小学5年生の男の子がいます。親は共働きをしているため、いつも子どもに1人で留守番をさせています。コロナでの休校が続いたために、学校からの課題が多く、やりきれずに適当に終わらせることもよくあります。親が教えていかないとなかなか進みません。専業主婦のご家庭と異なり、なかなか一緒にいる時間も取れず、取れても子どものやる気無さにイライラします。どう対応していけばいいでしょうか。
(仮名:森さん)
年々増える共働き世帯からの教育相談
厚生労働白書によれば、共働き世帯は、平成に入ってから専業主婦世帯を超え、現在では共働き世帯は、専業主婦世帯の2倍以上となっています。その結果、年々、共働き世帯からの子どもの教育相談が増えてきています。その中でも、森さんのように限られた時間で子どもにどう対応したらよいのかというご相談が圧倒的に多くを占めます。
共働き世帯の場合、メリットとしては、子どもと接する時間が短い分、子どもを自立的に行動できるように早い段階から意識したり、限られた時間で子どもと密度の濃い接し方をしようとする傾向があるようです。
デメリットとしては、短時間しか子どもと過ごせないため、愛情が不足しているのではないかと不安が募ることや、親のいないときでもしっかりとやってくれることを過度に期待してしまい、思いどおりにいかないと子どもを強く叱責してしまうこともあるようです。さらに、仕事で疲れているのに、家事もやらなくてはならず、そのようなときに限って、子どもが期待に応えてくれず、イライラが最高潮に達することもあると聞いたりします。
それでは専業主婦世帯であれば問題は解決するかというと、そうでもありません。子どもと接する時間が多く、子どもの面倒をみられる一方で、子どもの勉強も十分にみることができるかといえば、次のような理由から一概にそうとも言えません。
1)時間があることで、親は学校の先生のように勉強を管理、監督してしまい、子どもがより一層勉強嫌いになることがある
2)そもそも親は勉強を教える方法を知らないため、教えても勉強ができるようになるとは限らない
3)何でも教えてもらうことに慣れてしまった子は、自分で調べる、自分で学ぶということができなくなる可能性がある
4)親子であるからこそ、特別な感情がお互いに出るため、最後は喧嘩で終わることもしばしばある
このように、時間があればあったで、厄介なことが起こる場合もあるのです。ということは子どもの勉強をみられるかどうかということは、子どもと接する時間の多寡が要因ではなく、接し方に起因するのではないかということになります。
そこで、子どもと接する時間がないという現状のデメリットを逆に活かし、子どもが自立的に行動(勉強)するアプローチについてお伝えしたいと思います(共働きではない家庭でも通用する方法です)。
子どもはなぜ自立的に勉強しないのか、その理由の1つに、「自分だけなぜやらないといけないのか?」という思いがあります。
仮に家庭内で、皆がいつも勉強していたら、自分も当たり前のように勉強する雰囲気が醸成される可能性があります。また、学校では時間割どおりに勉強する態勢になっているため、自然と席に座って勉強します。
しかし、家では、勉強するのは自分だけ。しかも親のいない時間に自分1人だけ家で勉強するというのは、相当モチベーションが高くないとできません。ですから、通常は「家で自立的には勉強はできない」のです。しかし、方法がないわけでもありません。例えば次のような方法があります。
親子のスケジュールを「見える化」する
「親の1日のスケジュールと子どもの1日のスケジュールを併記し『見える化』する」
という方法です。親のスケジュールは、会社で働く時間、洗濯、炊事、掃除の時間、さらに子どもの勉強を見る時間と、1日がフル回転していることでしょう。睡眠時間もままならず、それでいて日々の活動量は半端なく大変なはずです。
次に、子どもの予定を作っていきます。この段階では、宿題や勉強の時間などを書き入れず、学校、家、習い事、寝る時間程度で大まかに書き入れます。
そして完成したら、親と子のスケジュールを横に並べます。すると、子どもが家に1人でいるときに、親は会社で働いているということがわかったりします。つまり、親は親で頑張っていて、子どもだけが大変であるのではないということがわかります。
この認識ができると、子どもは「自分のやるべきことはやる」という意識が芽生えることがあります。これで、勉強や課題をやるという意識が少しでも作られたら、次のステップに進んでください。
限られた時間で子どもの勉強をみる「5つのステップ」
森さんの相談内容でもある、「親が限られた時間で子どもの勉強をみる」ための5つのステップです。
1)インストラクションを作る
子どものやるべきこと(宿題や課題など)をリストアップし、フローチャートを作ります。いつ、何を、どのような手順でやるのかをスケジュールに落とし込みます。あまりにも量が多いときは、優先度の高いものだけに集中させます。
フローチャートのイメージ
※このインストラクションが「ざっくり」していたり、なかったりすると子どもはできません。フローチャートを作って、「Aが終わったらB、Bが終わったらCというように、フローを作ります。
2) 問題を解いた後、答えがあれば答え合わせは自分でやるようにする
答えがないときは、次の3)へ進みます。
3)わからない問題があれば、「付箋(ふせん)」を貼っておくように伝えておく
4)親が関われる時間帯に、その付箋部分を教えてあげるか、学校の先生に質問するように伝えておく
5)この付箋の数が多く、それが解決できればできるほど、「頭がよくなる」ということを最後に伝えておく
付箋が貼られた部分が最も大切であり、それがわかるようになった瞬間に頭がよくなっているということを教えてあげてください。これを「学び」と言います。
子どもたちの多くは、間違えること、わからないことがあると、それを遠ざけようとします。しかし、勉強ができるようになる子たちは“真逆の反応”を示します。つまり、「今ここで間違えておいてよかった」という反応です。付箋の数がたくさんあり、それが解決して、付箋が無くなっていけばいくほど、「頭がよくなる」という理屈を何度も説明してあげてください。
本来、親は先生ではないため勉強を教える必要はありませんが、現在のような宿題や課題が大量に出ているときは、多少サポートしなければならないこともあることでしょう。そのような状況においての対処法の1つをお伝えしました。ご参考になれば幸いです。
教育評論家・都留文科大学特任教授
石田 勝紀(いしだ かつのり)
1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。3500人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。「心の状態を高め」「生活習慣を整え」「考えさせる」の3つを柱に、学力上昇のみならず、社会に出ても活用できるスキルとマインドを習得させてきた。現在は特に、「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、ママカフェ、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士(東京大学)。著書に『はじめての子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?』ほか多数。
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