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「頂戴する」の正しい意味とは?
言葉を適切に使うためには、正しい意味を理解しておくことが大切です。まずは「頂戴する」の意味とともに、類語や言い換え表現を確認していきましょう。
「頂戴する」は目上の人に使える正しい敬語
「頂戴」には、ものをもらったり、もらって飲食したりする意味があります。さらに、もらったものを「顔の上に捧げ持つ」という意味合いを持ち、「もらう」という行為をへりくだって表した謙譲語です。つまり「頂戴する」は、目上の人にも使える正しい敬語表現。ビジネスでは、物をもらうときだけでなく、相手に時間を作ってほしいときや、物事を依頼するときにも使用されています。
【頂戴(ちょうだい)】
[名](スル)
(1)もらうこと、また、もらって飲食することをへりくだっていう語。「結構な品を―いたしました」「お叱りを―する」「もう十分―しました」
(2)(多く、女性・子供の用いる語)
(ア)物を与えてくれ、また、売ってくれという命令の意を、親しみの気持ちをこめて促すようにいう語。ください。「それを―」「牛肉500グラム―」
(イ)「…てちょうだい」の形で補助動詞の命令形のように用いて、相手に何かをしてもらうのを促す気持ちを、親しみをこめていう語。「その新聞を取って―」
(3)顔の上にささげ持つこと。「黄衣の神人神宝を―して、次々に順(したが)ふ」〈太平記・三九〉
(補説)電話の応対などで「お名前を頂戴できますか」などと言うが、これは正しくない。「名前を頂戴する」というのは、例えば主君の名をそのまま、またはその一部を戴いて自分や子供の名にすることである。よって簡略には「お名前をお願いします」、さらには「お名前をお聞き(お伺い)できますか」くらいでよい。平成10年代半ば頃から広がったという。
<「小学館 デジタル大辞泉」より>
「頂戴する」と「いただく」はどう違う?
品物をもらうことを意味する「いただく」も、「頂戴する」のように目上の人に使用できる敬語です。両者の大きな違いは、使えるシーンの幅の広さにあります。「頂戴する」は、ややかしこまったシーンに適した表現です。「いただく」は「頂戴する」に比べると汎用性が高く、ビジネスメールでも頻繁に使用されます。相手との関係性や使用する場面に応じ、それぞれを使い分けられるようにしておきましょう。
例文
・結構な品をいただき、家族一同感謝しております。
・お忙しいところ恐縮ですが、お時間いただけますでしょうか?
・ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきたく存じます。
これはNG!「頂戴する」の注意点4つ
「頂戴する」を使用する際は、以下の4つの点に注意する必要があります。ビジネスや実生活で活かせるよう、正しい使用法を理解しておきましょう。
「頂戴」+「いたします」は二重敬語
よりていねいな表現にしようと、「頂戴」に「いたします」を合わせて使用していないでしょうか。「頂戴いたします」は、二重敬語にあたる不適切な表現です。二重敬語とは、ふたつ以上の敬語が重なる使用法のこと。敬語は以下の3種類に分類され、同じ種類が重なると、回りくどい表現になってしまいます。
・謙譲語
・尊敬語
・丁寧語
「頂戴いたします」は、「もらう」と「する」それぞれの謙譲語が重なった表現です。ていねいな気持ちを伝えたつもりが、かえって読みづらい印象を与えることもあるため注意しましょう。
名前を尋ねたいときには適さない
「頂戴する」という表現は、相手の名前を尋ねる場面には適していません。「お名前頂戴します」という表現を耳にすることもあるかもしれませんが、名前は「もらう」ものではないからです。相手の名前を尋ねたいときには、以下のような表現を使用します。特に、目上の人の名前を尋ねるときには失礼のないよう、適切な言い回しを確認しておきましょう。
・お名前を伺ってもよろしいですか?
・こちらの受付にて、お名前をお教えください。
・恐れ入りますが、お名前をお聞かせ願えますでしょうか。
お金や名刺は「預かる」が無難な場合も
取引先との初対面のシーンで必要となるのが、名刺交換です。相手から差し出された名刺を「頂戴します」と受け取ることもあるのではないでしょうか。注意したいのは、受付担当者が来訪者の名刺を受け取る場合です。この場合、担当者は来訪者の名刺を一時的に預かる形となります。そのため、「もらう」ことを意味する「頂戴する」は、厳密には適していないのです。受付で名刺を受け取る際は「名刺をお預かりいたします」「名刺をお預かりできますでしょうか」のように、「預かる」という言葉を使用しましょう。
また、お店のレジでお金を受け取る際も、「頂戴する」ではなく「預かる」が適していると考えられます。「預かる」は、受け取ったお金が一時的に保管されることを意味するからです。特に、受け取ったお金に対し支払う釣銭がある場合には、「○○円お預かりします」という言葉を前置きし、釣銭を渡した後に受領するという流れが適していると言えるでしょう。
「頂戴」はひらがなではなく漢字を用いる
かしこまった印象も与える「頂戴」という言葉は、漢字とひらがな、どちらが適しているのか迷ってしまいますよね。「頂戴する」は、ひらがなで「ちょうだいする」と書いても意味は変わりません。「〇〇してちょうだい」と依頼する表現も、「〇〇して頂戴」と漢字表記することができます。しかし、本来かしこまった場面で使う「頂戴する」という言葉は、ひらがなで表記すると幼い印象を与える可能性もあります。そのため、ビジネスで使う際には、漢字表記が適していると言えるでしょう。
シーン別「頂戴する」の例文
語句の正しい意味を理解したら、注意点を踏まえながら、例文を参考に使用例をマスターしていきましょう。いくつかのバリエーションを覚えておけば、とっさの場面でも適切に使用できるようになります。
時間をもらいたいとき
目上の人や取引先に時間を作ってもらいたいときにも、「頂戴する」という表現は適しています。自分が休みをもらいたいときにも使えるため、以下の例文を確認しておきましょう。
例文
・お忙しいところ恐れ入りますが、打ち合わせに必要な時間を頂戴できますでしょうか。
・30分ほどお時間頂戴できますと幸いです。
・来週から3日間、お休みを頂戴したく存じます。
相手の配慮に感謝を伝えたいとき
「頂戴する」は、相手への感謝の気持ちを伝えたい時にも使用できる言葉です。相手からもらった品物、配慮へのお礼のメッセージは、以下のように伝えましょう。
例文
・先日はお見舞いの品を頂戴し、誠にありがとうございました。
・皆様からお心遣いを頂戴し、心より感謝しております。
・つらいときに頂戴した言葉を胸に、ここまでがんばることができました。