請負とは?
「請負」という言葉は、会社員として働く人にとってはあまり身近なものではないかもしれません。自社のアウトソーシングを検討する場面になって初めて、この言葉を知ることもあるはずです。「請負」の基礎を解説します。
「請負契約」はアウトソーシングの1つ
請負とは、社内で行われる業務の一部を外部の人に任せる「アウトソーシング」の一形態です。注文者が「仕事を通してつくりあげるもの(成果物)」を請負人に依頼し、請負人がその完成を約束する契約を指します。
うけ‐おい〔‐おひ〕【請負】
1. 日限・報酬を取り決めた上で仕事を引き受けること。また、その仕事。
2. 保証すること。請け合うこと。
「百年生きる―があるか」〈浮・敗毒散・五〉
小学館『デジタル大辞泉』より引用
請負では、請負人が業務遂行の方法や人員配置を自ら決定し、結果に対して責任を負います。注文者は成果物の納品のみを求め、実際に仕事を行うプロセスには関与しません。
請負の特徴として、請負人の自主性と責任が挙げられます。業務の進め方・必要な技術・人材の選定などは、すべて請負人に委ねられます。
注文者側の請負の責任や権利
注文者の責任として重要視されるのが、納品された成果物に対して報酬を与える「支払い義務」です。お金を支払って報酬とするケースが一般的ですが、理論上では現物給付や労務提供などで報酬を支払ってもよいこととなっています。
注文者は請負人に対して報酬支払の義務を負う一方で、「成果物に不満を言う権利」も有しています。
具体的には、成果物が契約内容に適合していないときに手直しや不足分を求める「追完請求権」や、請負人が手直しなどに応じない場合などに適応される「代金減額請求権」などが、注文者に与えられる権利の代表例です。
ほかの契約形態との違い
請負の意味を知りたいときは、ほかの契約の形との違いをはっきりさせておくと、より理解が深まります。請負と一緒に覚えておきたい、派遣・業務委託・準委任契約との違いを解説します。
派遣との違い
請負と派遣、どちらも外部の人材を活用する方法ですが、その特徴や法的な位置づけは大きく異なるので注意が必要です。
請負では、注文者が業務の完遂を依頼し、請負人がその責任で業務を実行します。一方派遣では、派遣会社から労働者を受け入れ、指揮命令権を持って仕事を行わせます。
請負の場合、注文者が仕事の進め方や人員配置に関与することはできません。これに対し派遣では、注文者(派遣先)が労働者に直接指示を出し、業務の細部まで管理します。
また請負では、仕事にかかった時間ではなく「仕事の結果として出来上がったもの」に対して報酬を支払うのに対し、派遣では実際の労働時間に応じて報酬を支払います。
業務委託との違い
労働者との契約の形に詳しい人であれば、請負の意味を知ったとき「業務委託とは何が違うのだろうか?」という疑問が湧いてくるはずです。
業務委託とは、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つの契約の形をまとめて呼ぶ言葉です。業務委託は、法律で定義された契約形態を表す言葉ではなく、実務の中で一般的に使われる言葉として存在します。
一方請負は、民法で決められている契約形態を表す言葉です。注文者が成果物の納品を請負人に依頼し、請負人がその責任の下で業務を実行します。成果物の納品が契約の目的となり、注文者による過程への関与は限定的です。
準委任契約との違い
請負契約と準委任契約は、どちらもアウトソーシングに分類される契約の形を表す言葉です。請負契約では、注文者が仕事の完遂を依頼し、請負人がその責任で実行します。
一方、準委任契約では、委任者が業務の遂行自体を依頼し、受任者がその専門知識やスキルを生かして仕事を行います。
請負の場合、成果物の納品が契約の目的となり、その過程に関与することは基本的に不可能です。一方準委任契約では、業務遂行自体が目的となり、成果物の完成は保証されません。
請負では結果責任が請負人にありますが、準委任契約では結果の保証は必ずしも求められないのです。
請負のメリット・デメリット
アウトソーシングの一形態として多くの企業が採用している請負には、さまざまなメリットがあります。しかし、見逃せないデメリットもあるため注意が必要です。
注文者・請負人双方に想定される、請負のメリット・デメリットを解説します。
請負のメリット
注文者にとって請負のメリットは、専門性の高い仕事を効率的に成し遂げられる点です。高品質な成果物を得られる可能性が高まり、自社のリソースをほかの重要な業務に集中させられます。
また、人件費関連のコストを抑えられることも大きなメリットです。新しく人材を確保せずとも高度な技術を駆使した成果物が得られるので、教育や労務管理にかかる費用をカットできます。
請負人のメリットとしては、仕事への取り組み方次第で、効率よく収益を得られる可能性が高まることが挙げられます。工夫すれば、タイムパフォーマンスを際限なく高めることができるのです。また、業務の進め方や人員配置を自主的に決定できる自由度の高さも魅力といえます。
請負のデメリット
注文者の立場で想定される請負のデメリットは、品質管理が難しくなることです。求めるレベルをクリアした成果物が納品されない可能性があります。
また、社内にノウハウが残らないこともデメリットでしょう。自社で人材を育て、成果物を完成させられるようになった方が、実りが多い場合もあります。
請負人のデメリットとしては、仕事量の変動による収入の不安定さや、成果物に対して全責任を負うリスクが挙げられます。また、注文者との認識のズレによるトラブルや、納期厳守のためのプレッシャーも課題の一例です。
請負契約締結における注文者の注意点
請負の注文者となる企業の責任者に知っておいてほしい、契約を結ぶ際の注意点を解説します。もし確認せずに契約を結んでしまうと、最悪の場合は法律違反に問われる可能性があります。しっかり理解して契約を検討しましょう。
請負契約書で業務を明確に定める
請負契約書は、注文者と請負人の間で交わす重要な文書です。業務内容・納期・報酬などの条件を明確に定めることで、双方の権利と義務を明らかにする役割を持っています。
具体的には下記のような項目を盛り込みます。
・成果物の規格
・納期と納入方法
・検収方法
・報酬額と支払い方法
・契約不適合責任
・契約の解除
契約書作成の際は曖昧な表現を避け、具体的かつ明確な言葉で記述することがポイントです。これにより注文者と請負人の認識のズレを防ぎ、スムーズな業務遂行と良好な関係維持につながります。
専門的内容や法的な側面もあるため、契約書を作る際は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
締結する前に最新の法律の確認を
請負契約を締結する際は、最新の法律や規制を確認することが不可欠です。労働関連法規は頻繁に改正されるため、常に新しい情報をチェックしましょう。特に注意すべきは、労働者派遣法・職業安定法・労働基準法です。これらの法律は、請負の適法性に大きく関わります。
請負契約を締結する際には、民法の最新情報にも敏感になる必要があります。請負契約は民法632条においてルール化されている契約形態です。
民法では2020年4月、請負人が負うべき責任について、「瑕疵担保責任」という考え方を取り止めて「契約不適合責任」という言葉を使うこととしました。また、契約解除の際に求められる要件も見直されています。
偽装請負に該当すると違法に
偽装請負とは、請負の形式を取りながら、実質的には労働者派遣と同様の働き方をさせる違法行為です。これに該当すると、労働者派遣法違反として罰則の対象となる可能性があります。
偽装請負を避けるためには、注文者が請負人の従業員に直接指示を出さないこと、仕事の進め方や人員配置に関与しないことが重要です。
また注文者は、請負人が自社の従業員の労務管理を適切に行い、独立した事業者として業務を実行していることを確認する必要があります。契約内容と実態が一致しているか定期的にチェックし、疑問点があれば専門家に相談することをおすすめします。
参照:あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ? | 東京労働局
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