「時候の挨拶」とは、手紙やメールで「拝啓」などの頭語のあとにくる、季節を表す言葉のこと。目上の方やビジネスシーンにふさわしい漢語調、親しい人に向けたやわらかな印象の口語調があります。本記事では例文とともに、それぞれの使い方やマナーを紹介しましょう。
時候の挨拶とは
「時候の挨拶」とは、手紙やメールで「拝啓」などの頭語のあとにくる書き出しの言葉のこと。その時期に合わせた挨拶を加えることで、季節感を表します。
まず、手紙やメールの基本的な構成は、
1.「拝啓」などの頭語
2.時候の挨拶
3.相手を気遣う言葉や自分の近況
4.本文(本題)
5.相手の健康や繁栄を願う言葉
6.「敬具」などの結語
7.日付やビジネスシーンでは会社名・署名など
頭語を「前略」とした場合は、時候の挨拶などは省きすぐに本題に入ります。
2月の時候の挨拶と例文
三寒四温の2月にふさわしい、時候の挨拶を押さえておきましょう。ビジネスでは、一般的に漢文調の○○の候(〇〇のみぎり)を使うのがマナー。それを口語調にすれば、プライベートで使えます。

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<2月全般に使える主な時候の挨拶>
向春の候=春の気配が近づいてきましたね
梅香の候=梅の花が咲く頃となりました
梅鴬の候=梅の花がほころび、鶯の鳴く頃となりました
<初旬・上旬~中旬・下旬の主な時候の挨拶>
【初旬】
・晩冬の候=冬もいよいよ終わりに近づいてきました
2月3日頃までの挨拶。春を待ちわびる気持ちも込められています。
・暮冬の候=冬も終わる頃となりました
こちらも立春の前日である2月3日頃までつかえる時候の挨拶です。
【上旬~中旬】
・立春の候=春の気配を感じる季節です
二十四節気で立春にあたる2月4日前後~次の節季の雨水にあたる18日前後に使える挨拶です。
・余寒の候=春になっても寒さが残りますね
2月4日以降に使いましょう。その後は、2月全般使えます。
・春寒の候=春とは名ばかりで寒さがぶり返しています
こちらも2月4日以降の挨拶です
・残寒の候=寒の時期を過ぎましたが、寒い日が続いていますね
小寒~大寒(1月5日頃~2月3日頃)を過ぎて、まだ寒さが残っていることを表す時候の挨拶です。
・寒明の候=最も寒かった時期が明けました
立春を迎える2月4日頃から2月中旬頃に適した挨拶です。寒い時期が明けて、春がやってくることを表しています。
【下旬】
・浅春の候=まだ寒さは残りますが、春のはじまりの季節となりました
浅春は立春を過ぎてすぐの季節を表す言葉で、2月4日頃の立春から雨水の3月4日頃まで使えます。草木も春支度を終え、寒さの中に春の気配を感じる時期に使いたい時候の挨拶です。
・雨水の候=春が近づき雪から雨に変わる季節となりました
2月19日頃から3月4日頃までの時候の挨拶。但し、北ではまだ雪が多く、沖縄などでは桜の便りが聞かれているかもしれません。地域性に配慮して使いましょう。
・三寒四温の候=三寒四温の季節となりました
三寒四温とは、冬の終わりから春にかけて、寒い日が三日ほど続くと、その後四日間くらいは暖かい日が続くことを意味する言葉です。本来は冬の季語でしたが、日本の気候が春に向けて周期的な寒暖の変化を繰り返しながら暖かくなっていくことから、寒暖の差がはっきりと表れる2月から3月にかけて、寒い日が続いたかと思うと暖かくなり… を繰り返して冬から春へ季節が変わっていく、というニュアンスで使われることが多くなりました。
・残雪の候=まだ消え残る雪のみられる季節です
雪のある季節には使わず、「春だというのに」という時期、2月中旬以降2月末までの時候の挨拶です。
【ビジネス編】2月の時候の挨拶
会社対会社の文書では、きっちりとした印象の漢語調を使いましょう。

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時候の挨拶と書き出し
1:「立春の候(みぎり)、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
スタンダードな時候の挨拶と書き出しです。時候の挨拶を時期によって変えれば、どのようなビジネスシーンでも使うことができますね。書き出しにはほかに、「貴社におかれましてはますますご隆盛(ご清栄)のこととお慶び申し上げます」などがあります。
2:「残雪の候(みぎり)、季節の変わり目で体調管理も難しいこの頃ですが、〇〇様(肩書)におかれましてはご健勝のことと拝察いたします」
ビジネスシーンでも個人宛の例文。2月は寒さの厳しい日や暖かな日がありますので、相手の健康を喜ばしく思うという意味のフレーズを使うのもおすすめです。
3:「梅花の候(みぎり)、〇〇様におかれましては益々健勝のこととお慶び申し上げます」
梅花の候は2月全般に使える挨拶ですので、覚えておくと良いでしょう。梅の花が咲く季節を表現することで暖かさやおめでたい気持ちを表すことができますから、昇進・栄転、社長の就任、オフィス移転などお祝い事にもふさわしい挨拶です。
結びの挨拶
1:「貴社のますますのご発展を心よりお祈りいたします」
ビジネスシーンでは一般的な結びの挨拶です。「ますますのご隆盛」「ますますのご繁栄」「より一層のご発展」などと言い換えもできます。
2:「寒さの中に春の兆しが感じられます。貴社のますますのご繁栄を祈念しております」
1の結びの文をアレンジ。この季節ならではの言葉にするのも気が利いています。
3:「寒明けの折、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます」
時候の挨拶である「寒明け」を使うことで、季節感とともに春がやってくることへの期待感と発展を祈る気持ちを重ねて伝えることができます。
4:「今後ともご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます」
個人宛のメールや手紙の一般的な結びの言葉です。
5:「末筆ながら、〇〇様の(肩書や皆様)のますますのご健勝を心よりお祈り申し上げます」
個人宛の場合、「ますますのご活躍をお祈りいたします」という結び方よく使います。また例文のように、季節の変わり目は、相手の健康を気遣ったり、健康であることを喜ぶ言葉を添えると気が利いた印象になりますね。
6:「三寒四温の時節柄、ご自愛専一にてお願い申し上げます」
相手の体調を気遣う言葉とともに、季節に合わせた体調を崩しやすい理由を添えても良いでしょう。「余寒厳しき折」や「残寒の候」なども2月にふさわしい結びの挨拶です。
【プライベート編】2月の時候の挨拶
お礼状を含め、プライベートな時候の挨拶について紹介。目上の方には、〇〇の候もいいですが、親しい相手には、砕け過ぎず、かつ自分なりに季節感を表現してみましょう。

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時候の挨拶と書き出し
1:お礼状の場合
「吹く風にも春を感じられます。お変わりなくお過ごしでしょうか。
その節は大変お世話になりました。お蔭さまで、無事に〇〇〇することができました。改めて感謝しております」
ごく親しい友人に軽くお礼をする場合を除き、正式なお礼状では、親しい間柄でも時候の挨拶も含め節度のある表現を心掛けましょう。
「先日は〇〇していただき本当にいただきありがとうございました」などお礼の理由を具体的入れるのも好印象。そして必ず、「お陰様で楽しく過ごせました」「お陰様で体も順調に回復しております」「今は落ち着いた時間を過ごしております」など、その結果を報告するようにします。
2:「暦の上では春ですがまだまだ寒いですね。いかがお過ごしですか?」
スタンダードな時候の挨拶です。これをアレンジし、「暦の上では春ですが、そちらにはまだ雪が残っているでしょうか」「こちらはまだまだ寒いですが、鹿児島では桜の便りも聞かれるとか」などのように一工夫してみましょう。
3:「バレンタインデーが近づいてきました。今年は夫に手作りチョコを贈ろうと密かに練習しています」
梅、うぐいす、節分、バレンタインデー、三寒四温、春一番など、2月ならではの風物詩を盛り込むのも楽しくていいですね。
結びの挨拶
1:「時節柄、くれぐれもご自愛ください。またお会いできますことを楽しみにしております」
お礼状などでは、最後までていねいな言葉遣いを心掛けて。
2:「季節の変わり目、風邪など引かないように。暖かくなったら集まろうね」「今年はお花見に行きましょう。楽しみにしています」
相手を気遣ったり、春が待ち遠しい気持ちを入れれば共感を誘います。
最後に
2月は、1年の中で最も寒い日や雪の多い日もあれば、ふと春を感じる瞬間もある、そんな時季です。だからこそ、時候の挨拶もその状況によって使い分ける配慮を忘れたくないですね。
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