「臍を噛む」とは既に終わったことを後悔する意味
「臍を噛む」とはどうにもならなくなったことを後悔するという意味です。「臍を噛む」の「噛む」は「噬む」とも表記されます。意味は同じで、デジタル大辞泉では後者の表記が使われています。「噛む」も「噬む」も読み方は一緒で「かむ」です。
【臍を噬む:ほぞをかむ】
後悔する。すでにどうにもならなくなったことを悔やむ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
臍とはへそのことです。「臍を噛む」という言葉では「ほぞ」と読みますが、一般的には「へそ」と読みます。自分で自分のへそを噛むことはできないことから、この言葉が生まれました。
もともとは中国の故事が語源です。詳細は次の文章で説明しましょう。
「臍を噛む」の由来は中国の故事「春秋左氏伝」
「臍を噛む」の由来は中国の故事「春秋左氏伝」です。「春秋左氏伝」は孔子が編纂したとされている歴史書『春秋』の注釈をまとめた書物で、紀元前700年頃から450年の魯国の歴史が描かれています。この「春秋左氏伝」の中の逸話が語源で、その内容は以下です。
鄧の国を訪れた楚の文王に対して、鄧の国の鄧侯は篤くもてなしましたが、鄧侯の賢臣が「今、文王を討たなければ、いつか臍を噛むことになります」と進言しました。しかし鄧侯はその進言を聞き入れず、のちに鄧の国は文王によって滅亡してしまいます。
この逸話がもとになり、「あとになって後悔してもどうにもならない」という意味で、「臍を噛む」という言葉が広まりました。
「臍を噛む」の使い方と例文
ここでは「臍を噛む」の使い方と例文をご紹介します。よくある間違った使い方は「くやしがる」という意味での使用です。「あとになってどんなに悔やんでもしょうがない」というのが正しい意味です。
【例文】
・保守的な経営を続けてきたツケが回ってきて、倒産の危機を迎えているため、ライバル会社の社長は【臍を噛んで】います。
・A君は酔っ払うといつも「あのときなぜ彼女に告白しなかったのだろう」と【臍を噛んで】います。
臍という漢字を使った語句3つ
臍という漢字は「ほぞ」「へそ」と読み、人間の体のへそを表す言葉です。臍は体の中心部にあるため、本心や決心というニュアンスで使われることもあります。臍という漢字を使った語句はたくさんありますが、主なものは以下の3つです。それぞれの言葉の意味と使い方を解説しましょう。
臍(ほぞ)を固める
「臍を固める」とは決心を固める、覚悟を固めるという意味です。
【例文】
・彼はリーダーに指名されたことによって、社運をかけたプロジェクトに全力を投入すると【臍を固めました】。
・後輩のA君は転職するかどうかずっとまよっていましたが、相手の会社から熱心な誘いを受けて【臍を固めた】ようです。
・自分の将来がかかっているため、海外留学するかこのまま研究室に残るか、【臍を固める】のは簡単ではありません。
臍(ほぞ)落ち
「臍落ち」とはへその緒が落ちることです。また「果実が熟して実が落ちること」「期が熟すること」「納得すること」などの意味があります。3つ目の意味が、「腑に落ちる」に近いといえるでしょう。
【例文】
・そろそろ【臍落ち】したのではないかと判断したので、事業を拡大することにしました。
・これまで部長が何を考えているのか、よくわかりませんでしたが、昨夜のミーティングで詳細を説明していただき、【臍落ち】いたしました。