ハード面・ソフト面の意味や違い
「ハード面」「ソフト面」という言葉。ビジネスパーソンであれば、一度は耳にしたことがあるかと思います。しかし、その意味までしっかり確認したことがある人は意外と少数派かもしれません。まずは、「ハード面」「ソフト面」の意味を解説します。
ハード面は物理的な要素を指す
ハード面とは、目に見える物理的な要素を指します。直接触れたり操作したりできるものに関することです。
ハード‐めん【ハード面】
施設・設備・機器など有形のものに関すること。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
オフィス環境では、デスク・椅子・パソコンなどの機器がハード面に該当します。また工場では、生産設備や安全装置なども含まれます。
これらは作業効率や快適性に直接影響を与えるため、適切な整備が必須です。たとえば、人間工学に基づいた椅子を導入することで、長時間のデスクワークによる身体的負担を軽減できるでしょう。
ハード面の改善には往々にして初期投資を必要としますが、長期的な目で見ると、生産性向上やコスト削減などにつながる可能性があります。
ソフト面は形のないものを指す
ソフト面は、目に見えない要素や形のない要素を指す言葉です。
ソフト‐めん【ソフト面】
人材・技術・情報など無形のものに関すること。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
オフィス環境においては、企業文化・コミュニケーションスタイル・チームワーク・リーダーシップなどが含まれます。形がないものであるため直接は触れられませんが、こういった要素が職場の雰囲気や生産性に大きな影響を与えるのです。
どのような分野であっても、ソフト面の改善については効果を感じ取れるまでに時間がかかりやすいもの。しかし、長期的な視点に立てば、着実に課題を解決へ導いてくれる要素といえます。
ハード面への対策と適切なバランスを取ることで、より効果的な課題解決力を発揮してくれるでしょう。
各分野におけるハード面・ソフト面の具体例

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ハード面とソフト面という考え方は、あらゆる分野に存在します。これらの言葉を深く理解したいのであれば、各分野における具体例を確認しておくのが有効です。ハード面とソフト面のさまざまな分野の例を解説します。
防災
この分野では、防災対策においてハード面とソフト面という言葉が使用されます。ハード面とは、建物の耐震化・堤防の整備・避難タワーや津波防波堤の建設など、物理的な構造物のことです。これらの設備は、災害時に直接的な防御の役割を果たします。
一方ソフト面とは、避難訓練の実施・避難計画の作成・地域コミュニティの連携強化・防災教育の実施など、人々の行動や意識に関わる要素です。
街全体の防災力を上げていくには、ハード面・ソフト面のバランスをいかに整えるが重要です。立派な設備があっても、防災訓練で使い方を学んでいなければ、宝の持ち腐れに終わってしまうかもしれません。
まちづくり
まちづくりにおけるハード面には、道路・公共施設・公園などの都市インフラの整備が挙げられます。これらは住民の生活基盤を支える重要な要素です。
ソフト面には、コミュニティ活動や地域イベントなどに代表される住民参加型の催し物などが該当します。地域の祭りや防災訓練は住民同士のつながりを強化し、地域の魅力を高めてくれるでしょう。
効果的なまちづくりには、ハード面・ソフト面の双方を改善していくことが欠かせません。ハード面の整備に合わせて、その活用方法をソフト面で支援する。このような流れによって、より住みやすい街が実現していくのです。
仕事探し
仕事探しでは、働く場所へ求める条件にハード面とソフト面という言葉を用います。ここで表されるハード面とは、求人サイトや求人票を確認すれば把握できる事柄のこと。具体的には、業務内容・契約期間・賃金・労働時間などが該当します。
続いてソフト面とは、求人内容から読み取りにくい情報を指します。例を挙げると、企業理念・職場の雰囲気・働きがいの有無などです。
仕事探しをする上でまず注目すべきは、ハード面といえるでしょう。客観的に把握できる条件を満たしていない仕事に就くと、心身ともに無理をする事態になりかねません。ハード面をクリアした求人の中から、自分の求めるソフト面を確認し、理想の職場であるか判断するのがおすすめです。
ヒューマンエラー防止
ヒューマンエラー防止におけるハード面には、フールプルーフ設計(間違った操作をしても重大な事故が起こらないようにする仕組み)や自動化システムの導入が挙げられます。そのほか、機械に手を挟まれないよう安全柵を設置したり、工具の取り違えを防ぐために作業場の整理整頓を徹底したりといった工夫も当てはまるでしょう。
ソフト面とは、従業員の教育訓練やマニュアル整備を通して、安全文化を育てることなどを指しています。また、定期的な安全研修やヒヤリハット事例の共有も効果的です。
ハード面・ソフト面を適切に組み合わせると、一層確実なヒューマンエラー防止が可能になります。たとえば、チェックリストシステムの導入(ハード面)と、その効果的な活用方法の指導(ソフト面)を合体させることにより、ミスのない安全な職場環境が実現できるのです。
職場環境にまつわるハード面・ソフト面の整備例

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ハード面とソフト面という概念は、職場でもしばしば活用されます。職場が抱えるさまざまな課題について、両面からのアプローチがなされているのです。今回は問題の一例として「職場環境の改善」を挙げ、具体的な取り組みを解説します。
生産性を向上させたい
生産性向上のためには、ハード面とソフト面の両方からアプローチすることが必要不可欠です。
ハード面では、効率的なオフィスレイアウトや最新IT機器の導入が挙げられます。フリーアドレス制を採用して社員の交流を促進したり、高性能なパソコンを導入して作業速度を上げたりすると、効果が期待できます。
ソフト面なら、柔軟な勤務形態の導入や従業員のスキルアップが重要です。具体的には、ライフスタイルに合わせてテレワークやフレックスタイムを選べるようにしたり、社員研修を充実させてスキルの底上げをはかるといいでしょう。
これらの要素を適切に組み合わせることで、相乗効果が生まれます。例として、新しいITツールを導入する際に使い方の研修も同時に行えば、より効果的に生産性の向上が見込めるはずです。
時間外労働を削減したい
時間外労働を削減するために求められるハード面の取り組みとは、「ノー残業デー」の設定や、オフィスの照明を自動で消灯するシステムの導入などです。これにより、強制的に退社を促す環境をつくることができます。
対してソフト面では、業務の優先順位付け・従業員の増員・アウトソーシングを活用することが重要です。たとえば、時間外労働に対する意識を変える研修を実施してみましょう。すると企業全体に「時間外労働を否定する流れ」が生まれ、上司に促されずとも自ら定時で帰宅する従業員が増加していく可能性があります。
時間外労働の削減を実現するには、ハード面・ソフト面のバランスを意識してください。いくら物理的に環境を整えたとしても、社員ひとりひとりに「定時で帰ろう」という意識が芽生えていなければ、夢物語に終わってしまいます。
障がいのある人が能力を生かせる職場をつくりたい
障がいのある人が能力を生かせる職場づくりを目指す際に求められるハード面の改革としては、バリアフリー設計や特殊な作業補助具の導入が代表的です。具体的には、車椅子でも使いやすい机や、視覚障がいのある人向けの音声ガイドシステムなどが該当します。
ソフト面では、障がいへの理解を深める社内研修や、個々の能力に応じた柔軟な業務分担が必要です。また、障がいの特性を考慮したコミュニケーション方法の確立も必須といえるでしょう。
この両面を調和させれば、多様な能力を最大限に発揮できる環境が整います。設備を導入して風通しのよい職場づくりをし、その上で個々の適性に合った業務設計を心がけると、存分に能力を生かせるはずです。
高齢者が安心・安全に働ける職場をつくりたい
高齢者が安心・安全に働ける職場づくりを目指す上で欠かせないハード面の対策には、バリアフリー設計のほか、エルゴノミックな設備(人間が使いやすいと感じるように設計された設備)の導入が挙げられます。たとえば、滑りにくい床材の使用や、適切な照明の設置が効果的です。
ソフト面においては、高齢者の経験や知識を活かせる業務設計や、柔軟な勤務体系の導入が有効です。短時間勤務や在宅勤務の選択肢を設けてみると、体力面での不安を軽減できるでしょう。さらに、世代間のコミュニケーションを促進する研修や、高齢者の健康管理をサポートする制度の導入も重視しましょう。
ハード面とソフト面のどちらかではなく、両面からのアプローチによって、高齢者が安心して能力を発揮できる職場環境が実現します。
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