〝死ぬときに後悔したくない〟それが私の決断のモットー。
この5年間、私をよく知る友人知人、さらには両親や親戚からも「よく東京でのキャリアを手放したね」とか「専業主婦してるなんて信じられない」と言われることがあります。今回は私がなぜ再婚を決め、大好きな仕事を辞めてまで海外移住にふみきったかを少しお話ししたいと思います。
↑メルボルンもロックダウンが明け散髪もようやく可能に。平日にも関わらず開店前の床屋さんには男性の長い行列が。
↑以前住んでいたエリアの通りに新しくできたグローサリー「Morning Market」。オーガニック食材やお花、自家製のパン&コーヒーがイイ感じ。59 Gertrude Street, Fitzroy VIC 3065
移住のきっかけは、当時から付き合っていた人(現在の夫)が香港へ赴任となり、お互い遠距離が精神的に限界にきていたところで一緒に暮らそうかと話が出たのがひとつ。そして、それとはまったく別に、私自身が以前から息子の子育ての仕方や方向性で心に少し引っかかることがあったのが決め手です。フリーランスとして仕事はとても充実し、シングルマザーながら金銭的に困ることなく生活する収入もありましたが、仕事が増えれば増えるほど時間的=精神的ゆとりがなくなるのが現実。仕事を終え地元の駅で降りた途端、保育園まで速歩きしながら取り損ねた電話の折り返し。息子を延長保育ギリギリセーフでピックし今夜は遅いから外食にしよっか、と近くのレストランまで手をつなぎ歩いた矢先にまた携帯が鳴る。しまいには電話の会話に気を取られ対向車に気づかず「ママ、危ない!」と5歳の息子に私が手を引かれる始末。ママってダメね〜と笑いにしながらも、1日中時間に追われ段取り命で日々こなす自分に気がとがめることが度々ありました。
↑先日ヴィクトリア州一体を襲ったストームにより大木がアスファルトをえぐってなぎ倒された図。メルボルンのいたる所で木々が倒れ通行止め、停電により電車もストップ。午前中、嵐やヒョウが降ったかと思えば、いきなり午後は爽やかな青空になったり。メルボルンは本当に気候変化が激しいです。
そんな中、小1の壁にもぶち当たり、このままでは親の私が息子の学校生活や勉強の足を引っ張ってしまうかも…、と現状に釈然としない自分がより一層あらわに。仕事は楽しいし頑張りたい。でもこれからますます成長する息子の姿を、母として悔いのないよう、時間も愛情も手間も思う存分かけしっかり見届けたい。長い人生、自分のことばかりでなく大切な人のサポート役に回る時期があってもいいのではないか。そんな私の思いと夫との将来を考えるタイミングとが重なり、思いきって家族に集中しようと決めたのです。↑いきなり洗濯機が作動しなくなり、近くのコインランドリーにイケアの大袋3つ分の洗濯物と持って来訪。大容量の汚れ物も業務用の洗濯機&乾燥機だと1時間以内に完了したけど、全部で$50もかかった。
自分自身が人生の大きな決断をするとき、私はこう考えます。「自分が死ぬとき、母としても女としても後悔のない人生だったと思いたい」。キャリアを手放し日本を離れ、妻母業にフォーカスしたことが正解かどうかはわかりません。また東京で仕事したいと思ってもなかなか難しいかもしれません。それでも巻き戻せない息子や夫との時間を優先し過ごしたことは、いまもこれからも私の人生を豊潤に彩るのだと思います。そして自分の仕事のキャリアは、またそのときが来たら頑張って積み上げていけばいいのかなと。
スタイリスト&エディター
山﨑ジュン
本誌をはじめとする女性誌やカタログ、ブランドディレクターとして活躍。約3年前より、アメリカ人の夫の転勤を機に海外に移住、現在はオーストラリア・ メルボルンに居を構える。ウェブライターとしての活動も。インスタグラム@hellojun style もチェック!