お金や名刺は「預かる」が無難な場合も
取引先との初対面のシーンで必要となるのが、名刺交換です。相手から差し出された名刺を「頂戴します」と受け取ることもあるのではないでしょうか。注意したいのは、受付担当者が来訪者の名刺を受け取る場合です。この場合、担当者は来訪者の名刺を一時的に預かる形となります。そのため、「もらう」ことを意味する「頂戴する」は、厳密には適していないのです。受付で名刺を受け取る際は「名刺をお預かりいたします」「名刺をお預かりできますでしょうか」のように、「預かる」という言葉を使用しましょう。
また、お店のレジでお金を受け取る際も、「頂戴する」ではなく「預かる」が適していると考えられます。「預かる」は、受け取ったお金が一時的に保管されることを意味するからです。特に、受け取ったお金に対し支払う釣銭がある場合には、「○○円お預かりします」という言葉を前置きし、釣銭を渡した後に受領するという流れが適していると言えるでしょう。
「頂戴」はひらがなではなく漢字を用いる
かしこまった印象も与える「頂戴」という言葉は、漢字とひらがな、どちらが適しているのか迷ってしまいますよね。「頂戴する」は、ひらがなで「ちょうだいする」と書いても意味は変わりません。「〇〇してちょうだい」と依頼する表現も、「〇〇して頂戴」と漢字表記することができます。しかし、本来かしこまった場面で使う「頂戴する」という言葉は、ひらがなで表記すると幼い印象を与える可能性もあります。そのため、ビジネスで使う際には、漢字表記が適していると言えるでしょう。
シーン別「頂戴する」の例文
語句の正しい意味を理解したら、注意点を踏まえながら、例文を参考に使用例をマスターしていきましょう。いくつかのバリエーションを覚えておけば、とっさの場面でも適切に使用できるようになりますよ。
時間をもらいたいとき
目上の人や取引先に時間を作ってもらいたいときにも、「頂戴する」という表現は適しています。自分が休みをもらいたいときにも使えるため、以下の例文を確認しておきましょう。
例文
・お忙しいところ恐れ入りますが、打ち合わせに必要な時間を頂戴できますでしょうか。
・30分ほどお時間頂戴できますと幸いです。
・来週から3日間、お休みを頂戴したく存じます。
相手の配慮に感謝を伝えたいとき
「頂戴する」は、相手への感謝の気持ちを伝えたい時にも使用できる言葉です。相手からもらった品物、配慮へのお礼のメッセージは、以下のように伝えましょう。
例文
・先日はお見舞いの品を頂戴し、誠にありがとうございました。
・皆様からお心遣いを頂戴し、心より感謝しております。
・つらいときに頂戴した言葉を胸に、ここまでがんばることができました。
相手にうかがいをたてるとき
相手が目上の人や取引先であるほど、お願いや依頼の表現は難しいものです。うかがいをたてるときも「頂戴する」を使用し、失礼のない言葉遣いを心がけましょう。
例文
・恐れ入りますが、先日の案件に関するご意見を頂戴できますでしょうか。
・ここで〇〇様のご挨拶を頂戴したく存じます。
・〇日までに資料を頂戴してもよろしいでしょうか。
「頂戴する」の英語表現をマスターしよう
取引先や目上の人に対して使用する「頂戴する」という言葉は、英語表現をマスターしておくと、いざという時に役立ちます。「頂戴する」は、相手に対し自分がへりくだる謙譲語ですが、英語には謙譲語という概念はありません。そのため、もらうことを意味する語句で「頂戴する」を表現できます。
「もらう」のシンプルな英語表現は「get」です。ただし「get」は、同僚や友人のような関係性に適しており、「頂戴する」を使用するようなフォーマルな場面では、主に「receive」が用いられます。
・We confirmed to receive.
(確かに頂戴しました)
・I received the materials the other day.
(先日、資料を頂戴しました)
・We have actually received words of praise from many hobbyists.
(多くの方からお褒めの言葉を頂戴しました)
「頂戴する」を正しく使いていねいな気持ちを伝えよう
「頂戴する」を正しく使えれば、相手によりていねいな気持ちを伝えることができます。シーンに応じて、類語や「いただく」と使い分けてもよいでしょう。またお金や名刺の受け取りには、「預かる」が適している場合もあります。仕事もプライベートも多くの人に支えられているからこそ、受け取るといった行為ひとつにも正しい敬語を使用し、相手にていねいな気持ちを伝えていきたいですね。
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