「糠に釘」とは手応えがないこと
「糠に釘」は「ぬかにくぎ」と読みます。まるで米ぬかに釘を打つように手応えがないという意味です。何かをしても、効果がないということを表しています。
【糠に釘】
ぬかに釘を打つこと。なんの手ごたえもなく、効き目のないことのたとえ。暖簾のれんに腕押し。ぬかくぎ。「いくら注意しても糠に釘だ」
(引用〈小学舘 デジタル大辞泉〉より)
糠とは玄米を精白する際に出る種皮などが破け、粉になったものです。「糠に釘」の糠は水を加えて作られた糠床・糠味噌のことで、柔らかく手応えがないものの例えとされています。
「糠に釘」の由来
糠に塩や水を加えて発酵させたものを糠床もしくは糠味噌といい、野菜を入れて糠漬けを作るものです。「糠に釘」の糠はこの糠床のことで、非常に柔らかいため、釘を打っても手応えなくのめりこんでしまいます。
この状態を例えにして、手応えがない、効果が感じられない、効き目がないといった意味で使われるようになりました。
「糠」とはどんなもの?
糠は玄米を精米するときに出てくる粉のことで、表皮や種皮、胚芽の部分です。糠を取り除いたものが白米になります。
糠にはタンパク質が約13%含まれるほか、ビタミンやカルシウムが豊富です。栄養価は高いものの食材には向いていないため、主に糠漬けを作る糠床に利用され、さらに脂肪分を抽出して米糠油としても利用されています。
「糠に釘」の例文
「糠に釘」がどのような場面で使われるのか、例文を見てみましょう。
・彼にいくら説教をしても【糠に釘】だよ
・【糠に釘】とはわかっていても、言うべきことはきちんと伝えるべきだ
・どんなに資金を投じて対策を講じても、結局は【糠に釘】だった
・何回注意しても【糠に釘】だったため、厳しい処分を決定した
・あの人にはどんなアドバイスをしても【糠に釘】なので、黙って様子を見るしかない
・景気回復のための施策は結局なんの効果も上がらず、【糠に釘】だった
「糠に釘」の類義語
「糠に釘」には、よく似た言葉が豊富です。糠と同じく手応えがない、柔らかいものが例えに使われている言葉では、「暖簾に腕押し」「豆腐にかすがい」などがあげられます。
また、使う場面は「糠に釘」よりも限定されますが、「馬の耳に念仏」も糠に釘の類語にあたるといえるでしょう。ここでは、「糠に釘」とよく似た言葉を紹介します。
暖簾に腕押し
「暖簾に腕押し(のれんにうでおし)」とは、力を入れても手応えがないという意味です。「暖簾」とはお店などの入り口にかかっている布の仕切りのことで、押してもなんの手応えもないことを例えにしています。
積極的に対応してもまったく反応がなく、拍子抜けしてしまうことを表した言葉です。糠に釘とほぼ同じ意味合いで使われます。
例文を見てみましょう。
・あの人には何を忠告しても【暖簾に腕押し】だから、もう諦めている
・新しい企画を提案したが【暖簾に腕押し】だった
豆腐にかすがい
「豆腐にかすがい(とうふにかすがい)」とは、力を入れてもなんの手応えもないという意味です。「かすがい」とは、木材などをつなぐための釘のことで、柔らかい豆腐に釘を打つことを表しています。「糠に釘」とほとんど同じ意味といっていいでしょう。
例文は以下の通りです。
・彼には誰が何を言っても【豆腐にかすがい】のため、今では誰からも相手にされていない
・【豆腐にかすがい】ではあっても、やるべきことはやっておけばあとから後悔することはない