【目次】
絵本から学ぶ「死」のその先
祖父が亡くなってこの秋で2年。家族に手を握られながら91歳の生涯を閉じたおじいちゃんは、私からみればとても幸せな人生だったと思うのですが、「介護の終わり」とはそんな単純なものではないらしく、母は今でも、あの時ああすればよかった、こうしたらよかったと、後悔や自問を繰り返しては泣いています。そんな母を見た我が家の7歳と5歳が本屋で選んできたのがこの本。「ばぁばに読んであげようよ!」と言うのです。
亡くなったおじいちゃんの部屋のベッドの下にあったノート
主人公が見つけた「このあと どうしちゃおう」と書かれたノートには、おじいちゃんの絵と文字で「自分が将来死んだらどうなりたいか、どうして欲しいか」がいっぱい書いてありました。例えば…と、想像豊かでクスっと笑ってしまうような天国の描写が続きます。
▲「このあと どうしちゃおう」ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)
『このあと どうしちゃおう』は死がテーマ
作者のヨシタケシンスケさんは、母親を長患いの病気で亡くし、父親を急病で失ったのだそう。突然の死では勿論、ゆっくり訪れる死を前にしても、家族同士で死について語ることは難しく、結果、恐怖を分かち合うことや、心配をかけ合うことが出来なかった後悔があるといいます。
「健康で元気な時にもっとカジュアルに死について話が出来ていたらよかった」
確かに。もし祖父に「おじいちゃんはラーメンが好きだから、死んだらラーメンをお供えしてね」と言われていたら、今日もラーメンをお供えし、祖父の生前の願いを叶え続けることで、未だ悲しみの中にある母を救うことにもなったかもしれないと感じます。
死について語るのは、縁起でもないことなのか
人はいつか死んでしまうことを、それも突然その日がやってくるかもしれないことを、私たちはこのコロナ禍で思い知りました。死を茶化してはいけません。しかし、子ども達のレジリエンス(折れない心)を育むうえで、不幸な衝撃からも立ち直ることの出来る前向きな心や、ユーモアを持っておくことはとても大切なことだと思うのです。
文科省が進める「がん教育」
平成28年12月のがん対策基本法改正により、がん教育に関する条文が新たに盛り込まれ、「新学習指導要領」にも明記されました。これを受けて来年の4月からは中学校で、再来年からは高校で「がん教育」がスタートします。授業の中でがんを取り上げることを通じて、他の様々な疾病の予防や命の大切さ、がんとの共生社会などについて考えていくことを目的としたものです。
病や死は誰にでも訪れること。愛する人の死はとても悲しく心細いこと。その時、他の人たちはどうやって自分を守ってきたのかを、子ども達は学校でも学ぶことになります。
大丈夫、日本人はとても長生きです
厚生労働省の「簡易生命表(平成30年)」によれば、40歳女性の死者数は人口1,000人あたり0.58人。つまり1,000人の40歳の内、1年後に生存している数は999人以上いるということです。ちなみに男性は0.94人。日本人の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳と、世界でトップクラスの平均寿命を誇っています。
死との新しい向き合い方
「終活」などという大それた整理ではありませんが、この本を読んで以降、我が家でもたまに「死」が話題になります。先日、長女が「ママは法律を作るのがお仕事でしょ?だから死んでもお別れしなくてもいい法律を作って。」と依頼されました。7歳の死生観に心が震えました。
ちなみに、2人の娘に「ママが死んだらどうする?」と聞いたら、長女は「んー。ギューランドを作って、ここに来たら私とギューって出来ますよーと言って、ママをおびき寄せる」と、次女は「毎日お空にバイバイしてから保育園に行く!」だそうです。
「このあと どうしちゃおう」をお互いに交換することは、決して子どもへの残酷な問いではなく、いずれやってくる大きな悲しみを癒すエッセンスになると思うのです。
Domanist
伊藤孝恵
2児(共に女児)の母・ 参議院議員。テレビ局、大手化粧品メーカー勤務を経て、人材総合サービス会社で宣伝を担当。2016年に初当選し、ママパパ議員連盟を立ち上げるなど精力的に活動中。過去に結婚させたカップルは17組。
IG:https://www.instagram.com/itotakae/