったので、住処を移すことにした。
「住処を移す」とは、「住む場所を移す」ということ。子供が生まれて家族が増えたり、転職や異動など、家庭や仕事の事情で環境が変わることもありますよね。そんな時に、「今の場所では不便だから、別の場所に引っ越そう」という話が出るかもしれません。住む家や地域が変わる時に「住処を移す」と表現することもあるでしょう。
2:そのオス猿は、新しいボス猿との争いに負けて、住処を追われることになった。
「住処」という言葉は、現代では特に動物が住んでいる所に対して使うことが多いです。今までトップに君臨していたボス猿も、争いに負ければその群れから追われることになります。その結果、住み慣れた場所を離れ、遠くに身を寄せることになってしまうのです。自然界のルールは厳しいですね。
3:昔からその洞窟は、鬼の住処と呼ばれている。
鬼や盗賊など一般的に好ましくないものに対しても、「住処」を使います。暗く湿っていて、どことなく不気味な雰囲気が漂う場所は、化け物の住処として恐れられていることも…。昔話や伝承などで伝えられているところもあるかもしれませんね。
終の住処とは?
テレビや雑誌などで「終の住処(ついのすみか)」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。「終の住処」とは、「最後に住む所」のこと。人生の最後に住む家や場所のことを指します。会社を定年退職したり、病気やパートナーとの別れなどをきっかけに、自分にとっての終の住処を意識する人もいるでしょう。
「住み慣れた我が家で最後を迎えたい」「医療や介護の設備が整った施設で過ごしたい」「家族と一緒に暮らしたい」など、理想の老後の条件は人それぞれ。また、場所に関しても、「自然豊かな田舎暮らしをしてみたい」「何かと便利な都会の方がいい」など求めるものによって選択肢が変わります。
つまり「終の住処とは、こういう場所」という決まりはなく、各々の価値観や考え方によってさまざまなのです。
類語や言い換え表現とは?
住んでいる場所や住んでいる家のことを、「住居」や「居場所」と言うこともありますね。ここでは、2つの意味を解説します。
1:住居
「住居(じゅうきょ)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)住んでいること。また、その場所や家。すまい。すみか。「―を定める」「―専用地域」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
住んでいることや場所のことを「住居」と言います。「住居を決める」は、住む場所や家を決めるということですね。よく似た言葉に、「住宅」がありますが、こちらの方が、より「人間の住処としての建物」という意味合いを多く含みます。
(例文)
・このアパートは騒音がうるさいので、他の住居を探したい。
・そのストーカーは、住居侵入罪で逮捕された。
2:居場所
「居場所」の意味は、以下の通りです。
1 人などがいるところ。いどころ。「尋ね人の―が分かる」
2 その人が心を休めたり、活躍したりできる環境。「職場に―がない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「居場所」は主に、「人がいる所」のことを指します。「住処」が指すような、住んでいる場所というより、今現在いる場所のことをいうことが多いですね。また、「職場に居場所がない」というように、心から安心できる場所がないという場合にも用いられることがあります。
(例文)
・「息子の居場所がわからない」と母親は嘆いていた。
・警察官は犯人の居場所を掴んだ。
英語表現
「住処」を英語で表現したい場合、「人・動物が住むのか」「どんな形態の家に住むのか」などによって、使う単語が異なります。ここでは、それぞれのパターンに合わせて使える単語を4つ紹介します。
1:house
「house」は、「家や住宅そのもの」を指す単語としてよく登場しますね。建物の形態によって、「apartment house(アパート)」「detached house(一戸建て家屋)」などと言い方が変わるので合わせて覚えてみてください。また、「house」は、「動物の住処、巣」という意味も。ネズミの巣や犬などの、家畜の小屋のことを言いたい時に使える言葉です。
(例文)
・My father built a new dog house for Pochi.(父はポチのために、新しい犬小屋を建てた)
2:residence
「residence」は、「居住、住まい、住宅」などを意味する単語です。日本語でも、「レジデンス」と呼んだりしますよね。特に大きく立派な住宅に対して使われる傾向があるようです。もともとは、大邸宅や高級住宅などを表していましたが、近年では高級分譲マンションを「レジデンス」と呼ぶことが多いですね。
(例文)
・The family decided to move their residence.(家族は住処を移すことにした)
3:den
「den」とは、「巣穴」「ねぐら」「住処」のこと。主に、狐や熊などの野生動物の巣穴のことを指します。狭い巣穴にもぐって暮らしている動物には、「den」を使うことでそのニュアンスが伝わりやすいでしょう。
(例文)
・The fox finished his hunt and returned to his den.(狐は狩りを終えて、住処に帰っていった)
4:nest
「nest」は、「巣、巣穴」のこと。主に、鳥や昆虫などの巣のことを指します。「居心地のいい避難所、休み場所」という意味もあるので、鳥が巣の中で安心して休んでいる様子がイメージできるでしょう。
(例文)
・Swallows made a nest under the roof of our house. (ツバメがうちの軒下に巣を作った)
最後に
「住処」は、「住んでいる所や住まい」のこと。人が住んでいることに使っても誤りではありませんが、現代では動物の住まいに対して使われるイメージがあるため、使い方によっては違和感を持たれる場合もあるでしょう。英語で表現する時には、建物の形態や動物の種類によって適切な単語を選んでみてくださいね。
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